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    nanamigasukidao

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    nanamigasukidao

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    だいぶ昔に呟いた吸血鬼パロの夏伊地と五伊地です。
    その癖に五はまだ出てきてないし、前半は伊さんしかいないしでしっちゃかめっちゃかです。
    ジュジュツのジュの字すらない世界線です。

    吸血鬼パロ「今日も疲れたな...」
    仕事からの帰り道、伊地知は今日一日の忙しさを思い出して溜息を吐いた。何十社も面接を受けたかいがあって、一般的な目線からホワイト企業に分類されるだろう。しかし、どんなに良い職場でも忙しい時は忙しいし、しんどい時はしんどい。特に今日は休む暇が欠片もなかった。一心不乱にキーボードを叩いていた。
    仕事を続けられるかどうかは人間関係で決まるとはよく言ったもので、同僚や上司が優しくなかったらとっくに辞めてると思う。いやどうだろうか。ブラック企業で働いている自分を少し想像してみたが辞める訳もなくズルズルと続けてしまいそうで、その妄想を直ぐに打ち消した。割かしホワイト企業を引いて良かった...。

    今日は新人のミスをフォローしていたのでいつもより遅くなってしまった。新人だから仕方ないし、その時期は失敗して身につくので全然かまわないのだが会社のオフィスで、よしこれで終わったと時間を見た時に少し驚いてしまった。家に帰る時には0時をすぎてしまうが、残業代が出る職場で心底安心したし、まぁ明日から三連休だから遅くなってもいいか。

    最寄りの駅へと付き、時間が時間だから少ない人の量に、出勤時もこのぐらいにならないだろうかと階段を降りながら考える。出勤時の満員電車の蒸し暑さは今もこれからも慣れないと思う。今日は座席にも座れなかったので辛かった。
    その疲れを癒すために家に帰ったら風呂にのんびり入ってダラダラしよう、明日は休みだから二度寝しても誰にも怒られない。録り溜めしていた落語でも見ようか、明日のお昼はうどんでも食べに行こうかな。

    改札を抜け、足取りも軽やかに家までの道を歩く。コンビニで何か買おうか迷ったが、冷蔵庫にお酒もあったし、食べれるものもあったことを思い出して、寄り道せずに歩く。家までの距離は徒歩で15分、住み始めてから5年も経てば考え事をしていても家までの道のりは体が覚えている。しかし、いつもより帰る時間が遅く、そして自分が通ってる道は外灯が少ないために何か出てきそうで、少し気味が悪い。浮き足立っていた心を咎めるようにやってきた感情に、背中に冷や汗が伝い、伊地知は足早に家への道を歩いた。曲がり角を普段通りに曲がって、真っ直ぐ、少し歩いたところで右に曲がって、そうしてまた少し歩いたところに自分が住んでいるアパートが見えてくるはずだ。5年前に契約したこのアパートは少し建ってからそれなりに年月が経っている。ボロアパート...まではいかないが所々に汚れが見て取れた。しかし、一人暮らしには程々の値段で程々の広さの部屋なので、嫌悪などは感じることはなく伊地知はむしろ気に入っている。所謂ご近所トラブルと言ったものも経験したことは無かった。


    それなのに



    「....あれ...何処かで間違えた...?」



    あるはずの場所に自分の住処であるアパートがどこにも無い。辺りをキョロキョロと見渡しても見つからず、おかしいと眉を顰める。周りにあるのは見たことない一軒家が並んでおり、5年この地域で過ごした伊地知でも全く検討の付かない場所だった。
    考え事をしていたせいで違う道に行ってしまったのかもしれない。疲れもあったから仕方ないか。少し疑問に思いながらもそう考える。携帯で自分の家を案内してもらおうとポケットから取り出して、電源をつけると、ちょうど0時になったようで、待受画面の真ん中にそう表示がされていた。今頃家に着いていたらお酒飲んでたんだろうなぁ。

