ある雨の日と彼の枷ピリッ
小人の針に刺されたような幻の痛みに思わず手首を押さえて目が覚めた。
やっとうとうとしかけたところだったのに。
弱々しく息をつく。
宮殿の窓は、相変わらずの豪雨でやかましく鳴っている。そう、雨だ。雨の日は、痛む。
押さえられた右手が、ぴくっと痙攣する。まるで、目を逸らすなと嘲笑うみたいに。もうおれの体ではないのだと、突きつけられるようだった。
つきり。
痛む。
左手の覆いをこわごわ外す。右手首の内側に、ドフラミンゴの焼印が引き攣れた姿で嗤っている。
これは、おれの枷。おれの意思で嵌めた、おれを縛る枷だ。
ドフラミンゴに幽閉されて、体も心も弱りきって、そこに垂らされた糸。それは、恩人の命がドフラミンゴの元にあるという希望だった。おれは縋りついた。彼を殺させないためなら、自分の体だって心だって明け渡してみせた。そうしてもう何年も、おれは暴虐の王の寝室にいる。
毎年、おれが枷を嵌めた夏のある日に、おれは男に犯される。目隠しをされて何も見えず、口枷をされて何も話せず、手枷をされて自由に動けない体を、何も話さない大きな男に犯される。その日だけが、おれを生かしている。
なぜなら、その男はいつも、手紙を置いていってくれるのだ。無地のハガキに育ちの良い字で、おれを労わり慈しみ、謝罪の言葉を綴った短い手紙。最後はいつもこうだ。ごめんな、愛してる。
……未完放流!