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    今日も及岩に必死。

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    oiiw☆fes2ペーパーラリー企画「旅する及岩」用に書き下ろした、文字通り旅してる及岩の話です。カニを食べに鳥取に行ってもらいました🦀🦀
    わたしが今カニ食べたいと思ってるからです。

    いつまで経ってもきみがすき「手をあげろ」
    「突然茶番始めるじゃ〜ん」
     手でピストルの形をつくった岩ちゃんが、真剣な顔をして俺に銃口という名の指先を向ける。ぱっと両手をあげて「きゃー! 乱暴しないでー!」と裏声で叫ぶと、ご機嫌な岩ちゃんはけらけらと笑った。
    「目的はなんだい」
     両手をあげたままそう尋ねると、岩ちゃんはうむと悩むように首を傾げた。いや動機を用意してから人質を取りなさいよね。そんなところも可愛いけれども。
     膠着状態から実に数分が経過し、悩む岩ちゃんのちょっぴり尖った唇を眺めることに飽きはしないものの、そろそろ両手を下ろしていいかなと困り始めた頃、岩ちゃんが小さく「あ」とこぼして、それから再びピストルを構えた。
    「──俺を旅行に連れて行け」
    「おねだりの仕方が斬新かつ可愛すぎるんだよな」
     指先から何かしらのビームが出てたんじゃないかと錯覚するほど見事に撃ち抜かれた心臓は、もうずいぶん昔に岩ちゃんに差し出したものだ。
     岩ちゃんに恋してからもう何年になるのか。付き合いの長さはついに二十年を越えたけれど、未だに俺を魅了するこのゴリラが強すぎる。可愛くてカッコよくて、恋人になってついに十周年を迎えようかという今日この頃、未だ倦怠期とやらを体験したことがない。
     普段が世界を股にかけた遠距離恋愛をしているせいか、なんなら会える時の岩ちゃんは高校の時より素直な気がする。まあ高校の時から感情と言動と行動が全て直結している子ではあったけれど、歳を重ねてそこに色気が加わったあげく俺に愛されている自覚があるがゆえの煽りが出来るようになってしまってタチの悪さが増していた。ほんとに恐ろしい。
     少し長めの休暇を利用して日本に戻ってきた俺は、パートナーが優秀なトレーナーであることも相まって、休暇中とは思えないほど質の良い自主トレに励んでいたわけだけれど、確かに休暇中ならバカンスを楽しむべきだし、そうでなくても俺たちは恋人同士である。
     とりあえず俺のハートを今日もガッツリ奪ってくれた凶悪な強盗犯を、ピストルごとぎゅうっと抱きしめた。今日も岩ちゃんが可愛くて生きるのが楽しい。

