オガヒカワンドロ お題「海、朝ごはん、扇子」 朝が来るのが怖い。
助手席に座る、年下の兄弟子がそう漏らしたのは一体いつ頃のことだったか。
思い出せない記憶を追いやるように、緒方はタバコを灰皿に捨て、信号が青になったのを確認して、アクセルを踏んだ。
「どこ行くんだよ」
「朝飯」
緒方の運転する方向には、少しずつ太陽が顔を出し始めている。眩しそうに顔をしかめた進藤が、「朝ラーメンやってるとこがいい」とリクエストした。何度か訪れたことのある店だ。他県の、漁港のそばにある。
「分かった」
地図を頭の中に広げて、緒方は斜線を変更した。
進藤は時々夜、眠れなくなる。
別に不眠症と言うわけではない、らしい。ただ、夜が過ぎていくことが、朝が訪れることが怖いのだと。
2794