「ボク、キミが思ってるより、跡部くんのこと大好きなんだけどなぁ」
「アンタの言うことは話半分にしか聞く気にならねぇ」
「あはは、日頃の行いってやつ? でもこれは本当。跡部くんのこと、愛してるよ?」
跡部くんの目が、ゆっくりと、大きく開かれる。ゆっくりと開いた綺麗な瞳は、また同じようにゆっくりと閉じられていく。目を細めた跡部くんは、柔らかく微笑んでいるようだった。
「信じられない」
「……嘘。キミ、凄く嬉しそうじゃないか」
そんな緩んだ顔で言われても、説得力は皆無だ。跡部くんだって分かってないはずはないだろうに、どうしてそんなあからさまな嘘をつくのだろうと首を傾げる。
「嘘じゃねぇ。信じられないから、もう一回」
その疑問はすぐに解消された。跡部くんにしては珍しい、強請るような声に思わず体が固まる。固まったままにまじまじと跡部くんを見つめていると、早く、と急かされた。
「……愛してるよ」
「まだ信じられねぇな」
「もう……愛してる、跡部くん」
「もう一度聞きたい」
もはや建前すら無くなった、跡部くんからのただのお願いに、体温が上がる。普通におねだりしてくるなんて、そんなの反則だ。
「ちょっと、キミね」
「入江さん」
愛を囁くこと以外許さないとでも言うように言葉を遮られる。その瞳に見え隠れする期待の色に、こちらの方が参ってしまいそうだった。そんな甘えたおねだりのやり方、どこで覚えてきたの。
「……好きだよ。跡部くんが好き」
「俺もだ」
跡部くんが、満足そうに目を細める。