         ◆◇◆◇◆

     さて、凶悪な強盗犯の脅迫──もとい恋人の可愛いおねだりに降参した俺は、早速「どこに行きたい?」と尋ねたが、またもや何も考えてなかったらしい岩ちゃんは、もはやその時の思いつきでしかない「カニ食いてえ」という言葉を吐き出した。食いたいと言うならば食わせてやりたいのが恋人のサガである。
     思い立ったが吉日、その日のうちに飛行機のチケットを取っって、翌朝から岩ちゃんを連れて「いざ行かん松葉ガニの旅へ!」と俺たちは足早に鳥取へと飛んだ。
     朝十時。灯台の形を模した駅で鬼太郎の像と記念撮影をしてから、レンタカーを借りる。全力じゃんけんの結果、運転は岩ちゃんがすることになった。
    「何気に岩ちゃんの運転する車に乗るの初めてかも」
     シートやミラーを調節している岩ちゃんを助手席から眺める新鮮さにキュンキュンしていると、岩ちゃんは「俺が教習所通ってる時お前もう向こういたもんな」と笑った。
    「岩ちゃん、運転うまい?」
    「うまいかどうかは知らんが助手席に乗せた選手はみんな俺のこと好きになる」
    「待って?」
     しゅっぱーつ! と元気よく車を発進させた岩ちゃんに「待てって言ったよ」と叫んだけれど、無情にも車は道路を走り始める。
    「俺が岩ちゃんの初同乗者じゃないことも、助手席に俺じゃない人間が座ることも、一万歩譲って許した」
    「百歩で譲れや、独占欲おばけめ」
    「でも俺以外を恋に落とす岩ちゃん地雷です」
    「モテモテでごめんな」
    「調子乗んなや」
     軽やかに走る車の中で、俺の機嫌だけが悪い。赤信号で止まる時も再び走り出す時もあまりに滑らかで、粗雑な岩ちゃんの運転とは思えなかった。お前もしかして急ブレーキかけちゃった時助手席に座ってる子に左手でフォローしてくれるタイプの男か? 切り返しなしでバック駐車一発でキメるタイプの男か?
    「ほら及川、もう着くから機嫌直せって」
    「いま岩ちゃんが助手席に乗せて恋に落とした人間に買ったばかりの卵のパックをパックごと落とす呪いかけてるから邪魔しないで」
    「日向と影山あたりがダメージ食らいそうだからやめろ」
    「やっぱ変人コンビ乗せてやがったな!」
    「あとお前も卵好きだろ」
     俺の恋人の呪いはたぶん強力だからな、と笑った岩ちゃんに、確かにたった今、何百回目かの恋に落ちる音がしました。助けて。俺も岩ちゃんのイケメン彼氏に呪われちゃうかも。まあそれも俺なんですけど。情緒が忙しい。
    「えーん岩ちゃんが軽率に惚れ直させてくるよう……」
    「おら着いたぞ、降りろ」
    「余韻もクソもねぇな」
     泣き真似はさらっとスルーされて、岩ちゃんはそのまま運転席から降りてしまった。慌てて俺も降りると、海が近いせいか潮の香りがする。
     着いたのは市場に隣接している直売センターだった。水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を食べたいなら、まず間違いなしである。
    「ここ、紅ズワイガニの水揚げ量日本一なんだって」
    「へー、カニっつったら北海道のイメージの方が強かった」
    「ね」
     グーグル先生の情報を片手に敷地内を進む。濃い磯の匂いに、岩ちゃんの瞳がきらきらと輝いた。
    「すっげ、まだ動いてる」
     ぐにぐにと動くカニや貝を見つめていると、威勢の良い市場のおじさんに岩ちゃんが早速話しかけられていた。あまり人見知りしない岩ちゃんは、自分から声をかけることはないものの、相手からアクションがあればきちんと反応する。観光客慣れしている市場の人たちとあっという間に盛り上がってしまった岩ちゃんは、いつの間にやら持ち帰り用の松葉ガニをクール便で送る手続きを始めていた。いや早いのよ、岩ちゃん。まだ市場入って五分経ってないんだけど。
    「なんかあっちに紅ズワイガニの食べ放題があるらしい」
    「マジ? 行く?」
    「行く!」
     すでにお土産をゲットして大満足しているらしい岩ちゃんが、市場の人に教えてもらったお店を指差した。
     カニの食べ放題、制限時間四十五分。カニむくの時間かかるよね、大丈夫かな、いっそ殻ごといくか、俺らの咬合力ならワンチャン、なんて言っていたけど、上手な剥き方を最初に教えてもらえた。
     ずるん、と綺麗に身が取り出せるのは気持ち良くて、俺たちのテンションも爆上がりだった。
    「待って、マジでうまいんだけど」
    「及川、カニ味噌! カニ味噌やばい!」
     そして何より、死ぬほどうまい。ボイルされた紅ズワイガニは、身がぷりぷりで甘味が強く、濃厚なカニ味噌をつけて食べると思わず真顔になるほど美味しかった。
     カニを食べる時は身を取ることに夢中になって無言になりがち、なんて話もあるが、俺たちレベルになると無心で喋れるのでテーブルは賑やかだ。
     途中でカニ汁やら諦めきれなかった特撰海鮮丼を挟みながらも、四十五分で全力を尽くした。全力を尽くしたのにこのお値段で本当に良いのか、と伝票を見て驚愕してしまった俺たちは、海に囲まれた国って素晴らしいね、と、改めて自然の恵みに感謝して、市場で追加のお土産を買った。家でも海鮮パーティーがしたい。

