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    フジワラ

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    フジワラ

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    勢いで書いてしまった節分の嵐山家with迅悠一!
    シリアスはありません、そこにあるのは勢いと斜め上に行ってしまった嵐山家長男だけです……👹🫘

    2025/2/2

     二月に入っての最初の季節の行事といえば節分である。

     迅がいる玉狛での節分は、陽太郎がいるので木崎お手製の恵方巻を食べた後に豆まきをするのが恒例になっていた。
     もちろん豆をまくのは陽太郎で、鬼になるのは玉狛男性陣だ。その鬼役も木崎、林藤といて迅に役目が回ってくるのが三番目の優先順位なので……迅まで回ってくることがまずない。(木崎や林藤に比べて迅がやるとなんか鬼の迫力が足りないと陽太郎や女性陣に言われているために鬼役が回ってこないという事実は見えないし聞こえないことにしている)
     そんな玉狛の節分事情を昼休みに迅と嵐山は弁当を食べながら話していた。
     高校二年の男子高校生二人の昼の話題が節分だと……若干所帯じみているような気もするが……。
     玉狛の話を聞いた後に嵐山家の節分の話になるのは、双子の弟妹や家族を溺愛している嵐山にとっては自然なことだろう。迅もそれが当たり前として聞いている。
     今まで嵐山家の節分と言えば、鬼役は父親か今は亡き祖父だったらしい。そして嵐山はお兄ちゃんとして双子の弟妹を守る役目だった。
     今年は残念ながら父親が節分の日に出張になったらしく、ついに今年初めて鬼役を嵐山が務めることになったらしい。
     初めての鬼役を嵐山はずいぶんと張り切って楽しみにしているようで、わざわざ通販で鬼用のグッズを買ったと言う。
    「あ、そういえば……副と佐補が迅にメールを送りたいって言ってるんだ。二人に教えていいか?」
    「二人が?」
     焼きそばパンにかぶりつきながら迅は首を傾げた。
     嵐山の弟妹とは何度も嵐山の家に遊びに行っているので顔見知りだ。嵐山の弟妹なだけあって人懐っこく迅にも懐いてくれていたし、嵐山の家に泊まりに行ったときに四人で布団を敷き詰めて寝たりしていて、迅も二人とは仲良くしている。
     仲良くしているが、二人が迅になにか伝えたいときは嵐山を通していたので二人と迅が直通で繋がることは無かったし、それで不便を感じることはなかった。
    「別に構わないけど」
    「そうか、じゃあ二人に伝えておくな!」
     焼きそばパンを飲み込んで頷く迅の返事を聞いて、嵐山は早速二人に連絡を取り始める。
     そのとき、嵐山を通して視えた光景に迅は動きを止めた。
    「……ん? ……んん?」
     なにかの間違いかと思い、改めて嵐山を視る……が、サイドエフェクトで視えたものは変わらなかった。むしろ高い可能性で確定しそうな未来だ。
    「迅? どうした?」
    「……ん、ううん……なんでもない」
     双子が号泣している。
     そんな視えた未来を、迅はあえて嵐山には伝えなかった……。
     そうしているうちに、迅のスマホが着信を知らせてくる。見てみると、早速送られてきたのは副と佐補からだった。それぞれ二人ほぼ同時というあたりが双子らしい。
    「二人からか?」
    「うん、そう。節分に家に遊びに来ないかって」
    「そうか、来るんだろ?」
    「そうだね……予定ないしお邪魔しようかな」
    「うん、一緒に豆まきしよう! 楽しみだな!」
     迅も参加すると聞いて嵐山が嬉しそうに笑った。
     確かにその日は防衛任務も当たっていなかったし、副と佐補からは「兄ちゃんが張り切りすぎて手が付けられなくなったら困るからぜひ来てください」と切実なヘルプが来たし、そしてなによりも見えた双子の未来が気になる……。
     そんな訳で、迅の今年の節分は嵐山家の節分に参加することになったのであった。
     
     
     節分当日。
     学校帰りにそのまま迅は嵐山家に行き、双子からの大歓迎を受けて夕飯の恵方巻をごちそうになった。
     副も佐補もずっと楽しそうで、視えていた号泣する気配はまったく見られないのだが……それでもずっと二人が号泣する未来が見え続けている。
    「じゃあ、そろそろ豆まきするか! 準備してくるからちょっと待っててくれ」
     そう言い残して嵐山は準備のために自室へ向かっていく。
     迅は双子と一緒に豆まき用の豆を準備する。玉狛では後からの片付けが楽なので落花生を用意しているのだが、嵐山家では大豆だった。
     節分の後に予想外の場所から豆が出てくるという話をしている内に嵐山の用意ができたらしく、「もういいかー?」とドアの向こうから聞こえてくる。
     豆の入った升を持ち、双子と一緒にいいよと言うと、静かにドアが開いた。
     
