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    isona07

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    isona07

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    思春期にあるすれ違いの話

    悟「いや無視とかではなく、僕にも年相応の気恥ずかしさというものが存在した」 高校生が出来る遊びなんか限られている。

     夏油傑はゲームのコントローラーを弄びながら目玉をギョロリと動かした。飽きたのである。部屋にある娯楽は数が少なかった。レンタルショップで借りてきたビデオ、本屋で買った雑誌、漫画、図書館で借りた小説、学校の職員室で教員が読んでいた新聞を破って手に入れたクロスワード、手元にあるゲーム、トランプ、ウノ、エトセトラエトセトラ…。
     それらをズラリと並べてみせて、夏油は途方にくれてしまった。これらの、楽しみ方を夏油傑は忘れてしまったのである。それらを手にとって行うことが億劫だった。夏油は、並べた娯楽品の中から一つ、トランプを手にとる。紙で出来た箱から取り出した。それを眺める。何とも、簡素な代物だろうか。そのような感想を思って、そうしてパタンと彼はそれを手放した。部屋には白けた空気が流れている。つくづく、イヤになるってもんだった。暇は右から来て、左に逃げていった。そうして一周して夏油の前に姿を再び見せつける。それに、夏油は溜め息を零して項垂れた。

     夏油傑が五条悟に告白なんてものをかましてから、一週間近い日数が経過していた。

     別に、何か劇的なことがあったという訳ではない。ただただ純粋に、夏油少年は高校で出会った唯一無二の親友に、気付けば恋慕なるものを抱いていた、と、それだけの話なのである。それをマァ、同性だからという理由で胸内にしまってひた隠しにしてきたのだけれども、それが何だかある日突然、水面が揺れて水面に映った画が崩れるように、またコップに注がれた水が溢れるようにして、夏油傑という人間の身体からこぼれ落ちて三次元に存在してしまった。まぁつまりは、つい感情が口からコポリとこぼれ落ちてしまったということだ。「好きだ」何て簡単な言葉をつい発言してしまって、そうしてそれから夏油傑は、その片想い相手である親友からあからさまに避けられている、と、それだけの話なのである。そうして、親友に避けられまくっているからして、部屋に存在している娯楽品が干からびてカラカラになって、面白みもなんにもない、ガラクタのような代物になっている、と、要はそれだけの話なのだ。
     しくじったな、と、冷静な頭で考える。夏油は唇に人差し指を当てて思案した。その瞳は揺れている。脳裏には親友の固まった顔が存在していた。お前は何を言っているんだと、訴えかける表情、それが脳内に浮かんではパチンと弾けた。夏油少年は項垂れる。彼は膝を抱え込んで顔を突っ伏した。口をへの字に曲げる。それはまるで、拗ねたときに友人が良く見せる顔に、どことなく似ているようだった。年相応な感情があふれ出して爆発して宙に浮いた、そんな顔。要はそう、撃沈したのである。
     こんなはずではなかった。此度何度目かになるか分からない反省会の始まりである。別に、夏油少年はホモセクシュアルでもバイセクシュアルでもない。今まで付き合ってきたのは同性ではなく異性であるし、そもそも、同性に対して恋愛感情、並びに性欲などを感じたことは、親友を覗いては一人もいなかったはずである。だがしかして、何故か親友に対してはそのような感情を抱いてしまったのだから、世も末である。自分は何て浅ましい人間なんだ、と、思わずにはいられない。
     己が親友にとって、異性であれば話は簡単だったのだろうか、と、一瞬そう思うが、彼はその考えを直ぐさま破棄した。親友と、私の関係は同性であるがこそのものであるし、それ故の関係性があったからこそ、私は親友に恋なるものをしてしまったのだと、夏油少年は理解していた。だから彼は、己が女であれば良かっただなんて、そんな思考回路には陥らない。
     では何がいけなかったんだと、冷静になって考えてみるが、冷静になる必要もなく答えは出ている。要は、親友が性格はクソの癖して格好良いのがいけない、コレの一言に尽きる。こんなことを宣うと、同じ学舎の同級生や後輩には「あ?」みたいに凄まれるだろうことは重々夏油少年も理解してはいるのだが。それでも、コレが自分の中での最適解であるのだから仕方がない。私の親友は格好が良い。イヤ、性格は本当に溝ネズミを煮込んで下水に打ち捨てて洗剤を混ぜたかのようなどうしようもなさなのだけれども、それでも何だか、その下水からしみ出てくる純正な水というのが存在するのだ。正直、自分でも何を言っているのか分からないが取りあえず、その溝ネズミ下水から時折ご降臨なさる清い何かがあって、その時折現れるその清い何かと、溝ネズミ下水のギャップが激しくて、つまりはそう、アレだ、普段どうしようもない奴が時々格好良い所を見せつけてくると、その格好良さが普段どうしようもない分増幅されてぶつけられるという、そういう、科学反応的なアレである。
     親友の、なまじ顔が宜しいのも良くない。ボーっとしているだけで、美しい御尊顔が姿を現すのだから全く持って宜しくない。そういう色々が重なりに重なってある日気付いたら夏油少年の幼気なハートは打ち抜かれ、恋(笑)みたいな感情が芽生えてしまったのだから、もう、笑い話だ。正直、今でも叶うことならば認めたくはない。だが、認めなければならない程のでかさまで、感情はふくれあがってしまっている。夏油少年は恋を自覚した夜の、あの何とも言えないマスターベーションの感覚を、永遠と覚えていたくはなかった。記憶から抹消したかった。だがしかしてそれが忘れられないのだから、それがもう青春なのだと諦める他ない。
     大体が、無視ってなんだよ。夏油少年はとうとうに自室のベッドに寝っ転がって蹲り始めた。布団の中に潜る。夏油少年が感情の暴露を行ってから一週間という日数が経っている。今までだったならば、これほどの日数口をきかなければ、夏油ではなくさびしんぼの親友の方が音を上げてしつこいくらいに夏油にまとわりついて離れずに会話の催促をしてきたはずだ。だがしかして、それがパッタリとない。これはもう、本格的に嫌われたに違いない。セクシュアルの問題は人それぞれだが、それ故に深刻だ。同性が同性に好意を伝えること、それは本来、忌避されてしかるべき現象だ。それを、親友だと思っていた相手から与えられるショックというのはいかほどのものだというのだろうか、きっと、今までの好意が反転してしまうくらいには、衝撃的なものであったに違いない。
     部屋に並べられた色々。レンタルショップで借りてきたビデオ、本屋で買った雑誌、漫画、図書館で借りた小説、学校の職員室で教員が読んでいた新聞を破って手に入れたクロスワード、手元にあるゲーム、トランプ、ウノ、エトセトラエトセトラ…、これらは全て、親友と楽しんでこその代物だというのに、その親友がいなければ、何も意味をなさないじゃないか。
     世界は隔離されてしまった。この部屋は檻の中。何も楽しいことはない。絶望は深い。馬鹿の癖に、何を思い悩んでいやがるんだクソ。「んぇ?すぐる、何いってんの?」とそんな感じで五歳児みたいに受け流せば良かったものを、なんで「それ、どういう意味…?」とそんな真剣な顔をして問い質したんだ。そんなことをしなければ、私だって、君の真剣さに流されて、真剣に自分の感情を伝えたりなんかしなかったのに、君の、その綺麗な青色の瞳に流されて、本気で訴えかけたら、もしかして、君が私と同じ熱量の感情を返してくれるんじゃないかって、そんなこと、考えたり何かしなかったのに、それがなんだこれ、馬鹿、馬鹿馬鹿馬鹿、馬鹿。馬鹿、クソ、さとるの馬鹿、馬鹿たれ、馬鹿野郎、バーカバーカ。
     起こってしまったことをなかった事には出来ない。それが自然の摂理だ。時間は進んでいく。捲き戻ることはない。だから、後悔したって仕方がない。それでも、夏油少年は悔やまずにはいられない。このような、辛いキモチになってしまうのならば、好きだなんて感情、持たなければ良かったと、そのようなことを思ってしまう、感じてしまう。

