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    Ydnasxdew

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    わからせ後の確認フェーズ

    #WT

    No one but youウェドはなんとも言えない気まずさに頭を抱えていた。
    夜の魔力とは恐ろしいものだ。大事なことを伝えるなら太陽の見ている間にしろと言ったのは一体どこの偉人だろう。全くもってそのとおりである。

    そうだ。…言ってしまった。
    愛していると、伝えてしまった。
    そのうえ自制することもなく夢中で求めてしまった。

    (くそ、なんてこった……もっと他にうまく伝えようがあったろうに……あれじゃ勢いに任せて言ったみたいじゃないか……)

    目を覚ますとそこは宿の寝台の上で、少し離れたところにあるテーブルではすっかり身なりを整えたテッドが朝食をとっている。

    昨晩の出来事が頭の中で鮮明に再生され、テッドになんと声をかけたものか頭の中でぐるぐると言葉を巡らせながらのそりと起き上がった。

    「あ…えっと、おはよ、ウェド…」
    「ああ、うん……おはよう…ぉあっ!?」

    立ち上がろうとして腰に巻いていたタオルがずり落ち、自分が服を着ていない事に気付く。慌てて近くに脱ぎ捨ててあったシャツに勢いよく袖を通しつつ、下着に手を伸ばしながらちらとテッドの表情を伺うと、テッドは小さな身体をさらに縮めて椅子の上で膝を抱き、顔を耳まで真っ赤にして俯いていた。

    ズボンのループにベルトを通しながらテッドの向かいの席に着く。

    「その……気分はどうだい?目眩がするとか、吐き気がするとか……」
    「ううん、大丈夫…元気だよ」

    お互いにどことなく気恥ずかしく、目を見て話すことができない。

    小鳥の鳴く声が二人の間を通り抜けていく。

    「あー……俺、水を浴びてくるよ。君、このあとは何か用事があるのかい?」
    「う、うん…午後から仕事があるんだ。ちょっとした護衛の依頼だから、今日は泊まりで明日帰ってくる…」
    「そう、か…じゃあその……頑張れよ」
    「うん、がんばる」

    昨日までのテッドからすれば、ウェドへの気持ちを整理したくて一人で受けた簡単な仕事だった。
    どうしてそんなに優しくしてくれるのか。どうしてそばにいてくれるのか。
    好きでいても迷惑じゃないだろうか。
    ……期待していても、いいんだろうか。
    そんなもやもやした気持ちを抱えながらギルドカウンターに依頼書を握りしめていった昨日の朝の自分が憎い。テッドは今すぐ依頼を破棄しに行きたい気持ちを堪え、口いっぱいにパンを頬張る。

    結局会話もそこそこのまま、この日二人は宿を出てそれぞれの途に着いた。

    *****

    翌日。
    仕事の報告を終えたテッドはラノシアまで一息にテレポすると、足早にウェドの隠れ家である廃船へ向かった。
    聞きたいことがたくさんあるのだ。一刻も早く、会いたい。
    しかし室内にウェドの姿はなかった。

    「…ここだと思ったのに…ん?」

    リンクシェルに手を伸ばしかけて、机の上に放置されたシガレットケースが目に留まった。下にメモ書きが挟んである。

    "おかえり。アンカーヤードで待ってる"

    それを見るなり、テッドは今度はリムサ・ロミンサの上甲板層へ走った。

    ──アンカーヤードへ向かうゆるやかな坂道を駆け上がる。
    ここ最近の、まるで自分の願望が見せた夢のようなウェドの姿を思い出す。

    自分のために、自らの尊厳を踏み躙られることを拒まなかったウェド。
    自分なんかと一緒に飛んでくれると言ったウェド。
    頭を撫でてくれる温かな掌の感触。
    優しく細められた瞳。
    穏やかなさざなみのような声。

    (そばにいてくれ。少しでいいから…)
    (君が望むなら、俺の翼を君にやる)
    (俺はもうとっくに、君がいないとダメなんだ)

    (──愛してる、テッド)

    屋根のある道を抜けると、暖かな潮風が髪を攫い、頭上に満天の星が輝いていた。
    翼を広げた鳥の像の下に、見慣れた姿が腰掛けて海を眺めている。

    「ウェド…ッ!」

    テッドは振り向いたウェドの胸に勢いよく飛び込んだ。
    体勢を崩した二人はそのまま地面を一回転し、上にのしかかった小柄な体躯をウェドが強く抱きしめ、笑う。

    「ははっ!よかった、来てくれたんだな」
    「とーぜん!早く会いたかった…」

    起き上がった厚い胸板に頬を寄せ、テッドはあがった息を整える。
    心臓の音が耳に心地よい。

    ウェドはテッドを軽々と抱き上げ段差に座らせると、自分はその前に跪いて懐から小さな袋を取り出した。

    「手を出して」
    「?」

    怪訝そうに差し出されたテッドの手が優しく包まれ、指に冷たい感触が通る。
    ウェドが袋から出してテッドに嵌めたものは、海のような青い石のついたシンプルな指輪だった。

    「え…これって…!」
    「君に証明したかった。俺はいつもそばにいるって」

    ウェドは普段つけている自分の首飾りの先をテッドの前に揺らして見せる。
    その石は割られ、以前の半分ほどの大きさになっていた。

    「それ…!ウェドの故郷の、大切な石なんじゃ…」
    「だからこそ、君に持っていて欲しい。俺の魂、俺の心を、君に渡したいんだ。それで証明になるかは…わからないけれど」

    深い呼吸の音。
    きらきらと星を映すウェドの瞳が、テッドを見つめる。

    「改めて言わせてくれ、テッド。──君を愛してる。俺を、君だけの男にしてくれないか」

    そう言って、テッドの指を飾った指輪の石に口付けた。

    大きな手が、僅かに震えている。

    「…本気なの?本当に、俺のこと好きなの…?」
    「ああ」
    「俺、こんなに汚れてて、なんの役にも立てないのに」
    「例えそうだとしても構わない」
    「他にウェドに釣り合う人、たくさんいるのに」
    「俺が、君じゃなきゃ嫌なんだ」

    テッドはウェドの頬を両手で挟み、思い切りキスをした。

    「…俺だけを、あんたの男にしてくれるなら」
    「…ああ。約束する」
    「絶対だよ」
    「俺は約束は守る男だ」
    「…大好き!」

    太い首に、小さな背に腕を回し、今度は優しく、深く口付ける。
    眼下に見える船からバイオリンの音が聴こえる。
    陽気に踊る人々の明るい声を連れてきた風が二人を包み込み、そっと静かな星空に消えていった。
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