Re:スタートこの、何でも見通す、忌々しい碧い瞳は自分の死まで見通してしまった。
死ぬことは呪術師としては避けられないこと。それは、とうに覚悟はできていたし、時間や病に殺されるより、悔いなく逝ける。と清々しい気持ちもあった。
しかし、今の五条には死んでも手放せないものが出来てしまった。
初めて自分から手を伸ばし、その胸に抱いた愛し子、虎杖悠仁だけは自分の手で幸せにしたい。心が純粋で真っ直ぐな悠仁を他の誰にも渡したくないと、死を目前にしても諦められなかった。
どうすればいいのか五条は戦いの準備を整えながら思考を巡らせていた。
そして、五条は1つの結論に思い至る。
自分の死後に、産まれる赤子に五条の魂が受肉すればいいと…そこには恐ろしいほどの悠仁への執着のみがあった。
赤子に受肉するためには、五条の魂を受け入れやすい条件を整えておく必要がある。 五条は、分家の娘を赤子の母体に選んだ。分家も確実に次の六眼が自分たちの家から出るのだから否はなく、母体になる女は当主である五条悟の子を孕むことに何の抵抗もなく受け入れた。そして、五条の計画は思惑通りに進められた。
五条悟の死から数ヶ月後、多くの人々の犠牲の上に全てのことが終了した。
それを待っていたかのように、五条家より六眼を持った赤ん坊が産まれたが、今の五条家では手に余ると、再建中の高専と生き残った呪術師達に託された。
託された赤ん坊は、五条悟そのものだった。月白の髪に空の青を写したような瞳…その姿を目にした悠仁は、赤子を抱いてきた伊地知からひったくるようにして、赤子を抱きしめた。
「せんせい…」
蜂蜜色の瞳からポロポロと透明な雫が溢れ、赤子の頬を濡らした。
赤ん坊は、そんな悠仁の顔にその小さな手を伸ばして頬に触れる。
「先生、おかえり」
濡れた瞳で笑いかけると赤ん坊もキャッキャと嬉しそうに笑う。
「俺が育てるよ…今度はずっと離れずに一緒にいような。五条先生」
ぎゅっとその温かい体を抱きしめた。
1ヶ月後
「さあ、先生。今日から2人だよ」
「あー!」
悠仁の胸に抱っこ紐で抱かれた五条が満面の笑みでぷくりとした腕を上げた。
ここから、五条と悠仁の新しい物語が始まる。