『デートにロマンは必須ではないので』「……イデアさんの浮気者」
「ごめんって」
「まさかスカートのなかに、あんな、あんな獣を」
「ちょっと黙ろっか」
アズールの物言いにまわりの目が気になったイデアが、彼の口もとを抑えた。
「むぐっ」
3回目の外デートは猫カフェだった。猫にいいイメージはないものの、あの生き物にご執心な恋人の横顔はなかなか見られるものではない。そんな『よこしま』さが透けたのか、アズールは猫たちに見向きもされず、かの生き物はイデアの履いているロングスカートの中へ吸い込まれるように潜り込んでいった。
店員いわく、隙間になる場所、しかも人の視線に晒されない場所であるため、魅了されたのだろうとのことだが、ふわふわとしたぬくもりを纏った生き物に生脚を擽られて、赤面しつつ悶えるイデアがぎゅっとアズールに縋りついているあいだじゅう、彼はずっと苦行を強いられていた。
5134