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    参@雑多投げ込み箱

    @san_sosaku の落書きやら尻叩き用の文章やらを入れる為の箱。
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    POIPOI 17

    名は体をあらわす。大正に憧れてた時分に書いたやつ

    ##メゾパイ

    メゾパイ大正パロ 散々引きこもっていた国が、とうとう外の世界に引きずり出され諸外国にいいようにされてから半世紀。じわじわと日常を侵食していく‘‘西洋‘‘という文化は国民にとって、あまりにも魅力的であったらしい。上流層から下級層まで、山の天辺、小岩の間からにじみ出た山水がやがて小川を作っていくかのようにそれらは広まり……というが、馴染み深い‘‘和文化‘‘を愛する人も勿論居た。それぞれの暮らしを、それぞれが思いのままに楽しんでいた。
     後に‘‘第一次世界大戦‘‘と呼ばれた戦いの隅っこに‘‘大日本帝国‘‘の名前を残してから数年。この国は大戦景気で益々華やかさが増していた……。

     場面は変わって某県某市某宅。朝日に起こされた鳥たちが空をやかましく飛び回るより先に体を揺さぶられる感覚で、エルンスト・ウーデットは無理矢理に覚醒させられた。眼前に迫っていた充血しきった双眸にぎょっとして、それから目を擦ってそれがとんでもない悪夢でなく、現実のものだと理解する。
     下宿先のミチコさんではなかろう。彼女ならたとえ朝飯を用意して部屋まで来て声はかけども、まるで死人かそうでないか確認するかのようにゆすぶるなんてことはするまい。となれば、
    「ウーデット君! やっぱりこの件は俺が研究するべきものだと思うんだ!」
     腕の主も声の主も同じ人間のものだ。ウーデットと同じようにこの家に住み着くシゲノタカユキは気が違ったような、そうとしか思えない笑みを浮かべ唾を飛ばしそうな勢いで何かを話していた。寝ぼけているウーデットには何を話しているのかてんで分からなかったが、それでも自分がもう一度惰眠を貪るには彼を寝かしつけるしかないということの理解はできた。
     腰を力いっぱいひねれば脳味噌に飯の栄養を持っていかれてるのであろう、ウーデットより細い身体はドスンと音を立てて畳に転がる。そのまま自分がいましがた涎を垂らしていた掛布団をつま先から頭のてっぺんまで隠れるように掛けてやる。朝の冷え込みで身体がブルリと震えるがまあ仕方がない。
    「いいから早く寝てよ先生!」
     勉学への執着心と情熱であふれた男も、ウーデットが教えを請い(何かのいきさつがあったことこそ記憶しているがどんなやりとりがあったのかは忘れてしまった)一緒に下宿に住まわせてもらっている恩人? でもある。どんな状態になったとて無碍にはできない、それがウーデットの持論であった。
     最初こそ何か言いたげにもぞもぞと動いていたが、やがて動きは完全に止まる。温い布団の魅力には勝てなかったらしい。(動かなくなった、と言うと聞こえは悪いが事実だ)
     ふぅと息をつき、シゲノの布団を押し入れから出して今しがた寝ていた敷布団の上に放り投げる。そして一晩中向かってたであろう机の端にでんと置かれた石油ランプを一息で消し、ついでに薄く開いた窓もピシャリと閉めておく。夜中に研究をする時——とりわけウーデットが隣で眠る時は、梁に掛かった電燈は使わず、誰かのお下がりのランプを明りに使っていた。それが彼なりの気遣いでもあり優しさということは十分にわかるが、なら起こさないでくれたほうがずぅっと有難い。そんなことを一人ごちったウーデットは今度こそ布団にくるまり目を閉じる。
     
