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    Anulus_x

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    Anulus_x

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    端的に言えば類が倒れる(?)話。
    自己解釈が多く入ってるので本当の体不好きの方には物足りない内容かと思います。
    ご笑覧いただければ幸いです。

    フェニックスワンダーランドから独立し、フリーランスとなったワンダーランズ×ショウタイムは、まずはと慶介たちから紹介された劇団へと向かった。相手方は司たちのショーを見たことがあると熱烈に歓迎しながらも、共にショーを作り上げる際には厳しく指導を行ってくれた。結果的に司や寧々の役者としての成長は勿論、えむと類も大きく成長することが出来たと4人は感じている。
    そうして大成功を収めたショーのお疲れさま会として、4人はセカイへと来ていた。こっそり客席に置かれたスマホから見ていたミクたちからこぞって感想の嵐が送られ、そのまま労いを込めたショーを送られたところである。

    「す、すすす……素晴らしかったぞミク!!!!!!!!この脚本は本当にお前が考えたのか!?」
    「とってもキラキラわんだほいなショーだったよ〜!!」
    「うん。疲れなんて吹っ飛んじゃったね」
    「そうだね。本当に素晴らしいショーだったよ」

    幕が下がり、スタンディングオベーションと同時に響いた感激の声に、ミクは満面の笑みを浮かべて舞台袖から歩いてくる。

    「そうだよ〜☆このお話はミクが考えて、みんなで作ったの!」
    「頑張ったみんなにお疲れ様ってもっと元気になってもらえるようなお話にしたいってずっと言ってたから、楽しんでもらえたようで嬉しいね」
    「うん!」

    ミクの相手役として演じていたカイトも隣に並び、後ろからもそれぞれの衣装を着たバーチャル・シンガーたちが歩いてくる。それぞれが大きな笑顔を咲かせており、当人たちにとっても会心の出来になったことが伺えた。

    「言いたいことは沢山あるが、まずはあれだな。レンが客席を飛び越えてこのテントの端まで跳んだのは驚いたぞ。着地とかは大丈夫だったのか?」
    「もっちろん!ちゃんと安全ベルトは付けてたし、着地する場所にはふかふかのクッションと大きいぬいぐるみくんたちがいたから、万が一失敗しても大丈夫なようにしてたんだ!」

    失敗しなかったけどね!と誇らしげに胸を張るレンに、全員が改めて拍手を送った。その拍手を身に受けより胸を張るレンは、ふと少し表情を切り替えて類に体を向けた。

    「それに類くんにちょっとだけ調整してもらってたりしたからね!類くん、忙しかったのにありがとう」

    そのままペコリ、と頭を下げる。その言動に、僕は何もしてないよ、と類は笑って首を振った。

    「え?類、こっちのショーにも関わってたの?」
    「いや、本当に僕が作った機器の調整というくらいだよ。僕しか出来ないことだしね」
    「僕たちも簡単なことなら教わっているけど、どうしても対処できないことがあってね。困ってる時にたまたまこっちに来てくれていたから、頼ってしまったんだ」
    「気にしないで欲しいな。いつもお世話になっているし、好きでやっているからね」

    類がそう言って眉を下げて手を軽く振れば、カイトはこれ以上は言えないなというように肩をすくめた。
    その様子を見て、司たちは軽く目を見合わせる。今回共にショーを行った劇団は類の演出にも理解を示し、類もそれならばとその手腕を大いに振るった。相手方の演出家と意見を交わしながら演出を煮詰め、照明などへの指示や舞台全体の機器調整を行い、そして出番は圧倒的に少なくはあるが当たり前のように役者として板の上に立ったのだ。

    「いつも思うけど、類のその処理能力すごいよね」
    「たっくさんのことをシュパパン!って片付けちゃうよね」
    「そうね。状況が変わって大変なのに、こっちのことまで気にかけて、それで両方完璧にやっちゃうんだもの。すごいわね!」

    フリーランスとなってから4人で話し合い、様々な作業を役割分担している。しかし元々ショー全体の演出、それを支える舞台機構の作成、そして時には衣装の手配や脚本の執筆・調整等を行っていた類に仕事の比重が偏ってしまうのは仕方のないことだった。特に舞台機構の作成などは類にしか出来ず、そのことについて類は「好きでやっているから大丈夫」といつも笑っていた。
    そして実際、現時点までで類は体調を大きく崩すこともなく楽しそうに仕事を行っている。元々ひとりで全てやっていたこともありリズムを掴んでいるのだろうと、他のメンバーは安心と頼もしさを混ぜた視線を向けていた。
    急に多くの賛辞を向けられた類は少し居心地悪そうに指を遊ばせた。時には線引きともなり得るたくさんの賞賛は、少なくともこのセカイではただまっすぐに類を褒めるためだけに使われる。あまりにもまっすぐなそれにどう反応して良いか分からない気持ちになり、いつもペラペラと出てくる言葉がどうにも見つからなくなってしまう。
    その様子を察した司はいつかのように逃げられないようにと肩に手を置いた。

