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    ryuhi_k

    @ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    神官長海王星×全能神波なパラレル。
    波が両性具有となっていますご注意ください。

    ##海王星波
    ##神在り

    世に男女の神在りて 古代編2神官長が交代してから3日経った昼間のことである。その神官長たる男が言った。

    「明日から暫くお出かけします」
    「お出かけ? 辞任とかじゃなくて?」

    豪奢な寝台に寝そべった神は、林檎を齧りながら問うた。因みに全裸である。神は基本的に衣服を纏うのは煩わしいと思っている。

    「しませんよ絶対。もし勧告されたら反乱起こします」
    「断定かあ。でも長とはいっても神官には厳しそうだけど」
    「私実家が太いので……。軍の方にも親族多いんですよ」
    「思ってたより規模大きい方向だ……。というか、神官長になれなくても反乱する気だったやつだこれ」
    「私のこと理解してくださってて大変嬉しいです」

    別に理解したいわけではないんだよな、と神は思ったが口には出さなかった。代わりに男が切った林檎を一つ摘み上げてまた齧る。神は食事を取らなくても問題ない身であるが、一番手軽で身近な刺激として好んでいた。

    「で、辞任じゃないなら何? 謹慎?」
    「私の印象悪くないですか?」
    「だって爺さん達に凄い怒られてたし……」

    本当に神と一晩共に過ごしてしまったので、翌朝男は見習いの頃ですら囲まれたことのない大人数の年上から説教を受けた。勿論、説教を受けたくらいで反省する男ではないし、そもそも叱られる事柄ではないと思っているのでどこ吹く風である。火に油を注ぐ態度に古株達からは辞任の声も出たが、就任させたばかりの神官長をしでかしたとはいえ直ぐに引き下ろすのも外聞が宜しくない。何より神本人が怒るどころか気にもしていないような有様である。故に、古株達はそれ以上は何も出来なかったのだ。

    「怒るだけしかできないので、怒らせておけば良いんです。前例がないというだけでああも頭ごなしにしなくてもいいと思うんですけどね。私は貴方との夫婦としての時間を過ごす権利があるんですから」
    「夫婦の時間ねえ……」
    「そこで何言ってるんだろコイツ、みたいな顔しないでくださいよぉ。役職上も、既成事実的にも夫婦でしょう……?」
    「一晩寝ただけでそれは、人間同士でも厳しくない?」
    「そんなあ……」

    男が肩を落としてしょぼくれる。こういうところはちょっと他と違って面白いな、と神は思った。勿論、面白い以上に面倒だなという気持ちが上回っているが。

    「で、話がズレたけど出かけるんだ」
    「そうそう、そうなんです。この地位の最初の大仕事とでも言うんですかね? 国の4都市に顔見せに行かないといけなくて」
    「あー……なんか今までのもそんなことやってたような……」

    神は全能であるため、人間のように記憶を忘却することはない。だが、それでは脳内の情報が増えすぎて不便である。なので重要度が低い、と判断したものを記憶の底に仕舞う、という形で処理していた。傍からは人間のように覚えていない、忘れているようにしか見えないが。ともかくそのようにしているので、神から人間の祭事なぞは積み重なった粘土板の一番下のような扱いをされている。そもそも、歴代の神官長は男のように毎日何度もやって来て会話やその他をする程神と交流を取ろうとはしなかった。神からも然りで、代わり映えのない日々を送ってきていた。主役の筈の神本人が、祭事や神官について殆把握していないとは、何とも滑稽である。

    「私の顔なんて見せに行っても仕方がないと思うんですけどね。まあ色々、パフォーマンスとしての側面が強いので」
    「大変だなー人間は」
    「貴方だって年に一度やってるじゃないですか」
    「それはそうなんだけど……」

    神の存在するこの国では、首都で年に一度神が一般人に姿を表す祭典を開く。今の住まいである大神殿を有する首都の民は7つの歳にのみ性別、身分を問わず参加することが可能だ。首都以外の民は、生涯に一度祭典参加、それ以外でも一度神へ謁見するために首都を訪れる権利を有している。これを行使する時は、往復期間に生じた費用の補填、更に税の特別免除を与えられると法で定められていた。更にその民は神託を記した巻物が手渡される。これもあって国における信仰心はかなりのものだが、神本人は微妙に納得がいっていないらしい。

    「俺を見るとか口をきくとか、別に特別感なくない?」
    「その辺りは人間特有の反応だと思うので、貴方に理解はしにくいのかもしれませんね」
    「かもしれないけど、ほら俺って別に見た目に華があるわけでもないし……」

    神は全能であるが、見目に関しては平々凡々という自認であった。祭典の際も、衣装と化粧で誤魔化している部分が大きい。そもそも祭典や謁見に熱心に民が参加するのは神託の為であろうとも思っている。人間から感謝されたい、信仰されたいという欲求を神は持ち合わせていない為、全ては「まだ人間から完全に手を引く段階ではないから」という理由のみでの行動だ。便利な占い師くらいの扱いで良いんだけどなあ、と神本人は思っているのだが、そうもいかないようである。

