眠れない夜(流柊)ふと目が覚めると隣に寝ていたはずの柊羽が体を起こし、窓の外を見ていた。
「寝れない?」
「壱流、起こしてしまったか?」
俺が声をかけると、柊羽は静かに振り返った。
柊羽の背後にある窓からは月が見えていて、それが柊羽をより美しく見せていた。
「いや、目が覚めただけ。柊羽は眠れない?」
「不規則な生活をしているから、たまにあるんだ。壱流は気にせず寝なさい」
「うーん……」
月の光のせいなのか、柊羽はこの世の物とは思えないほど綺麗で、それが俺を不安にさせた。
このまま先に寝てしまったら、柊羽はいなくなってしまうのではないか。
そんな気がした俺は柊羽の腕を取って、一緒に横になる。
「壱流?」
「いいから目を閉じろって。それだけでも体は休まるんだから」
嫌がらない柊羽をいいことに、俺はその体を抱き込む。
暫くはモゾモゾしていた柊羽は、やがて大人しくなった。
「……柊羽?」
小さな声で呼んでみても返事はない。
そっと顔を覗き込んでみると、すうすうと寝息を立てている。
「あっさり寝てんじゃん」
眠れないって言ってたわりに、思った以上に早く眠りについた柊羽。
それが俺の腕の中だからという理由だったら嬉しいなと思いつつ、俺も眠りについた。