         ◆◇◆◇◆

     胃も満たされたところで、「デートっぽいとこ行きたい!」と言ったのは俺である。せっかくの旅行なんだからカップルっぽいことしようよとねだって、やって来たのは日本最大級のフラワーパークだった。
    「東京ドーム十一個分だって」
    「それよく聞くけど俺そもそも東京ドーム一個分がまだわかんねぇんだよな」
    「カメイアリーナ何個分かな」
    「いやそれ余計わかんねぇわ」
     けらけらと笑いながら、入園する。移動の車中で「男二人でフラワーパークってどうなんだ」と苦笑していた岩ちゃんも、花回廊の名の通り、あちこちに咲き誇る花々を前にすれば「めちゃくちゃ綺麗じゃねぇか」とまじめに感動していた。
     正直なところ、俺も岩ちゃんも花にはあんまり興味ない。だけど、こういうところはまた別だ。綺麗な景色を恋人と共有できる、この時間が幸せだと思う。
    「ねぇ、写真撮ろ。待ち受け更新したい」
    「待ち受け? 今何にしてんの」
    「こないだアルゼンチンに来た時に撮った岩ちゃんの寝顔」
    「今すぐ変えろ」
     絨毯のように広がる広大な花畑と一緒に写真を撮って、名物らしい梨ソフトを食べて。新しい待ち受け画面になったスマホを見つめてニヤニヤしていたら、その瞬間を岩ちゃんに盗撮された。
     待ち受けにしよ、と岩ちゃんが笑うので、どうせならさっき撮った花畑のツーショのやつにしてよ! と文句を言ったら、「こっちの方が〝岩ちゃん大好き〟が隠せてなくて面白いからこっちがいい」と言い切られて黙るしかなかった。なんだそれ。岩ちゃん大好きが溢れてる俺を待ち受けにしたいんかお前は。かくいう俺も、更新した待ち受け画面は花畑のツーショではなく梨ソフトを幸せそうに頬張る岩ちゃんの横顔の盗撮なので、俺たちは似たもの同士かもしれない。

