ジェイド、ぬいと出会う「ステイ!大人しくしろ子犬共」
朝から騒がしい教室に強めの声が響く。
それを合図に調教された生徒たちはいそいそと席に戻っていく。
「今日はお前たちに"ぬい素体"を配る」
ぬい…素体…?
初めて聞くワードに生徒たちの頭に「?」が浮かぶ。
「なんの事か分からないだろうから説明してやる。一度しか言わないからよく聞け子犬たち」
要約すると、ぬい素体とはその名の通り10cm程のぬいぐるみの素体のこと。綿だけが詰まれ、外見は真っ白の布で包まれている。
ここに魔法をかけることで術者にそっくりなぬいぐるみが出来上がる。
ぬいぐるみ、略してぬい。
しかもこのぬいは自分の意思を持って動くという。
話だけ聞くと確かに凄いが…。
「先生、このぬいを作る意図がわかりません」
隣にいたハーツラビュル寮長リドル・ローズハートも疑問に思ったようだ。
「何も無意味にそのぬいを渡しているわけではない。元々NRC生に選ばれる生徒は気性が荒く、喧嘩っ早いところがあるのは分かっているな?お陰で毎日俺らの仕事は耐えん。そこで、ぬいと生活をすることでお前たちに情操教育を施すことにした。
ぬいは言わば使い魔みたいなものと認識して良い。共に生活し、心を通わせ、良き友とすることだ。
ちなみに、使い魔授業として単位を用意するのでそのつもりでな」
「成績に関わるのか!?」
「おやおや、リドルさんにとっては重要事項になりましたね」
「ウギギギ…」
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さて、どうしたものか。
一日の授業が終わり、自室に戻る。フロイドは今日はモストロラウンジのシフトが入っていると言っていたので数時間は戻って来ない。
「確か素体と一緒に説明書がありましたね」
"ぬいの取扱説明書"と書かれたプリントに目を通す。
①ぬいは術者に似た姿に変わり、中身も術者の要素を多く含んだ性格になります。仲良くしましょう。
②ぬいはとても弱い生き物です。どんなに動いていても綿で出来たぬいぐるみです。優しく接してください。
③ぬいは食事を必要とします。毎日ごはんをあげましょう。
「え、ごはん食べるんですか?中身綿ですよね?」
一体どういう構造をしているのか益々気になる。
こんな面白いことを先に1人で行ってしまうのは気が引けるが、好奇心には逆らえない。
「恐らくフロイドも同じ素体を貰っているでしょうし、始めてしまいましょう」
「では、」
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