    「何を仰るんですか! 貴方は世界で一番魅力的ですよ!」

    男が声を荒げる。

    「あー……アンタはそう言うだろうけど、なあ。アンタ以外にそんなこと言った人間……いや人間以外でもいないから」
    「皆見る目が無さすぎるんですよ……!」

    男が拳を握りしめ言う。神からすれば男が変な感性なだけだが、これ以上つつくと余計面倒になりそうな予感しかしないので聞き流しておいた。

    「見た瞬間、この方の傍にいられるなら何だって出来ると思ったんですからね私は」
    「うーん、有言実行してるから茶化せもしない」
    「それでやっと、ここまで来たんですから……もう片時も離れたくないです」
    「でも明日から国内回るんだろ」

    軌道修正したかと思えば脱線した話が、ようやく元に戻ってきた。面積としては小国程度の国であるが、人間が馬と船で移動し各都市で祭典その他を行うとなると、なんやかんやで数ヶ月単位の期間が必要だ。この3日だけで「片時も離れたくない」の言葉が誇張ではないのは神も薄々感じていた。誇張であって欲しかったな……とも思っているが。

    「それなんですけど……」
    「流石にこれゴネたら辞任でしょ」
    「分かってます。ですので……その……」
    「まどろっこしいの面倒なんだよね。ハッキリ言って」

    林檎を食べ終え、会話にも段々飽きてきた神が強めに促す。

    「貴方が同行する前提で日程やらを組みまして……」
    「……は?」

    ぽかん、と神が男を見上げる。

    「だって貴方と離れるなんて無理ですし! でも流石に行かないと駄目なことくらい分かってますし! じゃあこれしかないじゃないですか!」
    「いや我慢してよ」
    「だから無理ですって!」

    子供より面倒なことを言い出したな、と神は呆れた。人間とは基本的に欲望に忠実な生き物だとは理解しているが、それを自身に向けられるのは神としてもあまり経験がない。しかも権力などとは関係のない、恋愛感情に基づく欲望は初めてだ。

    「絶対面倒だし普通に行きたくないよ、俺」
    「私だって同じ気持ちですよぉ。お願いします……!」

    男が床に頭を擦り付けるようにして懇願する。見つめる神の頭の中では、面倒と面白いが載った天秤がぐらぐらと揺れていた。

    「うーん……」
    「快適に過ごせるよう尽くせる手は尽くしましたから……」

    男が言うには私財をかなり出して様々な配慮をしているらしい。神であることを公言するか否か、つまり姿を他者に見せるか否かも神の判断に任せるとのことである。俺に関することで変な以外は相当有能なのだろうなあ、と神はぼんやり思った。

    「お願いします……。貴方と、旅行がしたいんです……」
    「俺と旅行、ねえ」

    神にそんなことを願うのは、恐らくこの男くらいであろう。水に食料、子宝や国、様々なものを願われた経験はあるが、流石にこれは初めてである。
    頭の中の天秤が、遂に揺れるのを止めた。

    「まあ、俺は飽きたらすぐ帰れるから、ちょっと試してみようか」

    男が顔を上げる。そのまま立ち上がり寝台に飛び乗るようにして神に抱きついた。

    「ありがとうございます! やったー愛してます!!」
    「はいはい、知ってる知ってる」

    適当に頭を撫でながら、神は色々観念したように目を閉じた。
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    ryuhi_k

    DONE「一人残らないと先に進めないダンジョンって何なんですか?!」シリーズ番外編。
    前回「制限ダンジョン(※制限内容にはパーティ差があります)」直後の話。
    置いてかれF小話:制限ダンジョン(※以下略)攻略後の一幕「ではこれ、報告書です」

    クリスタルが差し出した書類を受け取ったギルドの受付は、その背後を見て眉をひそめた。

    「勝手に増員したんダスか?」
    「ああ、いえ、これはそういう訳ではなく……。ほら、ここの、これ」
    「……あー。アンタらも毎回凄い攻略するダスねえ……」

    クリスタルが指した報告書と背後を見比べて、受付は呆れたような感心したような声を上げた。
    何故受付が眉をひそめたのか、それは冒険者パーティには様々な制限があるからである。制限なく冒険者の自由意志のみでパーティを形成させると、場合によっては国家を凌ぐ武力を持つ可能性がある。それを防ぎ、冒険者という無法者達を統制する為にほぼ全ての国家で運用されているのがギルド規則であった。その一つに、パーティ人数がある。無制限にして軍隊規模にされてはたまったものではない、ということだ。勿論そんな事が出来るのなら冒険者になぞなってはいないのだろうが、予防線は張っておくに越したことはない。自由の象徴のようなイメージのある冒険者であるが、実際はこんなものである。
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