願わくばずっと傍で義勇は炭治郎に手を出さない。
手を出して貰えないのは自身が幼すぎるが故に魅力がないのではと悩み、義勇の好みになりたくて炭治郎は必死だった。
積極的な方がいいのか、控えめな方がいいのか。様々な雑誌を読み漁り、インターネットでも様々なことを検索していくが何をやっても変化はなかった。
放課後の静かな生徒指導室。今朝方、義勇によって没収されたピアスを受け取りに炭治郎は向かった。夕陽が射し込み、カーテンがなびいている。
そこの席へ着席し、反省文を書くようにと原稿用紙を二枚手渡された。
「え!二枚も書くんですか?!」
「お前な、何回目だと思っている」
「うっ。書きますよ」
カリカリと鉛筆で文字を紡いでいく。
静かな生徒指導室にふたりきり。
「書けました」と、書き終えると義勇へと手渡した。
「まぁ、いいだろう」
「……ぎっ、義勇さん」
義勇の手を掴むと義勇は一瞬目を見開いた。はらり、と原稿用紙が床へと舞い落ちた。
「どうした?」
炭治郎は掴んだ手を滑らせると指を絡めるように、指先で指股を撫でる。
「あの、俺、そんなに魅力ありませんか?」
俯いた炭治郎の顔を覗き込むと目頭を熱くさせ、宝石のような瞳から今にも涙が零れ落ちそうだった。
義勇は優しく微笑み、指先で炭治郎の涙を拭い取り、瞼へキスを降らした。
「炭治郎、今は焦らなくていい。お前は十分に魅力的だ。卒業まで待てるな……?」
「はい……。待ちます。待てます」
宝石のような瞳をキラキラと輝かせて。
「いい子だ」
赫灼の髪を優しく優しく撫でた。
愛しくて大切にしたくて。
でも本当はキスもしたいし抱きたいが、教師としてのコンプライアンスも貫きたい。
今はまだ無理して背伸びしなくていい。
ゆっくりと傍で大人になってほしい。
卒業するその時までは。