    「これからも頼りにしているぞ!」
    「……フフ、ああ!任せてくれ」

    司がまとめのように告げれば、類は一瞬視線を彷徨かせたものの、頼もしく応えた。
    それに満足そうに頷き、さて、と手を打った。

    「カイトたちがパーティの準備をしてくれているんだろう?まだまだ感想も言い足りないし、良ければそっちで続きを言わせてもらえないだろうか?」
    「そうだね。パーティ会場の準備もみんなで頑張ったから、是非楽しんで欲しいな。案内するよ」
    「あっ!リン、飾り付け頑張ったからみんな見て欲しいな!!」
    「飾り付け?今日は外でやるんだよね?」
    「ふっふっふ〜☆今日のパーティは一味違うのだ!」
    「ルカ!移動するわよ!!起きてちょうだい!!!」
    「あら〜?もうと〜っても楽しい気持ちなのに、まだあるなんて……素敵ね〜……ぐぅ……」
    「わわ!ルカお姉さんまた寝ちゃった!?」
    「ルカ!!もう〜仕方ないわね……」

    賑やかに移動する集団の殿につき、類は地面を見るように軽く視線を下に向ける。ショーが終わり、感想を言っている時から感じていた少しの違和感。軽い足取りとは裏腹に、視界には薄いノイズがかかっていた。



    セカイにある大きな時計台の下、そこにはアンティーク調の椅子や机が並べられている。机に引かれた白いテーブルクロスの上には綺麗に飾られたテーブルフラワー、そしてアフタヌーンティーを思わせるようなお菓子と良い香りが立つ紅茶たちが並べられていた。少し離れた場所にはしっかりとした食事やスナックがおいてあるのはご愛嬌だろう。リンが中心に用意したというテーブルフラワーの綺麗さに寧々とえむは惹かれていき、そのままリンに誘われ最も近い花に席に着いた。
    それぞれが気の赴くまま席につく中、類は奥の食事のある方へ向かう。ふと気がつけば、隣に司が並んでおり、後ろにはカイトがついてきていた。

    「おや、司くんとカイトさんもこちらかい?」
    「いや、よく考えてみたらランチの時間だと思ってな。純粋に腹が減った」
    「僕もお邪魔するよ。あっちにも軽食はあるけど、食べ盛りの2人はこっちに来るだろうと思っていたからね。たくさん用意したから、遠慮せず食べて欲しいな」

    フードファイトのような食べ歩きをした胃袋を持つ2人である。見越されていることに少しの気恥ずかしさを覚えながら、カイトに礼を述べた。
    席に着き一通り食事を終えると、司とカイトは先程のショーについての話に花を咲かせていた。しかし常ならば真っ先にマシンガントークを繰り出す類が今日はやけに静かだなと2人して視線を向ければ、類は耳だけ傾ける様子を見せながらも未だ黙々と目の前の食事をゆっくりと平らげていた。その光景に思わず目を瞬く。

    「なんだ類、そんなに甘いものが食べたかったのか?」
    「甘いものはあっちの方が多いけど……足りなかったら持ってくるかい?」

    類の皿の上には軽食もあるが、それよりもケーキをはじめ、とにかく甘いものが多く目立っていた。量はそこまで多くないようだが、ほぼ甘さ一色の皿に司の口から疑問の声が出る。
    カイトが立ちあがろうとすると、類は軽く手を振り、口の中のものを飲み込むとなんでもないように口を開いた。

    「ああ、なんだか食べ始めると止まらなくてね。でもそろそろお腹いっぱいだから、大丈夫だよ」

    お気遣いありがとうと続けると、それなら良いんだけどとカイトは再び席に座ろうと腰を下ろす。
    しかしあちら側からミクとリンに大きな声で呼ばれ、再びその腰を浮かせた。どうやらテーブルフラワーに用意した仕掛けが上手く動かないようで、急いで来てー!というジェスチャーが見える。今はレンが仕掛けに向き合い、どうにかしようとしているらしい様子が見えた。

