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    東 @azm_hgs

    落書きと生存報告用にほいほい投げ込みます。デッサンや形を描きながら直す悪癖を積極的に晒していく予感

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    POIPOI 69

    東 @azm_hgs

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    主にハイラル国外を放浪しているトワさんと時さんの旅の記録。という体の旅する師弟のオムニバス小話。
    細かな注意書きは1つ目参照です。
    https://poipiku.com/2996800/5797136.html

    旅する師弟 3その街は乾いた大地の中、貴重な水源であるオアシスの淵を沿う様に作られていた。小ぶりなオアシスのほとりに作られた、見て回るのに一日もかからないような小さな街だ。乾燥した赤土を踏みしめ、ブーツに土の色を付けながら土壁でできた家々が建ち並ぶ街の大通りを一人歩く。トワは片手に抱えた荷物の位置を調整しながら財布の中身を計算していた。
    しばらくの食料やこれから先の旅路で必要となるだろう品々は市場で確保できた。小さな街故に、何かものを売るには少々適さないので路銀は暫く心許ないが。けれど幸先の良いことにこの街を出て街道沿いに歩きいくつかの村を超えた先、そこには東西南北に道が交差し行商人たちが集う大きな街があるのだと聞いた。そこまでの辛抱だ。あとで金銭感覚の鈍い旅の同行者に良く言い聞かせなければいけない。と、こんなことを言えば「トワが金に厳しすぎるだけだ」と彼は顔を顰めるのだろうが。

    大通りを進んだ先にはオアシスに面した広場があった。住民達の憩いの場となっているのだろうそこで、この街の周囲について情報収集に行ったトキと落ち合う予定だ。
    広場に足を踏み入れれば、直ぐに目的の人物の鮮やかな金髪が目に入る。同時に、その周りに集まる人影も。
    広場のベンチに腰掛けたトキの周りにいたのは10歳前後の子供たちだ。乾燥した気候で太陽の光が強く大地を照らすこの地域特有の、小麦色に焼けた肌をみな惜しげもなく晒している。彼らは一人はしきりにトキに話しかけ、一人が隣に座り込んでトキの目を覗き込み、一人はベンチの後ろに周りトキの中途半端に伸びた金色の髪の毛を楽しそうに結いていた。
    トワが近づくと、一対の青い瞳と、三対の濃い茶色をした眩い瞳がこちらを向く。

    「先代、その子たちは?」
    「この街の子供たちだよ。癖のない金色の髪と青い眼が珍しいんだって。あと耳。」

    子供の相手をしていたからだろうか、どこか普段よりも柔らかな口調でトキが言った。
    彼の言葉に子供たちを見たトワはなるほどと頷く。大地が剥き出しの丘が数多連なるこの地域の住民達は、からりと焼けた肌に細かく波打つ豊かな黒い髪と、木々の根元のような濃い茶色の瞳を持つ人が多かった。
    トワも街中で視線を感じることがままあったが、それは物珍しい容姿に対するものであったようだ。
    トキの背後に立つ少女が楽しそうに彼の金の髪を手櫛で整え、細かな編み込みを施していく。さらさらと真っ直ぐに落ちていく、太陽の光を反射する金糸は無精で切らずにいたものだから項で纏めることができる程度に伸びていた。少女の手付きは躊躇いがなく、彼女がこういったことに手慣れているのだと感じさせる。トワがその様子を興味深く見ていると、服の袖口を力強く引かれた。見れば、先程までトキに話しかけていた少年がトワを見上げている。
    腰を落として視線を合わせれば、好奇心に輝く瞳が笑顔に溢れた。

    「おにーちゃんは、はいりあ人?」
    「ああ、そうだよ。ハイラルのこと知ってるのか?」
    「知らない。そっちのおにーちゃんが、俺たちははいりあ人って」
    「そっか」
     
    そっちの、と指を指されたトキは少女との話に夢中だ。トワは僅かに思考した後、そこに落ちていた石を拾って広場の赤土に線を刻む。
    ハイラルを出て初めて知った、どこに海があるのか、どこまでが国で、どういった街があるのか。大きな大陸といくつかの島を地面に描いて、二つの場所に丸で印をつけた。

    「ここがハイラル。で、ここら辺がこの町」
    「ふうん、歩いて何日くらい?」
    「何日だろうなあ……。一ヶ月じゃいけないと思うぞ」
    「えー!そんなに遠いの?!」

    大きな声を上げる子供の様子にトワは楽しそうに声を上げて笑う。子供の大きな目が驚きに見開かれて真ん丸だ。
    歩いてここまで来たの?あの山はどうやって越えたの。魔物は?子供の口からはオアシスの水のように質問が飛び出てくる。
    それに一つ一つ答えながら、トワもここまでの旅を思い返した。ハイラルの中を走り回っていた時、世界はこんなにも広いのだと驚いた。なのに、そんなハイラルの外を何ヶ月歩いても、世界の端にたどり着くことはない。
    いつかこの街の人々とハイラルの人達が気軽に交流し合う時代が来るのだろうか。そしたらきっととても面白い。そんな時を夢見ながら、トワは新しい出会いを求めて次の街、次の街へと旅を続けるのだろう。師匠と共に。

    「次はどんな国かなあ」

    そんなことを呟いたら、少女と話していた師がこちらを見てくすりと笑った。気がした。



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