女体化部長♂と吟くんもし部長♂が女体化したら?続き
主吟(のつもり)だけど、両方ともなんかうだうだしてる。
◆これまでのあらすじ
部長♂が突然女体化した。
***
数日後。
相変わらず女体化したまま過ごしていた部長(凜)
最初は騒いでいた帰宅部のみんなも、もう慣れて興味を失ったようで、だいたい普段通り接してくる。
しかし何故か吟だけ、以前よりもよそよそしい態度を取ったり、妙に避けられてるような気がしてモヤモヤする部長。
吟と以前のように仲良くしたい部長、ささらさんと茉莉絵ちゃんに相談してみる事に。
*
凜「女の姿になってからというもの、何故か吟に、妙に避けられてるような気がするんだ……」
茉莉絵「何かしたんですか?」
凜「心当たりが無い……」
ささら「あ、もしかして、女の子になった部長ちゃんが可愛くて、ドキドキしちゃってるのかも?」
茉莉絵「いや、流石にそれは……」
凜「ささらさん……俺、可愛いですか?」
ささら「とっても可愛いと思うわ、部長ちゃん!」
茉莉絵「はぁ……もう直接本人に理由を聞いてみるのが一番いいんじゃないですか?」
*
場面変わって教室。人の少ない放課後。
机に肘を付いてぼーっとしていた吟のWIREに、部長からのメッセが入る。
凜『話がある』
吟(あいつから話…? 一体なにーー)
凜「吟、今大丈夫か?」
吟がスマホに目を落としている間に、急に机の目の前に現れた部長。驚く吟。
吟「うおっ! 近くに居るならわざわざWIREにメッセージ送ってくるなよ!」
凜「驚かせてすまない」
吟「……で、話ってなんだよ」
凜「最近、なんだか俺の事を避けてないか? 俺が女の姿になってから……」
吟「……ん〜そうか? 気のせいだろ。僕はいつも通り接してるつもりだ」
普段通りに話しているようで、部長と視線を合わせようとしない吟。
このまま話しても、いつものようにはぐらかされるだけかもしれない。
そう思った部長は、少しだけ吟の前に身を乗り出した。
凜「……俺が可愛くて、ドキドキしてるのか?」
吟「は、はぁああぁあ!??? なんだそりゃ!? ンな訳あるかッ!!!」
机に拳を叩きつけ、心底呆れた顔で否定する吟。その頬は紅く染まっている。
凜「ささらさんがそう言ってたから……違ったみたいだな」
冗談半分で口にしたとはいえ、地味にショックを受ける部長。
吟「はぁ……もしかして、他のやつにも相談してたのか?」
凜「あとは茉莉絵ちゃんだな」
少し考え込み、再度ため息をつく吟。
吟「あ〜〜もう分かったよ! 心配かけて悪かったって。確かにちょっとだけ、今のお前とどう接していいか分からなかったっていうか……」
ばつが悪そうに言葉を濁す吟。
吟「別に、お前が悪い訳じゃない……だから、気にすんな!」
部長に向かって笑いかける吟。
でもそれは、どこか無理をしているような少しぎこちない笑顔だった。
それを敏感に感じ取る部長。
凜「吟……本当は、今の俺とは一緒に居たく無いんじゃないのか? もしそうなら、俺はしばらくお前と距離を取る」
凜「せめて避ける理由を知りたいと思ったんだが、言いたくないなら無理に言わなくていい……気を使わせて悪かった」
寂しそうに肩を落とす部長。
吟「い、いや、違うんだよ……僕は……」
焦ったように口ごもり、ほんの一瞬、悲しげな目を見せる吟。
凜「吟……?」
吟「一つ、聞いていいか?」
帽子のつばに手を掛け、少し目を伏せながらも、真剣な口調で問いかける。
凜「なんだ?」
吟「お前は……今の、その自分の姿のままで、良いと思ってるのか?」
凜「……そんな訳ないだろ。なりたくてこんな姿になったわけでもないしな。戻れるなら、一刻も早く元の姿に戻りたいさ」
吟「そうか……そりゃ、そうだよな」
凜「正直なところ、俺の今の状況に対して、みんな変に面白がってるというか、他人事でな…『別にこのままで良いんじゃない?』だとか『現実に戻れば直るだろ』とか簡単に言ってくるんだよ」
凜「でもあの時ーー俺が女の身体になってしまって、それを帰宅部のみんなに説明した時、吟だけが、俺の事を本気で心配してくれてるような気がしたんだ」
吟「……っ!」
凜「だから、この事に関しては……吟、お前だけが頼りだ」
吟をまっすぐに見つめ、言った。
吟「…………」
黙り込み、神妙な面持ちの吟。
その瞳はどこか寂しげな色を浮かべ、目の前の部長を見ているようで、どこか別の誰かを見つめているかのようにも見えた。
凜「勿論、嫌なら無理にとは……」
部長の言葉を途中で遮るように、吟は机を両手で強く叩いた。
乾いた音が教室に響きわたり、目の前の部長も思わずビクッと肩を震わせる。
吟「あーーもう! 分かった!分かったよ!!」
ガリガリと爪で帽子を引っ掻く吟。
そして、帽子のつばを引き上げた。
吟「はぁ……友達が困ってるってのに、相談にも乗ってやらないってのは……やっぱり男としてカッコ悪いよな」
覚悟を固めたように、今度はしっかりと部長に向き直る。
吟「お前が元の姿に戻る方法、僕も一緒に考えて……手伝ってやるよ」
吟の言葉に驚き、目を見開く部長。
凜「吟……! ありがとう……でも、本当に良いのか?」
吟「良いって言ってるだろ。男に二言はねぇよ」
ふぅぅぅと大きく息を吐き、胸を撫で下ろす部長。
凜「……正直、このまま男に戻れなかったらどうしようかと不安だったんだ。それにせっかく吟とこうして仲良くなれたのに、気まずくなって離れるのは、やっぱり嫌だ。だからーー」
凜「こんな姿の俺でも……どうか、変わらず友達で居て欲しい」
部長の、そのまっすぐな言葉を、吟は受け止め、ゆっくりと呑み込んだ。
それを自身の体内でかき回し……そして、ゆっくりと吐き出した。
部長に、そして自分自身と向き合う為に。
ーーいつか、答えを出す為に。
吟「僕は……お前が、たとえ元のお前の姿じゃなくても、友達だ」
***
知らず知らずの内に、吟くんの心を刺激して掻き乱してしまう部長。
一旦引いたかと思いきや、結局吟くんに負担をかける部長。無自覚クズ野郎。
吟くんは心中複雑だけど、部長の助けになりたい気持ちはあるし、頼られるのは悪い気はしない。
ただ、自分と部長の当たり前の違いを自覚して(させられて)、少し自己嫌悪してる……みたいな。
言葉では否定してるけど、部長の女体化姿を可愛いとは思ってる。
****
(オマケ)
吟「そういえばお前……結局トイレはどうしてるんだ?」
凜「あぁ……最初は、せめて学校ではトイレに行かないように我慢してたんだが、やはり無理があったな……」
吟「まぁ……そりゃーそうなるわな」
凜「……別に、漏らしたワケじゃ無いからな」
吟「そんな事一言も聞いてねぇよ」
凜「それでどうしようか悩んだんだが……ついこの間、2階の校舎の奥に教室から遠すぎて誰も使ってないトイレを見つけて、そこをこっそり使ってる」
吟「お前も中々苦労してるんだな……」