    「おや?昨日動作確認をした時はちゃんと出来たはずだけど……ごめんね2人とも、ちょっと行ってくるよ」
    「いや、オレも行こう。せっかくなら仕掛けも見たいしな。類も行けるか?」
    「ん、……ああ、僕もそれは見たいな。すぐ行くよ」
    「そうかい?それならせっかくなら楽しんで欲しいし、僕は先に行くからゆっくり来て欲しいな」
    「ああ、分かった。楽しみにしてるぞ!」

    走っていくカイトを見送ると、司がゆっくりと立ち上がった。それに続くように類も座っていた椅子から立ちあがろうとした瞬間、目の前が点滅する。

    「っ、……」

    すぐに座って視界が治るのを待つと、今度はゆっくりと立ち上がった。

    「類?どうした?」
    「ああいや、なんでもない。今行くよ」

    歩き始めていた司が着いてこない類を振り返った。それに軽く言葉を返し、急がないようゆっくりと歩き出す。
    そしてひとつ、前を歩く司に気付かれないよう軽くため息を吐いた。

    (やっぱりあっちか。……でもまだ、大丈夫かな)



    司と類がカイトに追いつくと、まだ調整がうまく行っていないらしく、まだダメー!!とミクとリンに止められた。類を頼るのは最後の最後らしく、それまでは見ないでここにいて!と椅子に座らされる。2人は苦笑しながら、大人しく従う。
    座った瞬間ふっと眉を緩めた類に、司は一瞬の違和感を覚えた。

    「類、もしかして体調とか悪くないか?」
    「うん?いつも通りだと思うけれど……そんな風に見えたかな」
    「いや、オレの気のせいだったらいいんだが」

    その言葉とは反対に、視線は相変わらず類に刺さっている。それにくすぐったそうに笑い、大丈夫だよ、と返す。

    「少し疲れが溜まっているかなというくらいで、いつも通りさ。そんなに見られるとそろそろ穴が空いてしまうよ」
    「む、そうか……とりあえず一段落ついたし、帰ったらしっかり休むんだぞ」
    「ああ、もちろんさ。司くんも今回は疲れただろう。これからのためにもしっかり休んでおくれよ」
    「そうだな。そうさせてもらおう」

    そう2人で頷いていると、後ろからリンが類の肩を小さく叩いた。急に現れた手に司は大仰に驚き、類も軽く目を見張った。

    「うお!?リン!?びっくりしたじゃないか」
    「どうしたんだい?」
    「う〜ほんとは、ほんとはね、類くんにも楽しんで欲しかったからリンたちで頑張ろうと思ったんだけど……」

    しょぼ、と効果音がつきそうなほどリンが肩を落とした。

    「なんで動かないのかどうしても分からなくて……お願い類くん、助けてくれないかな?」

    その言葉に類はさらに目を丸くし、そしてふっと破顔した。肩に乗った小さな手を取って椅子を降り、目線を合わせるようにしゃがむと優しく語りかける。

    「その気持ちだけで僕はとても嬉しいよ。それに、僕を頼ってくれたこともね。僕の今まで付けた知識がみんなの役に立っていることは、すごく嬉しいことなんだ」
    「類くん……」
    「だからそんな顔はしないで欲しいな。きっとみんなを笑顔にする、素敵な仕掛けなんだろう?それならまずは、仕掛け人が笑顔でなくては」

    そう言ってどこからか飴をひとつ出すと、リンに差し出す。リンは急に出てきた飴に大きな目を瞬くと、えへへ、と嬉しそうに受け取った。

    「うん!」

    その返事を聞きつられるようにさらに笑みを深めた類は、膝を軽く払って手をつくと、ゆっくりと体を起こした。そしてそのまま、リンに手を引かれて上手く動かないという仕掛けの元へ向かう。

    (……さすがだな)

    隣で話を聞いていた司は、うむ、と満足げな顔でひとつ頷いた。
    それでこそワンダーランズ×ショウタイムにふさわしい演出家であり、司自身でスカウトした甲斐もあったというものだ。
    やはり自らの目に狂いはなかったとさらにもうひとつ頷いたところで、後ろから声がかかる。立ち上がって振り向くと、いくよー!というリンの声が聞こえた。もう直ったのか、と思う間もなくスイッチが押される。すると机上のテーブルフラワーはムクムクと花を咲かせながら上に伸び、最後には花火の音と同時にフラワーシャワーが降り注いだ。
    時計台とアンティークに揃えられた舞台ではそれはとても映え、わあ!とえむの大きな歓声があがった。リンは嬉しそうに視線を横に移す。そして何かを言おうとしたようが、その口がふと止まった。
    素晴らしい光景に近くに行こうと足を進めた司は、リンの様子を見て同じ方向に視線を向ける。そこには類が居り、視線はなんとかフラワーシャワーの方を向いているが、上体は軽く前に傾き、足元はふらふらとしている。司が足の方向を変えると、その瞬間に類の体が下に折れた。