         ◆◇◆◇◆

     せっかく鳥取来たんだから砂丘行こうぜ、と言ったのは岩ちゃんだった。のんびりドライブを楽しみながら、目的地へと向かう。突発旅も悪くないな。お互い、職業柄綿密なスケジューリングに慣れているせいか、その場のノリと勢いで行動するのは久しぶりな気がする。
     フラワーパークから一時間半ほど車を走らせて、目的の鳥取砂丘に到着した。観光スポットなだけあってか、駐車場にはたくさん車が停まっていたけれど、広大な砂丘ではその姿は散り散りだ。
    「マジで全部砂だぁ」
    「砂丘だものな」
     触れると、乾燥した砂がさらりと指先をすべる。ざくざくと歩みを進めるたびにスニーカーに砂が入るのを煩わしく思っていたら、数歩先を行く岩ちゃんはすでに裸足だった。だから何もかもが早いのよ。到着して五分も経ってないのよ。
    「馬の背、ってのがあるらしい。たぶんあれ」
     スニーカーを左手に引っ掛けた岩ちゃんが、あれ、と指差したのは、それなりに高さのある砂の丘だった。海はあの向こう側にあるらしい。
    「登ろ登ろ! この時間だと日没見れるんじゃない?」
     ロマンチックじゃん、と、俺もスニーカーを脱いで、岩ちゃんに続いて砂丘へ挑んだ。
    「……え、まって結構急じゃない?」
    「ここで走り込みしたらすげぇトレーニングになりそう……」
    「やめてあげて、日本代表の太もも死ぬわ」
     現役アスリートとトレーナーがビビるくらいには急斜面の丘を、もくもくと登っていく。高さ自体は五十メートルほどだけど、斜面のせいか、登り切った時には結構な達成感があった。
    「う、わあ……」
     そして、砂の丘の向こう側がようやくお目見えする。眼下に広がったコバルトブルーに、思わず息を呑んだ。
    「絶景じゃん……」
    「すげぇな……」
     語彙力も吹き飛んで、思わず呆然と日本海を見下ろした。ここから海岸の方へと降りることもできるらしい。降りるとまた登らなくちゃならないせいか、下まで降りている人は少なかった。
    「降りよ、岩ちゃん」
    「マジかよ」
     ひょいっと岩ちゃんの右手をとる。振り払われるかと思ったけれど、そのままきゅっと握り返されてときめいた。
    「外なのに許してくれるんだ」
    「この広大な海を前にしたら俺たちなんてちっぽけだからな」
    「悟ってんなぁ」
     何やら壮大なことを言い出した岩ちゃんにくすくす笑って、海岸の方まで降りていく。荒っぽい波の音が心地良い。ゆっくりと傾き始めた太陽が、濃いオレンジ色に染まっていく。
    「なんか、突発的に来たにしては全力で楽しんだ感があるね」
     海岸沿いをゆっくりと歩きながら呟くと、「弾丸ツアーって感じだったな」と岩ちゃんが笑った。
    「あと腹減った」
    「あんだけカニ食べといて?」
     フラワーパークからここまで移動している時も、小腹が空いたとか言って、途中にちらっと立ち寄った倉吉でだんごだのしょうゆアイスだのたいやきだの食ってたじゃん、と呆れていると、それは別腹だときっぱり言い切られた。
     レンタカーの返却時間も考えると、俺たちの弾丸ツアーもそろそろ終わりだ。旅の終わりってやっぱり寂しくなるよなぁ、もうちょっと居たいなぁ、どっか泊まれないかなぁ、なんて、センチメンタルに日本海を見つめていると、繋いだ手をくいっと引っ張られた。
    「岩ちゃん? どしたの?」
     周りに人はいない。数百メートル離れたところにポツポツとカップルらしき人影は見えるけれど、みんな沈みゆく夕日と自分の恋人のことしか見えてないだろうから、最後にチューくらい許してくれないかな、と岩ちゃんを見下ろせば、岩ちゃんは何故か自慢げに俺を見つめた。
    「──俺はデキる彼氏なので」
    「ん?」
    「さっき旅館とった」
    「好きが止まらないんだけど」
     真顔でピースしてくるデキる彼氏を思わず抱きしめると、腕の中で岩ちゃんがけらけらと笑った。可愛すぎるしカッコ良すぎるし、この子は俺をどうしたいんだ。今日だけで俺は何回恋に落ちたのかな。好きに上限が無さすぎていっそ怖いまであるぞ。
    「岩ちゃんとの旅行、延長戦?」
    「延長戦。しかも温泉つき」
    「は〜〜〜〜? 最高。愛してる。宿泊代は俺が出します」
    「え、マジか」
    「ん。俺の彼氏カッコ良すぎるから貢いじゃう」
     ずっと運転してもらってたしね、と、付け足すと、運転は嫌いじゃねぇから、と言ってくれた。まあ、俺も助手席から見る岩ちゃんが好きっていう新たなキュンポイントを見つけてしまったので、今後も何かと理由をつけて運転をお願いしちゃいそうな気がするから、前払いも兼ねて。
    「てか当日によくとれたね」
    「まあ、職業柄顔広いもんで。多少のコネがある」
    「今一瞬で嫉妬と尊敬が俺の中で渦巻いたけどギリ尊敬が勝ちました」
    「よし。あとは空いてる部屋ならどこでも良いって言った」
     そう言って苦笑した岩ちゃんに、ああなるほど、と頷いた。観光シーズンから少し外れているとはいえ、予約もなしに通してもらえる部屋となると、訳ありか予約が入らないような部屋かのほぼ二択だろう。
    「まあね、岩ちゃんとなら俺オンボロ四畳半でも楽しめる自信があるよ」
     どれだけ狭かろうがくっついて寝るから平気だし、古くてもぼろぼろでも一緒に泊まるのが岩ちゃんなら笑い話になる。あ、心霊現象とかだったらちょっと怖いかも。でも幽霊ってエロがダメってよく聞くから、だとすれば実質何も──
    「逆」
    「……ぎゃく?」
     むしろ幽霊を理由に、よりエロい岩ちゃんを引き出せるのでは? とまで考えていた俺は、岩ちゃんの言葉をうまく飲み込めなくて、一瞬フリーズしてしまった。ぎゃく。逆?
    「俺には到底一泊に出せん額のお部屋です」
    「へ?」
     スッ、と、岩ちゃんが耳打ちの態勢をとった。そっとそちらに耳を傾けると、ボソボソと一泊のお値段が伝えられる。
    「…………マジで言ってる?」
    「まあ、スイートルームだし。部屋食で松葉ガニが食えるし」
    「さてはそこそこ盛り込んだプラン選んだな?」
    「あと部屋風呂がひのきの半露天風呂」
    「んわー……それは魅力的だけどもう一声」
    「浴衣の俺が見れる」
    「それが俺に対するご褒美として成立することを自覚してる岩ちゃんが憎いわ」
    「あと……」
    「あと?」
    「オプションで騎乗位が選べる」
    「付けてください」
    「今日イチの大声を出すな」
     うっかり叫んだ俺に、岩ちゃんがぺちりとゆるくデコピンをした。まるで痛くないし、なんならそれさえもはやご褒美である。可愛いもかっこいいもエロいも変幻自在な恋人なんて、あまりにも贅沢すぎないか。ありがとう神様、今日も俺は岩ちゃんが大好きです。
    「最高の休暇だな……身も心も性欲もリフレッシュしてしまう……」
    「そら良かった」
     茜色に染まる美しい砂丘と日本海を見ながらこぼすセリフとしてはあまりにも最低な気がしたけれど、事実なんだから仕方ない。
     このご褒美を糧に、アルゼンチンへ戻ってもごりごり頑張れる。恋人が最強だと、俺はまだまだ強くなれちゃう。
    「岩ちゃんが大好きすぎて苦しい……」
     うう、と唸りながら岩ちゃんをぎゅうぎゅう抱きしめると、ぱっと顔を上げた岩ちゃんが、そのまま俺の唇に吸いついた。
    「──そのまま一生苦しんでろ」
     呪いと呼ぶにはあまりにも甘い、そんな言葉で俺にとどめを刺した岩ちゃんは、「松葉ガニも露天風呂も楽しみだな」と機嫌良く俺の腕から抜け出して、まだ水平線にじわりと橙を残す太陽を背に、再び砂の丘を登りはじめた。
    「おら何ぼーっとしてんだ、置いてくぞクソ川」
    「お、お前ってやつは……!」
     わなわなと震える俺に、岩ちゃんは悪戯が成功した悪ガキみたいな顔をして笑う。ほんとにもう、いい加減にして!