     次の瞬間、嵐山家の居間が恐怖で静まり返る……。
     
     ゆらり……とドアの向こうから現れたのは……鬼というか、般若だった。
     ものすごく不気味なリアルさを追及したとしか言いようのない般若の面だ……それに山姥を思わせるような毛と死装束を思わせる白い着物、手にした血塗られた包丁……。
     一言で表すのであれば、恐怖。
     底知れぬ……そんじょそこらのホラー映画なんか敵わないほどの恐怖だ。
     
    「……っ!」
     
     とんでもなく怖い、その姿と雰囲気にまだ小学生である双子が耐えられるわけがなかった。
     迅の両腕にすがり、双子が……恐怖で泣いた。
     これか……! これが視えていた光景か……!
     これは仕方ない……相手は嵐山だとわかっていても、迅ですらもあまりの恐怖に身がすくむ思いだ。
     しかも……ここで止めておけばいいのに、張り切って鬼になることに使命感すら抱いている嵐山は恐怖に泣く双子を追いかけ始めた。
     もちろん、双子も迅も逃げた。
     全力で恐怖の般若から逃げた……そして恐怖の般若は追いかけて来る……全力でどこまでも追いかけて来るのだ!
     これには双子は大号泣である。
     迅も怖くてちょっと泣きそうだった……叶うことならばトリガーをオンしたいくらいだ。
     もうそこには豆まきなどはなかった。そこにあるのはただただ恐怖と混乱と号泣の阿鼻叫喚だ……。
     しかも、それは嵐山の母があまりの阿鼻叫喚に駆け付けて「じゅ、准ー!」と叫ぶまで続き、……後で嵐山はやり過ぎだと母より盛大に叱られたのである。
     
     
     この年の節分は嵐山家長男般若節分事件として語り継がれ(迅と嵐山家の中で)、翌年は迅の暗躍に暗躍を重ねて節分に嵐山のスケジュールが埋まるようにして嵐山家の節分の平和が守られたのであった。
     
     ***
     
     少し遅めに起きたので朝食兼昼食として木崎が用意してくれたサンドイッチを食べている迅に木崎がコーヒーを入れながら話し掛けてきた。
    「今年の節分だが、玉狛第二のやつらもいるから鬼役を増やそうと思う」
    「あー、もうそんな季節か。うん、わかっ……」
     今年は玉狛第二のメンバーも加わっての節分になる。玉狛第二はもう中学生だからとは思うが、近界民である遊真は豆まきは初めてだろう。いろいろなことを経験させたいと思っているので、盛大に行う予定のようだ。
     それはいい、玉狛の節分はそれでいいと思う。
     ……迅は大変大きなミスを犯していたことに今、気付いてしまったのだ。
     最近またいろいろと忙しくてカレンダーの曜日感覚も行事のことも頭からすっかり抜け落ちていた。だからすっかり忘れていたのだ。
    「うおおお……節分! やばっ!」
     急に立ち上がり叫びだした迅に木崎が驚くが、迅はそれどころではない。
     慌てて副と佐補の未来を視る……大丈夫か? さすがにもう大丈夫だよな? そう思いながら、いや願いながら視ると迅は頭を抱えた。
    「なんでまた号泣コースなんだよお!」
    「迅? どうした?」
    「なんでだ……もうあの二人中学二年生だぞ……もう般若はおばさんに禁止されてるのに、なにやるつもりなんだあいつ……ってか、おじさんどうした……あーまた出張かよ」
     木崎の声も届かず迅は頭を抱えたままブツブツとなにか言い出したと思うと急にスマホを取り出して電話をしようとしたが、それと同時にメッセージを受信したらしい。受信したメッセージを読んだ迅はまた頭を抱えながらそのまま電話をかけた。
     
    「おおい! おまえ節分……あ、うん双子から誘われたけど……いや、行くけど……。そうじゃなくて! おまえなにするつもりだ? まさかまた般若……お、おう……さすがにもうしないならいいんだけど……いや、別に期待してないから! 泣いてもないから! ……じゃあなにするつもりなんだよ……はぁ? 当日のお楽しみじゃないんだよ! 早く言えよ! ……ん? んん? 綾辻って言った? 今、綾辻って言ったか? 綾辻遥画伯の鬼のお面……だ……と?」
     
     この年の節分、迅悠一が嵐山家の節分へ暗躍することをうっかり忘れたために……斜め上に張り切ってしまった長男によって嵐山家は再び、阿鼻叫喚の様相を呈したのであった。
     

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    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
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