常軌を逸するその日、夜道を一人歩く俺は上機嫌だった。
この世に自分程世渡りに長けた奴はいないだろう、と鼻も高々に歩みを進めれば、舗装されていない土の路面でさえ革靴の音が高らかに鳴るような心持ちがして爽快だ。
等間隔に灯って並ぶガス燈に「文明開化」と謳ったのはもう幾年も前だが、その時の陽気な気持ちが蘇るようで晴れやかな心のまま月と文明の証が照らす道を揚々と歩く。
何と言っても、最近敗けが混んでいた賭博で漸く勝ちを掴めたのだ。
それも自分の懐を痛めず得た金子で!
我ながら悪い顔をしていただろうが、幸いにして往来には俺以外誰もいない。見咎めるであろう警官も眉を潜めるであろう通行人も誰一人も、だ。
ならば勝利を高らかに謳っても構わないだろう。
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