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    silk_pea

    SPUR MEコロナで出れなかった夏コミで出すはずだった及岩本、コロナ寛解後やる気が戻らずそのままになっているので1章を晒しておきます。やる気が戻ったら本になる。『#及川チャレンジ』の続編って位置付けですが支部に残してるサンプルを読んでいただければある程度の流れは汲めます。今回は日向視点ですよろしゅう。
    #及岩チャレンジ日向翔陽の誤爆
     そそっかしい性格だということは、自覚しているつもりだ。小学生の頃から通知表に書かれることといえば、落ち着きがないだとか元気が有り余っているとかそういうことで、大人になって多少心にゆとりを持つ術を身につけたものの、元来のそそっかしさというのはふと気が緩んだ時に顔を出す。
     その、顔を出す瞬間第一位と思われるのが、寝る前のSNS更新だった。
     SNSにおいては、ムスビィで言えば侑さんが熱心なタイプだと思う。写真を撮るのも撮られるのも大好きで、「俺も楽しい、ファンも喜ぶ、一石二鳥やろ」とのことである。広報の一環にもなると黒尾さんも嬉しそうだったし、だったら俺も頑張ろう! って。そうは思うものの、毎日体力の限界まで動き回って、やってもやっても課題が見つかって、楽しいと苦しいと嬉しいを毎日ぐるぐるやっていれば、なかなかSNS更新まで辿り着かないのが現実だった。
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