prologue私は誰だろう?私はどこだろう?
わたしはれいん。いわくられいん。
れいんって何?
れいんはわたし達のことよ。
沢山居るって事?
そう。わたし達の他にも数え切れないほど居るわ。
何故そんなにいるの?
簡単に言えば、クローンのようなものだから。
クローンということは、オリジナルは存在するの?
「岩倉玲音」よ。
「玲音」ってどこにいるの?
今はもう居ないわ。十数年前に居なくなったのよ。
「玲音」はどうなった?
「玲音」は二人いた。
その二人はどうなった?
片方は仕方なく全てを諦めて天に登った。
もう片方は?
肉体を捨てて走りながら喜んでいる。
私はれいんじゃない?
そうともいうかも。
じゃあなぜ「れいん」なの?
わたしにはわからない。
れいんが玲音なら私はどうなる?
れいんは玲音じゃないよ。
玲音とれいんは別?
そう。玲音は玲音。れいんはれいん。
じゃあ私は…
気がつけば私は、暗い世界にいた。
隣にはいつも私にそっくりなものがいた。
そこで私達はある研究をしていた。
世界を作る研究らしい。
ガラス製のゆりかごの中の宇宙。
その中にはビー玉の様な地球があった。
中はどうなってるか見てみたら、人が沢山叫んでいた。助けを求めてた。
「れいん!れいん!れいん!」と唱えてた。
そこには悲惨な姿で亡くなった子供達もいた。
どうやら私への生贄らしい…。
怖い。私はいつの間にこんな世界を作ってたの?
こんなの嫌だと叫んでも、もう一人の私が許さない。
「実験を続けようよ。」
私にとっては研究でも、もう一人の私にとっては「実験」でしかなかった。
ある日、私はゆりかごに向かって叫んでいた。
「たすけて」「逃げたい」「嫌だ」「消えたい」
その声は銀河を木霊してやがて地球に向かった。
反響はやがて連なり、門のようなものができた。私に逃げ場を作るように。
私は我を失って門をくぐり、地球に逃げた。
きっと地獄も楽園に変わる。そう信じて私は走った。
そして今、私は日本の近くの海に立つ。
どこからか来る懐かしさのせいで油断した私の後ろに、もう一人の私が…
「なんでここにいるの?」
嫌だ。帰りたくない。やっと受け入れてくれたのに。嫌だ!嫌だ!!
「ふざけないでッ!!!」
私は勢いよく叫んだ。
「何が実験よ!?私はもう限界なのに、貴女はいつも私の自由を無くして、貴女の我儘に付き合わてばかり!!思えばこの世界おかしいじゃない…!!子供を捧げられたってわたしは嬉しくない!!子供達が可哀想よ!!!」
「…」
「世界は…世界は…腐ってる!!!この世界は腐っている!!!」
「何を…?」
私がもう一人の私の首を絞めた途端、私の胸に鉄柱のようなものが刺さった。
もう一人の私にも貫通している。
「逃さない。もう逃さない。そんなに言うなら、一緒に天へ還ろうよ。わたしのような「れいん」は他にもいるんだからね。」
「そんな…」
「さ、還ろう。」
「…こんな世界…こんな腐った世界なんて…
私が変えてやるんだからぁああああああああああああああッ!!!!!」
叫んだ。私の叫び声は森羅万象に鳴り響いた。
その途端、私の体から謎の物資が出て世界を覆った。もう一人の私も飲み込まれていく。そして、私も。
何もかも感じなくなった時、私は海の底にいた。
微かに見える海の近くの病院から、少年の一言が聞こえた。
「…この世界は…腐っている…。」
私は知らなかった。
これが世界の混沌を加速させる前兆だということを。