夏に花火を見る鳴今 鳴子章吉は派手好きだ。自分も派手でありたいし、派手なもの自体が好きで、夏は特に派手な行事も多いので一番好きな季節だった。
「今度の花火大会、見に行くで。 空けとけや」
鳴子が花火大会に誘ったのは、いつも喧嘩ばかりしている相手、今泉俊輔だった。二人は犬猿の仲のように見えるが、実は恋人関係だ。今泉は、派手好きな鳴子とは反対で、静かに過ごす事が好きだった。花火はテレビの中継でも見られるし、音だって家にいれば聞こえてくる。だから今まで、多くの人間は何故わざわざ現地まで見に行きたがるのだろうと不思議に思っていたのだが、自分も案外単純なところがあるようだ。恋人から花火大会へ行こうと、デートに誘われたら行きたいと思ってしまった。花火に興味が無くても、好きな人と行く花火大会には興味がある。そんなこと、今泉の性格では素直に言えないのだが。
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