    「類!?」
    「類くん!!」



    類がリンに手を引かれて見た仕掛けは存外複雑な作りで驚いたが、蓋を開けてみれば2箇所ほど油が切れており上手く歯車が噛み合っていないだけだった。ネネロボを呼び、油を借りてさしてやると昨日と同じ動きをしたようだったため、それならばとスイッチを押すのを任せて少し離れた場所に位置を取る。座っていた椅子からは段階的にゆっくりと立ち上がったはずだが、セカイに来た時よりも大分強くなった視界のノイズに顔を下げた。

    (油をさすだけで終わって助かった。機器の中で壊れてる部品を交換するとかになっていたら、少し厳しかったかもしれないね)

    心なしか足元も少しおぼつかない。嫌な予兆に若干の不安を覚えるが、今日はそんなに大きく動くことはないし、と思っているとリンのえむと寧々、そして司を呼ぶ声と、いくよー!という元気な声が聞こえてくる。
    その声に顔をあげると、心なしかいつもより暗い視界にテーブルフラワーが花を咲かせながら伸びていき、最後には花びらが舞い散る景色が見えた。
    素晴らしい光景だ、これは上手くいったんじゃないかい?とリンに声をかけようと一歩踏み出そうとする。しかし何故か足がとてつもなく重い。

    「……?」

    視界がパチパチと点滅している。頭の奥でテレビのノイズが走っているような嫌な音が鳴っていた。平衡感覚を保っていられなくなり、意図しないまま膝が折れ、そのまましゃがみ込んだ。

    「あ、れ……?」
    「類!?」
    「類くん!!」

    司とリンが呼ぶ声が聞こえる。さすがに大きな声を出すことはできないが、手は動かすことが出来たため大丈夫だよと伝えるように軽くあげた。しかしその意思は伝わることはなかったようで、司より先に類の元へ着いたリンがその手をぎゅっと握った。

    「類くん、類くん!大丈夫?リンがわかる!?」
    「ああ、大丈夫だよ。大丈夫……」
    「類!大丈夫か!」
    「類くんぐるぐる!?救急車呼ぶ!?」
    「何があったの?」

    司が類の近くにしゃがむと、2人の声に反応したえむや寧々、カイトたちも走り寄ってくる。

    「類くん?大丈夫かい?」
    「みんなもいるのかい?大丈夫だよ。ちょっと立ちくらみが、しただけ、で……」

    類の体がゆらりと揺れる。司は倒れるのではと慌てて体を支えたが、類が踏みとどまったらしく軽く体重を預けるだけにとどまった。
    目眩がするのか目は瞑られているが、返答ははっきりしているし、意思の疎通も問題ない。とりあえず急を要するようなことはなさそうだと、司はピンと張っていた気を少し緩めた。

    「類、やっぱり体調が悪かったの?」
    「やっぱり?」

    寧々の言葉に隣にいたメイコが驚いたように反応した。

    「なんかちょっとふらふらしてた気がして……気のせいかとも思ったから何も言わなかったんだけど」
    「そうなの?気づかなくてごめんなさいね、類くん」
    「メイコさん?そんな、大丈夫だよ」

    メイコの言葉にもしきりに大丈夫だ、と返す類に、えむはきゅっと口を結んだ。そのまま類に近寄り、リンと一緒に手を握る。
    類は定まらない視線のまま、ぎゅっと握られ温められた手を見た。そして逡巡するように口を数回パクパクとさせると、ひとつふっと息をつき、諦めたように体を支えている司にさらに体重をかけた。

    「うおっ、大丈夫か?」
    「……すまない。多分、貧血だと思うんだ。初めは低血糖かとも思ったんだけど、食べても治らなかったから………少しすれば治るから、それまでこうしてても、構わないかな」
    「……そうか。オレは構わないが、この体勢は少し辛いだろう。どこかに寝られる場所があると良いんだが」
    「それなら、わたしが案内するわ〜」

    離れた場所で状況を見守っていたルカが類に歩み寄った。

    「少し先に、いつもお昼寝してるふわふわの草原があるの。ちょっとだけ歩くけれど、大丈夫かしら?」
    「類、大丈夫か?」
    「……ああ、すまないけれど司くん。支えてもらっても構わないかな」
    「もちろんだ!」

