永きに添う/尾月 国の為に死ねるなら、役に立ったみたいでいいじゃないか。暴力に盗みに殺人なんて、生きているだけで恥なものなんだから。勝手な父親に、勝手な息子も面目が立つだろう。面目なんてないだろうに。
嘲笑。
それが異常だと思わなかった。
侮蔑。
向けられる疎外の視線から目を背けるのは自然だった。
嫌悪。
身を守る術は暴力しかなかった。
国が変わろうとしている。立身出世、民権、自由、民の為のお上。政は生きとし生ける者の為に平等にある筈が、国の中心となる人間たちの手で国の隅々の在り方が歪曲されつつある。月島が生まれ育った集落にも、何処から端を発したか変革の兆しが広がり、充満していた。
拳を上げ、熱狂の演説が方々から聞こえる最中に、月島基は隣国との諍いに兵士として呼び出された。
1779