     結局、朝食の準備ができたことを布団にくるまる芋虫達が知ったのは一刻も数えぬうちのことだった。すぐさま起きて身支度を整え、下で食卓を整えるミチコさんと、彼女の一人娘、ミカと他愛ない話をする。もう一匹の芋虫を起こすことなどとうに忘れ、カラカラと石畳の上を枯れ葉が滑る音を聞きながらウーデットは足取り軽やかに大学へと向かっていた。
     【本の虫】と周りから字名をつけられている師匠と正反対に、エルンスト・ウーデットという男はてんで活字が苦手な部類の人間であった。その日も教授から言いつけられた一つの文献を元に自分なりの解釈を作り出していく作業を久し振りに立ち入った図書館でこなしていた。周りの学生であれば「簡単じゃあないか」と大喜びで本に齧り付く課題ですら億劫そうな顔で視界の下半分を埋め尽くす文字の海を見やり、流されまいと必死に争う。幸いドイツ語が得意であったことが、大学生活を送るにあたり唯一の幸運だったに違いない。時には垢の付いた辞書を捲り文献を読み下しながらふと、思う。
     自分のこれからという事について考えるとウーデットはいつだって胃の辺りに冷たいものが流れていく感覚があった。このまま流されるように大学に通って、それからどうするのか。選択肢なら幾つばかり、けれど存在している。実家に帰って大人しく家業を継ぐか、それとも大学院まで通い、考える時間を伸ばすか……あるいはこのままシゲノと共に暮らし、民俗学者として生きていく道だってある。選択肢はあるのに、先に向かう足はその場で足踏みを続けていた。
     一足先に憧れていた(らしい)新聞社への就職を決めた男の癖付いた前髪を思い出し、ぶった切りたくなる衝動を抑えて席を立つ。
     集中力の欠けた今勉学に励んだってきっと成果は乏しいに違いない。それより今朝先生が騒いでいた事が気になって仕方ないのだ。そう自分の弱い心に言い訳をし、下宿先へ帰る。大学から帰る時の足取りは重いのが常だが、今日に限っては来た時と同じように軽やかで、西洋由来の奇妙な飛び跳ねをしながら裸の桜並木を通り抜けていった。