    そんなことを緊張感もなく呟く。
    手馴れた様子でアプリを開こうとしたが、何故か全く表示されない。変だなと思っていた所に視界に映った文字に目を見開く。

    「うそ、圏外」

    周りは閑静な住宅街だ。間違っても電波の届かないような山奥とかそんなところでは無い。普通ならアプリが立ち上がるはずだ。まさかこんな時にバグ...?使っている携帯は大事に使っており、故障は考えにくい。今日は厄日なのか...?次々と生じる問題に伊地知は頭を抱えたくなる。
    とりあえずは...と携帯をポケットに戻し、元きた道を戻ったら知ってる道にも出るだろうと踵を返した。






    そう結論付けて30分、どうにか家にたどり着こうとしてもたどり着けず、途方に暮れた。

    あれからすぐ、迷うことなく元来た道を歩いたはずだ、ちゃんと考え事せずに歩いていたはずなのに、見たことの無い公園やら、見たことないスーパーやら、まるで異世界に来てしまったような心地になる。いや、本当に異世界に来てしまったのかもしれない。そんな到底普段では信じられないことが思い浮かぶ程、おかしな現状に伊地知は焦っていた。だって、どんだけ歩いても勝手知ったる道には出ない。人にも会わない。こんな時間だとしても、今の時代では自分以外誰もいないというのは都会寄りの地域では違和感しか感じない。ただでさえ携帯も通じない現状に、伊地知はジリジリと精神を追い詰められるのを感じた。

    疲れで鈍っていた頭が警鐘をならす。いくらなんでも考え事をしていたから迷子になった、ということで済ますには些か異常ではないだろうか。普通の道を通っていたのにこんなに変なところまで人は歩けるものか?

    もし、もしも運良く、人に出会えたとしても、その人は本当に信用に値する人だろうか。自分から話しかけられるのだろうか、


    ━━━━そもそも人間なのか

    そこまで考えて、ひゅっと息を呑む。
    こんなことを考えるのは馬鹿げている、有り得ないということは分かっている。しかし、そういう結論に至っても仕方がないと思える程の未知の世界が今、伊地知の前に広がっていた。


    「君、」
    「ひッ...」
    「すまない、驚かせてしまったかな?」


    思考の海へと意識が飛んでいた伊地知は、突如耳に入った声に下に向けていた顔を上げる。驚愕しすぎて、体が自分の意志とは関係なく跳ねた。
    目線を上にあげれば、前髪が少し個性的な男性が申し訳なさそうな表情を浮かべていた。男にしては珍しく長髪で、違和感を感じないのは彼が端正な顔立ちをしているからだろう。

    「こんなところでどうしたんだい?」
    「あ、いえ、道...に、迷ってしまったようで....」
    「...あぁ、ここは入り組んでいるからね。たまにいるよ、君のような人は」
    「そ、そうなんですか...」

    ようやく出会えた人に、少しだけ安心する。直前まで人の形をしていないものに出会ったらどうしようかと考えていた伊地知は、一先ず、人でよかった.....と、他人が聞いたら笑うであろうことを心の中で呟いた。
    長い時間一人で過ごしていた自分にとって、信用に足る人物かどうかは置いておいて、己以外にも話せる人がいるという状況は有難かった。


    「あの...お恥ずかしながら、ここって何処なんでしょうか...?」

    おずおずと、躊躇いながら男性に尋ねる。
    「...馳走町だよ」
    「...」
    聞いたことの無い町の名前に伊地知は息を飲む。
    男性との会話により緩んでいた糸が張り詰めた。
    「おや、知らない?」
    「え、えぇ、」
    「困ったね...君はどこから来たんだい?」

    どうやら本当に変なところに迷い込んでしまったようだ、どうせ地元はないんだろうなと思いながら男性の問いに答える。

    「立川市です...」
    「...聞いたことないな」

    眉をひそめてそう話す男性にやっぱり...と諦めにも似た感情を抱きながら視線を下に彷徨わせた。
    ...これからどうするのが正解なのか。
    このまま一人で彷徨って、気が付いたら馳走町、という摩訶不思議な町から出れるのだろうか。でも一人は危険ではないか。もし良くないものが来てしまったらどうする。だからといって、目の前の人間が安全で安心とは限らない。そもそも迷い込んだこの場所に平然と歩いているのはおかしくないだろうか。
    考えれば考えるほどネガティブなことしか思いつかない。口に手を当て、顔を真っ青にする伊地知に、突然男がそうだ、と何かを閃いたように声を上げた。

