二千年の人生の中で得たものより、切り捨てたもののほうが多いように思う。
去る者は追わず――いや、むしろ去られる前にこちらから去る、というのが常だった。
それが己の心を守る最善の方法だと信じていた。別れを後回しにすればするほど傷は深くなる。どうせ別れることになるのであれば早いほうがいい。そうに決まっている。
愛着が無いわけではない。けれど全てを投げ売ってでも守りたいほどのものでもない。それだけだ。
己が何かを捨てて物事が丸く収まるのであれば、それでいいじゃないか。今手放さずに済んだからといって、それがこれからも永遠に有り続けるという保証もないのだから。
フィガロの思考の根底には、そういった一種の諦念じみたものが確かにあった。
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