TRY AGAIN「……あれ。ない」
いつものところにひとつもない。この間したときは、ストックがまだたくさんあったはずなのに。
「どした?」
俺が行為を中断したのを不思議に思ったのか、暦はむくりと身体を起こした。ほんの少し前までウットリしていた表情も理性を取り戻している。
「ゴムないよ暦。まだ使い切ってないよね?」
二人で暮らしているマンションにはお互いの部屋が一つずつあって、それぞれベッドサイドにいくつかコンドームを置いていた。いつでもどっちの部屋で寝ても大丈夫なように。数も種類も申し分ないくらいに。
それがなぜか、暦のベッドの定位置に見当たらない。箱が空っぽとかじゃなくて、箱自体がない。
まあ、俺の部屋から持ってくればいい話なんだけど、あるはずのものがないのは嫌だ。落ち着かない。お金がもったいない。
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