視界の端。ベッドの端に転がっていたスマートフォンの液晶がパッと明かりを灯し、ゼロス・ワイルダーは膝の上に置いていた台本から、自然、そちらの方へと視線を動かした。
どうやら帰宅してからマナーモードを解除するのを忘れていたらしい。
台本を傍らへと置いて、待受画面の中心にSNSアプリの新着メッセージを告げる小さなポップアップが浮かべたスマートフォンを手に取る。
平日の二十二時───最もゼロスには平日と休日の概念は無いのだが───この時間帯に、ゼロスのプライベート用のスマートフォンへと連絡を送ってくる相手は限られている。
ポップアップをスワイプし、アプリを開く。
表示されている名前は、やはりゼロスの想像した通りの人物であった。
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