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    k_mikaru

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    チェイロつづき(ワンナイ狙いチェイと女々しロー)

    チェイロつづき男は、猟犬と名乗りローを追ってきたと嘯いたくせに、予想を遥かに上回る行儀の良さだった。
    シーツのカビの心配がない程度に上等な、かといって一夜の興が醒めるほど華美でない絶妙な宿に誘われて、「おれはすぐ済むから」と先にシャワーを勧められたローは言われるがままに湯をかぶっていた。頭を占めるのはあいつのこと。なんだ、あいつ。あまりに気遣いができる。よく考えたら酒の代金を支払った記憶もない。スモーカーみたいな顔をして、スモーカーみたいじゃない。
    あの朴念仁軍属馬鹿に、こんな真似ができるとは思えなかった。こんな、スマートなアプローチに見せかけた狩りの仕方。未練がましくだらだら居座って酒を飲んでいたとはいえ、自分が男に狩られようとしていることに気づかないほど呑まれてはいない。ただ、今日は全てに流されてやろうと思った。あくまで、自分の意思で、喉笛を晒すことを選んだ。てめえで始末をつけられなかった未練持ちの自分を、あの男に殺してほしかった。一晩の関係だ、それくらい利用させてもらったっていいだろう。

    ローがシャワーから上がると、チェイサーは飲んでいた瓶を置いて入れ替わりにシャワーを浴びに行き、ローが髪のタオルドライを終えるか終えないかという短時間のうちに出てきてローを驚かせた。軍人は湯浴みが短いというのは本当らしい。
    「お前、」
    軽口を叩いてやろうとして——喉がひゅっと鳴った。濡れたシルバーの髪が額に垂れている。素肌の上半身なんて何度も見ているのに、腰を覆うのがバスタオルだということだけで顔が熱い。普段見たことがない、特別な姿に胸が高鳴る。
    チェイサーは、動揺を隠すことに手一杯なことに気付いているのかいないのか、ベッドに座るローの隣に躊躇いなく腰を下ろした。湯気と、シャンプーの香り。葉巻の匂いは、しない。
    「水は飲んだか?」
    「いや……」
    ガス入りの水の瓶が手渡される。こく、こくり。しゅわ。瓶の中で弾けて、役割も果たさず消えていく泡が見える。こんなふうに、何も残さず消してくれよと願う。
    「飲んでおけ。始めたら、しばらくはおれに夢中になってもらうからな」
    「っ……自信家だな、ワンちゃん」
    「もちろん、ご主人の喜ぶことをするのは得意なんだ、犬ってのは」
    大きな影が覆いかぶさってくる。ローは空の瓶をサイドテーブルに置いて口づけを受けた。つるりと深く侵入してきた厚い舌が口の中を甘やかす。そのまま、肩を押されて、冷たいシーツに横たえられた。枕元に手を伸ばす気配の後、部屋が暗くなったのが瞼越しに分かった。薄目を開けてみて、部屋の明かりがベッドサイドの小さなランプだけだと知る。それがあまりにムーディーで、これからの行為の気配が一気に襲ってくる。スモーカーの顔の海兵に、スモーカーでないゆきずりの男に、これから身を捧げる。最初で最後、スモーカーへの気持ちも、この男への想いも、この一晩だけ許すために。この一晩で捨てるために。
    「よそごとを考えるなよ」
    「お前のことしか考えてないさ、」
    仄暗い部屋で、赤銅の瞳が見下ろしていた。スモーカー、スモーカー。嗚呼、
    「チェイサー」
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    k_mikaru

    DOODLEスモへの片思いを終わらせようとした日にチェイさんに捕まってしまったロなチェイロ。
    ※チェイさんについては、英語版サイトをざっと読んだあと、英語版二つ名を勝手和訳しましたので完全捏造です。よしなに!
    チェイロ「隣を失礼」
    聞き慣れた声が右隣からして、ローはグラスを見つめていた顔をバッと上げた。驚いたのだ。その声がしたことにではない。馴染んだ声の主が知らない気配をさせていたからだ。
    「白猟……屋?」
    ローの片恋相手の、白猟のスモーカー。男はスモロに瓜二つだった。だがローは騙せない。
    「……じゃねぇな。お前、何だ」
    正体を見抜こうと、月の瞳がキロリと光る。常人ならすくみ上がる億越え賞金首のひと睨みを、男はグラスを差し出すことで躱してみせた。
    「チェイサー。“煙の猟犬”、名前の通り海軍の犬だ」
    「チェイサー」
    ローがおうむ返しすると、チェイサーと名乗った男は律儀にこっくりと頷く。その流れでグラスをさらに少し寄せられて、ローは自然とそれを受け取っていた。澄んだ琥珀色の液体に、まん丸の氷が光っているロックグラス。一目で高価と分かる一杯に思わず目礼をする。チェイサーが口の端だけで微笑んだ。どういたしまして、とでもいうのだろうか。スモーカーの笑顔は貴重だ。あいつも、これくらい素直に笑えばいいのにとふと思う。あいつはいつも、おれを見る時にはキツく眉根を寄せている。話しかけても言葉少なに立ち去られてしまう。好かれていないことくらい、分かっていた。
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