ズルい男 はしゃがないはずがなかった。キスから始まった名前のない関係を、レーズンバター味の賄賂を使いつつ、恋人という形になんとか収めたのだから。
ようやくお付き合いするに至った、大好きな先輩。友達の寮の先輩が片思い相手になって、そしてついに恋人になって──このまま順風満帆に進むのだと、監督生は信じていた。
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「改めてお誕生日おめでとうございます。以上でインタビューは終了です」
「はーい、こちらこそありがとねー」
先輩相手であるからして、一応、一礼。監督生は頭を上げるとすぐに、談話室の隅っこへいそいそと向かう。ようやく終わったという安堵感に小さくため息を吐き出すと、それを耳聡く聞きつけた男がいつの間にかそばに立っているのに気付く。
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