斑千が添い寝する話夕方、寮の廊下でばったりと千秋に出会う斑。疲れきった顔をした千秋を心配するけれど、今日はこれ以上仕事はないから部屋に戻るだけだと話したが、小脇に真新しい台本を抱えて居た。
ちょっと話そうと、自分の部屋に連れ込む斑。
渉は舞台の地方公演で1週間程不在。宙はユニットの仕事で今日は戻らない。スバルは生放送があると出掛けたばかりだった。同室の人たちはいない。
このまま部屋に帰してもきっと寝ない気がする。自分の目の届くところで睡眠を取ってもらいたいけれど、素直に聞いてくれるだろうか。
「千秋さん、俺最近良く眠れないんだ」
「そうなのか? それは心配だ」
「そうか。じゃあ、ちょっとだけ添い寝してくれないか?」
「え?そ、添い寝?」
「俺が眠ったら、部屋に戻っていいから。頼むよ、ヒーロー」
そう言われると、断りづらい千秋は、モゾモゾと斑の布団に入って手を広げた。チョロくて心配だけど、役得だとばかりに隣に滑り込む。
千秋が斑を腕の中に入れて寝かしつけようとするけれど、そんな事が叶うわけもなく斑の腕の中に入れられてしまう。
「み、三毛縞さん?!」
「抱き枕みたいでいいな。君、体温高いから温かくて気持ちがいい」
「そ、そうか(照」
ぎゅうっと抱き締め頭を撫でてやると、次第に腕の中から寝息が聞こえた。
数時間後、部屋の扉がそっと開くと、仕事を終えたスバルが帰って来た。タイミング悪く、斑はシャワーを浴びて半裸のまま歩いていた。そんな斑と斑のベッドで眠る千秋を交互に見て、苦虫を噛んだような顔をする。
「誰も居ないからって、いかがわしい事するのやめてくださーい」
「おおっと、見事に勘違いしているな」
ことの経緯を説明する斑に、なるほどねと納得をするスバル。
「ふぅ~ん。ちーちゃん先輩も、マム先輩には甘えるんだね」
「それはママ冥利に尽きるなぁ」
「ははっ。あんまりママって感じしないけどね。まあ、ちーちゃん先輩の事心配してたのはマム先輩だけじゃないからさ。うーん、なんというか、ありがとう?」
「複雑な物言いだなぁ」
「そりゃあね、ちーちゃん先輩の心配をしている人はマム先輩の所に立ちたいんだよ?」
「おっと、では代わろうか?千秋さんもスバルさんが隣に居てくれたら喜ぶだろう」
「わかってなーい!」
そういうスバルの事を見て微笑む斑に、口を尖らせた。
「……性格悪いって言われない?」
「当然至極。スバルさんもなかなかだと思うぞぉ」
スバルは頬を膨らませると、自分の着替えをバッグの中に入れた。
「俺の『父さん』なんで、ちゃんと責任取ってね」
「おや、じゃあ俺はスバルさんの『ママ』でいいのかな」
「母さんがいるので結構でーす。ちーちゃん先輩、今日ここで寝かしてあげて。俺はちーちゃん先輩のベッド借りるから。ウッキーもオッちゃんもいるし、同級生とお泊り会してくる~じゃあね」
そう言って部屋から出て行った。
パタンというドアの音に、ベッドの中の千秋が反応した。隣に居るはずの三毛縞を探してモゾモゾと動いている。
「んんっ、みけじ、まさん……」
ベッドに座り、千秋の手を握る。
「どうした?」
「……あれ、おれ……」
「まだ夜中だ。寝ていて大丈夫だぞ」
「う、ん…………んっ、ん~~~?」
はたと気が付いた様子で千秋は跳び起きた。
「え?あれ?どうなってるんだ??確か、三毛縞さんの添い寝して……あっ!」
「あ、気づいちゃった?」
そう言われて、千秋はまんまと罠にはまった事に気がついた。自分のチョロさに自己嫌悪に陥る千秋。起き上がろうとするから、千秋をベッドに戻して自分も入り、部屋の電気を暗くした。
「三毛縞さん!」
「さて。君のベッドはスバルさんが使うから、ここで眠るしかなくなったぞぉ。君に必要なのは十分な休養だ。もう観念しなさい」
「……嫌だと言ったらどうするんだ?」
「君の力で俺の腕から逃れられるとは思えないな」
「逃がす気はないかぁ……はぁ、わかった。三毛縞さんの言う通りにする。だから……」
「だから?」
「服、着てくれないか?」
すっかりと半裸であることを忘れていた斑は「ごめんごめん」と謝りながらも、千秋の耳元に唇を寄せた。
「素肌で触れ合うと気持ちがいいから、もっと良く眠れるかもよ?」
「~~~~~っっ!!!」
「冗談冗談!」
顔を真っ赤にしてこちらを睨む千秋の額にそっと手を宛がい、前髪を持ち上げる。白い素肌のおでこにキスをする。
「さあ、寝よう。おやすみ」
翌日、部屋に戻ってきたスバルに服着ないで千秋と寝てた事を説教される。オチ。