ワンドロお題「花吹雪」その村は、山あいの小さな村だった。
特徴的なのは、村の中央に桜の大樹があることだ。
「これは美しい」
そういう風情には疎いヒュンケルも、感嘆してそう呟いてしまうほど、その桜は咲き誇っていた。
時期的には満開を少し過ぎ、散りはじめていたわけだが。
「そうだな、とても美しい」
花びらの舞う中でそれに見惚れているお前が。
そう続けようとして、ラーハルトはヒュンケルの笑顔の質が何か違うことに気が付いた。
「………もしかして、これはただの木ではなかったりするのか…?」
「よくわかったな、これは桜んじゅだ。人面樹の亜種だな。高齢故かほとんど目覚めないようだが」
「そういう事もあるのか…?」
「昔人面樹の知り合いがいたのでな。仲間の事を教えてもらったことがある。」
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