    立ち上がるぞ、と合図をしてゆっくり支えながら司が立ち上がると、体重をかけながら類もそれに倣った。9cmの差は意外と大きく、傾きそうになった体を反対側でカイトが支える。類が何か言う前に気にしないで、と先手を打った。

    「体勢は辛くないかい?本当にすぐのところだと思うから、ゆっくり進もう」

    立ち上がったことで少し息を早くした類にカイトが優しく声をかけた。類が小さく頷いたことを確認すると、一歩一歩ゆっくりと進む大きな体を支えながらルカに着いていく。その姿に心配の目を向けながら、何かあった時のために、と他のメンバーも続いた。
    2-3分ほど歩くと、先導していたルカが止まる。ここよ、と言われた場所に類を下ろすと、ぎゅっと寄せられていた眉が和らいだ。

    「ここなら静かだし、風も気持ち良いからゆっくり休めると思うわ〜」
    「そうだね。類くん、ブランケットを持ってこようと思うけど、他に何か必要なものはあるかい?」
    「必要なもの……」

    カイトの呼びかけに、類はパチリとひとつ瞬きをする。目線を少し横にずらすと、司たちが何やら話している姿が見えた。

    「……やはり、類に仕事が寄りすぎているのだろうか。再度調整会議を開くか?」
    「でもやっぱり類しかできないことも多いから……わたしたちでも出来ることは、もう大体分担してる気がするし」
    「や、やっぱりボクが頼っちゃったからかな……?」
    「そんなことないよ!類くんも楽しそうにお話してたし、昨日まではふらふら〜ってしてなかったから……あたしももっと色々お仕事出来れば良いんだけど〜……」
    「リンも、レンと一緒に作業してる類くんとってもキラキラして見えたよ!リンもさっき頼っちゃったし……」
    「ミクたちも何か出来ることやりたいけど〜……」
    「難しい問題ね。類くんと同じことができるようになるには、きっと沢山の時間が必要でしょうし……」

    うんうんと唸りながら固まって話し合う姿に、類は思わず笑みがこぼれた。だんだんと眠りに向かう体に少しの抵抗をし、みんなに聞こえるように多めに息を吸った。

    「強いて言えば……みんなに、近くにいて欲しいかな」
    「え?」

    目の前にいるカイトが、予想もしていなかった声量に驚いたように目を丸くした。話し合いをしていた面々も驚いたように類に目線を向ける。その様子を端目に、類は言葉を続けた。

    「僕が体調を崩せばショーのどこかが止まってしまうから、ちゃんと適度に休息は取るようにしているけれど、どうも僕はそれが少し苦手なようでね。集中している時は何もなくても、一段落つくとこうなってしまうことは稀にあったんだ」

    少し疲れてきて、声量を落とす。

    「だから、僕がちゃんと休んでいるか、みんなで見ていてくれないかな。それにみんなの声を聴きながら眠ると、なんだかよく眠れる気が、して……ふぁ」

    言葉尻が欠伸に取られた。
    隣で聞いていたルカがふふ、と優しく微笑み、ごろんと類の横に寝転がる。軽く欠伸をすると、眠たそうに目を瞬いた。

    「分かるわ〜。みんなの楽しそうな声を聴いてると、眠くなってきちゃうわよね〜……ぐぅ……」
    「ちょっとまだ早いんじゃないかしら?」

    メイコの突っ込みに空気が小さく震えた。
    じゃあじゃあっ、とえむが声をあげる。

    「ここでピクニックしようよ!」
    「さんせーい☆ミク、あっちからお菓子とケーキ持ってくる!」
    「リンもリンもー!」
    「待て待て!お前らだけだと絶対に皿を割るだろう!!オレも行くぞ!!」
    「じゃあボクは飲み物持ってくるよ!カイト、余ってた飲み物も全部持ってきちゃっていい?」
    「もちろん。お願いするよ」
    「オッケー!」
    「じゃあわたしも手伝うよ。ひとりじゃ大変だよね」
    「私は大きいレジャーシートを持ってこようかしら。えむちゃん、一緒に来てくれる?」
    「もっちろん!ビュビューンって運んじゃうよ!」
    「僕もブランケット持ってきたら準備に合流するよ。類くん、少し待っててね」
    「ああ」

    音が一気に増え、楽しそうな声が響く。パタパタと走る足音やガザゴソと何かを取り出す音などが混ざって、まるでショーが始まる前のような高揚感があった。
    未だ少し廻る目を瞑ってその音を聞いていると、ふわっと何かがかけられた。お礼を言おうと口を開こうとするが、その意思に反して既に体は眠りに向かっていた。心地良い音に包まれながら、類はゆっくりと意識を夢の中へと沈ませた。
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