ミラプト+ハイプ 【APEX】「おい、リングが来てるぞ。漁るのもそろそろやめるべきじゃあないか?……まぁ、俺はなんでも大丈夫だが、痛いのは勘弁だぜ」
ミラージュが早口で流暢に喋る。
「ラウンド4のリングだから、すっごく痛いわよ」
ワットソンが少し楽しそうに話す。
「げっ、もうラウンド4?!俺は全然アモがないんだが……、戦う奴がバカな奴だと信じるしかねぇなぁこりゃあ。おっと、あのロボットは勘弁だ!」
「おい小僧、口より手と足を動かしたらどうだ?お前にそんな事できるとは思わないが」
ミラージュのうるささにクリプトはため息をつきながら言った。
「はぁ?!クリプちゃん辛辣だなぁおい!俺は喋って走りながらデコイまで出せるんだぜ?!ほら、見てみろよ!」
ミラージュはクリプトに見せつけるようにデコイをだし、走ってリングへ向かった。
ダァン!
クレーバーの音と思われる狙撃音が、デコイの頭に直撃した。
「おっとおぇ?!俺のデコイに騙されたバカがいるようだな!ところでヘッドなんて抜いてそのバカは随分スナイパーの腕はあるんだろうな?」
「打たれた方角を見るに……あそこの高台にいるわね」
ワットソンが高台に指を指す。そこはジップラインがひかれた高台があり、リロードをする人影があった。
「……全てを見通してみせる」
クリプトがドローンを展開すると、ふわんふわんと高台へとドローンを見た。
「……!」
「おい、どうしたクリプちゃん!」
「テジ……クリプト大丈夫?!」
クリプトが突然驚くのを見て、ワットソンとミラージュは自然とおどおどした。
「……ちょっとこれを見てくれないか」
周囲の安全を確認し、クリプトはドローンの画面を見せた。
「っ、おい!こいつめっちゃ派手じゃねぇか!誰だよ、コイツ!」
「ちょっとクリプトに似てる気もするのだけど、どうかしら……?」
「ナタリーの言ってる通り、コイツは多分俺だ……。何かしらの理由で別世界から来た可能性のある奴だが……な」
クリプトはそういうと、人数的にはこっちが有利だ、叩くぞ。と言いながら高台へと走って行った。
──────
クリプト達が高台に着いた頃には、既に別世界のクリプトと思わしき者はこちらをじっと向いていた。
「ふ〜ん。こっちの「俺」はこんな奴なのか」
ずっと見てたぜ。と言うクリプト……ハイプビーストと言うクリプトは、ニヤニヤとこっちを向いて笑っていた。
「お、お前の部隊は最高だな。おっさんにナタリーなんて、いいパーティーだ」
「私達の事も知っているのね……?」
ミラージュはボソボソ声でワットソンに、
『おい、コイツヤバいだろ。めっちゃ派手で、クリプトとは全く違うような奴だぜ?仮にクリプトが狂ってもこんな格好にはなんねぇだろうな。ったく、アイツの髪型すっげぇ痛そうだぜ』
なんて言っていたが……
「話は後、だ。まずは相性診断といこうぜ?」
ハイプがそういうとフラットラインを持ち、行くぞと言う瞬間に撃ち出した。
「凄いエイムが良い……っ!ダウンしたわ!」
パイロンを置く暇もなく、フラットラインを当てられたワットソンは、少し悔しそうな表情をしていた。
そして、デコイエスケープをするも、すぐにバレ、EMPをうつ暇もなく、
部隊全滅……
やがて優勝したのはハイプとパスファインダーの部隊だった。
「よっ、お疲れ様。俺強いだろ?」
『クリプト、君と同じ部隊で楽しかったよ!いつもと姿が違うけど、どうしたの?』
────
試合後、ワットソン達と反省会をするという事でミラージュのバーに来たクリプトは、何故かいたハイプに絡まれていた。
「よぉ俺。と言うと変な感じだが。ちょっと話そうぜ?俺とさ」
「静かにしろ。おっさんと話してる気分になる」
「なら幸せでいいじゃないか?お前、アイツと付き合ってんじゃないのか」
「……どこでそれを?」
「……ッハ、お前で言うと別世界では俺はアイツは……だがな?そっちはどうなんだよ」
ハイプがクリプトの耳に囁く。
「……お前には関係ないだろ」
「へぇ……」
とくだらない話をしてる間に、ミラージュが出てきた。
「クリプちゃん!よく来てくれた!ワットソンはフェンスの調整で少し遅れるとかなんとか。って、なんでコイツもいるんだよ!着いてきたのか?」
「いや、勝手に」
「勝手にとはなんだよ、俺はちょっと飲みに来ただけだ」
「了解。コーヒーとポークチョップでいいか?」
ミラージュはササッと準備を始め、2人分のコーヒーとポークチョップをそれぞれの席に置いた。
「じゃ、反省会と行こうか。本人がいる中で言うのはアレだが、ハイプビースト……ハイプに真正面から突っ込んだのは良くなかった。人数差を考えればいけそうだが、アーマーまでは考えてなかったなぁ……って、クリプト聞いてるのか?!」
「……あぁ」
別世界の自分に勝てなかったという悔しさと、別世界では自分とミラージュがまさか付き合ってるとはという衝撃に、クリプトはついボーッとしてしまう。
「……悔しかった。EMPを撃てなかったという所が良くなかった……ハイプが羨ましい。色んな所で」
「……ふぅん?」
ハイプがその言葉に返す。
「色んなじゃ分からないが、俺のどこら辺が羨ましいんだ?教えてくれ。参考にする」
ニヤッとして、ハイプはクリプトに近づく。
そこに、ミラージュが2人に聞こえるくらいの声量で話した。
「……俺はこのままのクリプトが好きだがなぁ」
「えっ……は?」
クリプトが強く反応し、どういう意味だと少し赤くなりながら話した。
「……だーっ、もう終いだ終い。反省会は中止!バーも閉めてやる。お前らポークチョップ食ったら帰れ帰れ。ワットソンには伝えといてやるから、明日のAPEXゲームに備えてとっとと寝ろ!おっさん2人仲良く寝てろ!」
ミラージュもクリプトと同じように赤くなりながら片付けだした。
「あー、俺別世界戻るまでどこいればいいんだ?おい俺、お前の部屋俺みたいに汚いと思うけど行ってもいいか?」
「……勝手にしろ。ただ、お前と俺のドローンの違いがないかが気になる。情報交換するのが条件だ」
「了解。さ、早くこの美味いポークチョップ食べて行こう」
そんな会話をしながら、ご馳走様、と2人は店を出て行った。
ハイプはふと思った。
(このままの俺が好き……って、俺と小僧が付き合う前日に言われた言葉だったな……)