    「私の家に泊まるのはどうだい?
    ...こういう言い方するのは妥当かどうかは分からないけれど迷子なんだろう?
    男一人でも知らない場所をこんな真夜中に歩くのは危ないしね」

    今日初めてあった相手の家だなんて怖いとは思うけど

    そう困ったように笑う男に思考が悪い方へ悪い方へ傾いていた伊地知は毒気が抜かれたような心地になる。
    手のひらを返すようだが、自分は何もかも疑いすぎなのかもしれない。自分のことを気遣う視線は、どう考えても悪い人には見えないし、疑ったところで事態が好転するとは思えない。

    いつもより時間がかかった仕事に加えて長時間歩き続けた疲労、知らない場所にいつの間にか一人になっていたという状況下による精神的負荷に、挙句の果てにはいつもであれば寝ているであろう時間帯。
    精神も体力も限界だった伊地知は男の意見に頷こうと、口を開きかけて、

    「あ、あの...」



    ━━突然、ぞわりと肌が粟立つのを感じ、喉を締め付けられるような恐怖が伊地知を襲った。背中に冷や汗がひたりと伝う。
    タイミングの良すぎるそれは、まるで本能がやめておけとでもいうかのようで、紡ぎかけた言葉は泡のように消えた。
    先程まで何ともなかったはずなのに、安心感すら覚えたはずなのに、早くこの男から離れなければとなぜか根拠もない焦りを覚える。

    「どうしたんだい?」
    「あ、いや....えっと、有難い話なのですが...
    も、もうちょっと自分で探してみます...すみません...ありがとうございました」

    少し頭を下げ、しどろもどろになりながらも言葉を吐く。
    挙動不審とも言えるような行動に困惑した表情を浮かべる男に伊地知は申し訳なく思いながら、足早にその場を去ろうと踵を返した。どうしてなのかは分からないが、この選択が正解のような気がして、



    「━━━思いのほか鈍くはなかったみたいだね」
    そろそろ悟が五月蝿そうだし、仕方ないか

    「え?」

    男がボソリと呟いた声は2人以外誰もいない道にはよく響く。
    反射的に振り返ろうとすると強引に後ろから腕を引かれ、至近距離で男と目が合った。先程の優しげなものとは違うどろりとした、熱さを孕んだそれを見た途端、視界が霞む。
    全身の力が急に抜け、崩れようとした体を男が支えた。

    「ぁ...?」
    「あまりこれは使いたくなかったんだけど」

    困ったように笑う男を最後に、伊地知の意識は暗転した。
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    Replies from the creator

    nanamigasukidao

    MEMOこの前呟いてた祓本パロで五と夏のマネージャー伊がガチで辞めようかと考えてる話の完成版です。
    五伊地と夏伊地です
    正確には五→→伊・夏→→伊
    祓本パロ【今話題の芸能人と言えば?】

    仕事から自分の家があるアパートに帰ってきて、なんとなしにつけたよくあるテレビ番組の街角インタビューのコーナー。
    それを受けた人たちのほとんどが祓ったれ本舗を口に出しているのを見て、

    (そろそろお二人のためにもちゃんとしたマネージャーが付くべきでは?)

    祓ったれ本舗の現マネージャーである伊地知はふとそう思った。



    祓ったれ本舗とは、五条悟と夏油傑の二人で構成される漫才コンビだ。常識外れのボケの五条と正統派で真面目かと思えばたまにずれたツッコミをする夏油。彼らはお笑い芸人の癖に端正な顔立ちをしており、女性ファンが九割を占めている。結成当初は所詮顔だけと揶揄されていたが徐々に頭角を現し、初出場にてMー○優勝、上○漫才新人賞受賞…等々。数々の賞という賞を総なめにし、今では祓ったれ本舗を知らぬものはいないと言っても過言ではない。バラエティーにも引っ張りだこ、そしてドラマにもお笑い芸人でダブル主演という前代未聞の所業を成し遂げ、挙句の果てには祓ったれ本舗のみの写真集も重版が決定するほどの人気ぶりだ。
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