「その時はまた、僕にお茶を入れさせてください」 かつてのメロピデ要塞の地獄のようだった体制をひっくり返した新たな管理者、リオセスリは要塞の全てを掌握していると畏怖されているが、本人曰く「目も耳も2つずつしかないのだから全てに目を光らせるなど出来るわけがない」と笑うのである。
しかし、彼の元にメロピデ要塞を見張るもう1人の目と耳が居ることはあまり知られていない。
「失礼します。リオセスリ様、依頼のあった調査の件で報告に参りました」
執務室の螺旋階段を上がってきた看守がきびきびと挨拶をする。
「ああ、ご苦労。今紅茶を入れるから少し待ってくれ。だがその前に……」
看守を一瞥したリオセスリが立ち上がる。紅茶を入れるためかと思いきや、は茶器の仕舞ってあるキャビネットに向かうのではなく看守の前に立ち塞がった。
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