     戻ったらまだ調べ物をしているであろう先生(彼の場合は熱中しすぎると睡眠以外の時間を全て研究に充てたがるきらいがあるのだ)に声をかけて、一体何を調べていたのかを聞いてみよう。そう思い部屋の戸を開けたが、いつも戸向かいに置かれた机とその上の本とに向かっているシゲノの背中は無かった。代わりにその横。部屋の西側の壁を隠す本棚、その前にあぐらをかき本を読む男の姿があった。襖の開いた音に顔を上げ、空色の瞳でウーデットを見上げる。
    「先生なら聞き込みに行ったよ。なんでも、聞き込みをしたいとかで」
    そう呟くと太ももの上に置いていた本から手を後ろに伸ばし、ウーデットからは見えない位置に置かれていた皿ーーの上の団子を掴んでウーデットの方へ切っ先もとい団子っ先を突きつける。
    礼を言った後大人しく甘味を享受するウーデットを見て男、リヒトホーフェンは少なからず弟に対した時に抱く感情を覚えていた。
     マンフレート・フォン・リヒトホーフェン、華族の生まれにして長男。一度は父に倣い軍人として生きる事を決意したらしいが、先の戦争の後に何故だか退役。有り余る人生の時間を一般市民とはまた違った、ゆったりとしたものとして過ごしている……と、ここまでが目の前の男に対してウーデットがシゲノ経由で知り得ていた全情報であった。
     初めての邂逅は下宿の一階で商われている甘味屋で。その次はシゲノに首根っこを引っ掴まれて連れられた古本屋で。そこで二人が知り合い、何かの興味があったのか、シゲノを師と仰ぎ始めたのは記憶に新しい。シゲノは「弟子が二人になっちゃいました」と嬉しそうに微笑んで承諾。
     それからというもの、シゲノは彼を家に招いては新しく仕入れた本をリヒトホーフェンの前に積んで感想を乞うようになった。抜きん出て秀でている……とまではいかないが、少なくともウーデットよりは論理的な考えの出来た男であったから二人の議論も酒や肴の甘味も混ざって大いに盛り上がり夜が更けていく……そんな光景は下宿の二階で週に一度は見かける光景になっていた。が、一方話に入れない(彼の名誉のために言うと入れないのではなく今更入るのが億劫らしい)ウーデットは不機嫌そうに客人の土産の饅頭を一つ袖に入れて部屋からこっそりと逃げる、これもまたよく見かける光景であった。
     嫌いではないが、だからといって好きという訳では決してない。自分だけに優しいはずの子守を取られたような、まるで乳飲み子のような嫉妬心に心を痛めつつもウーデットは「へぇ」と言ってリヒトホーフェンの隣で胡座をかく。
    「先生からは何か聞いたんです? その“研究”について」
    「あぁ、なんでも狐に化かされた子供が出たとかでね。その子がね、『家の中に空があった』と言っているらしい」
    「家の中に、そら?」
     視線を下げてみればなるほど、リヒトホーフェンが持っている本は星にまつわるものらしい。虫のような点同士がいくつもの線で結ばれている頁が天を仰いでいる。星座というものが西洋にはあるらしいと聞いていたが資料そのものを目にしたのは初めてだった。本に顔を寄せればリヒトホーフェンは本ごとウーデットに寄越す。
    「正確に言えば夜空。大人は信じてくれないからってシゲノにその子供が話を持ち掛けたらしい。ほら、先生ってどんな莫迦らしい話もまずは信じようとしてくれるだろう。そしてその反応は……わざわざ僕が言うまでもないだろうよ」
    「たしかに、じゃあその本は先生の置き土産で?」
    「勿論。これから彼を探しに行くつもりだ」
     最後の団子を咥えたリヒトホーフェンはよいしょと零しながら立ち上がる。鼠色の長着からわずかに覗く臙脂の裏地。フーム、見るからに高値そうだとウーデットは対して経験のない目利きを働かせた。
    「ならおれも。二人より三人のが調べるのにはいいでしょうし」
    言ってウーデットは立ち上がる。着替えるのは億劫だったが調査のことも考え、黒の外套は脱いで積まれた本の一番上に置く。対してリヒトホーフェンは横に雑に畳んであった長着と同じ色の外套を手に取り羽織る。「で、先生のいる場所に心当たりは?」「一応、大学病院に行くと話してたからまずはそこだろうよ。君、場所はわかるかい?」「勿論」 先導して歩く様暗に促されているので仕方なしと頷いて下宿を出る。昼間の陽を受けた風は少しばかりか外気を温くしてくれていた。「懇意にしていた先生のご子息が働いているらしくてね、折角だから彼にも顔を出そうと思って」
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    参@雑多投げ込み箱

    MEMO20日、まさかの第五弾のアンケでカール様が選ばれるということで、自分のカール様に対する認識がどれほど運営と一致しているのか知りたいと思ったのが動機です。
     けどまぁビズログの某企画でおベルがテキサス一号達のこと「ペット」って明言してて「トモダチだろうが!!!!!!!」ってモヤッたからあまり過信せず程々で……
    百万円目指して、頑張るぞ!(貰えません)
    目指せ全問正解! カール様のアンケ予想し隊!座右の銘
    プルス・ウルトラ

    これじゃなかったら泣く


    毎日欠かさずやること
    ティータイム

    ふる……壮大な歴史を共にした銃なので、毎日メンテしてるとかもワンチャンだけど多分「肉を食べる」とかの食い物系と見た


    士官学校で一番のお気に入り(十手参照)
    中庭のお昼寝スペース

    貴銃士スト一話でマスターに起こされたあの場所だったら良いな、と。もう一つあるなら寮室。食堂はさすがに安直だろと思うわけですよ僕は(震え声)


    将来の夢(十手参照)
    自分の顔程あるステーキを平らげる

    何も浮かびませんでした。けどこの発言は無印でカルくゆが爽快感の喩えとして実際にしてる。士官学校でアンケを行っていると仮定するとあんまり国やストーリーの本質に対することは言わないだろうから割とおちゃめになると思う。
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