     君が、私と同じ気持ちを持っているんじゃないかと、一瞬期待した分、今の現状が辛い。

     全く罪な男だ。こうやって、何人もの人間を泣かせてきたのだろう。そう考えて、夏油はベッドの枕を抱きかかえた。そうしてグスン、と、鼻を啜る。チラリ、と、可愛らしい涙はにじみ出てきた。それを、抱きかかえた枕は吸収していく。夏油は一時、そうして枕を濡らした。そうして少しだけ涙を流した後に、彼は己の携帯を手に取る。ボタンをポチポチと押した。別に、付き合って欲しいだなんて望んでいない。好きだ、何て言葉は、ただただついポロリと零してしまっただけなのだ。
     付き合って欲しいだなんて大それた願いは言わないから、お願いだから今まで通り共にあって欲しい。それだけで、自分はきっと、何だか救われたキモチになって幸福になることができるだろうから、だからどうか、避けたりしないで、視線が合ったら目を逸らさないで、言葉をかけてもそそくさといなくならないで、顔を背けないで、普段通りに自分に接して欲しい。
     そう願って、夏油傑は一つ、親友に向かってポンッとメールを送ってみた。内容は、借りたビデオの返却日が近づいてきているから返しに行くのについてきてくれ、というそういうたわいないものだった。それを、送った後に夏油少年は枕に突っ伏す。返事はやってこない気がしていた。一週間も避けられているのだ、そんな相手が、メールの返事を寄越してくれるというのだろうか、いいやいわない(反語)。だから夏油少年は期待もせずに携帯をにぎりしめ、そうしてベッドの上で途方にくれた。
     時間は数十分過ぎ去った。そうして後に、ピロロロンと軽快な音が鳴って、そうしてそれが、メールを一通受診した時に奏でられる音だと気がついて、夏油は咄嗟に手にしたそれを操作した。彼は直ぐさまメールの差出人を確認する。親友からだった。彼は、ドキドキする心臓を落ち着かせることが出来ずに、その中身を確認した。

    『宛先:スグル
     件名:  Re:悟へ、今時間ある?
     本文:え?それって付き合って初めてのデートってこと?行く!!!!』

    「?」






     その日、寮は付き合って初めての痴話喧嘩にて、半壊した。
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    Replies from the creator

    isona07

    DOODLEキメツ学園、皆が家帰ったらヨリチがカツカレー作って待ってるって言ってたから…書いた
    兄「父上も母上もよくこんな空気になってた」 この年になると、流石にカツカレーをいっぱいに食うとしんどい。
     黒死牟は勤め先の鬼舞辻議員事務所からの帰り道、胃をそっと撫でながら歩いた。黒いスーツ姿のサングラス男。それが街灯に照らされる歩道をペタペタと歩いている。キメツ学園で行われたハロウィンパンプキンバトル。それの優勝をもぎ取り、何とか『食堂のカツカレー食べ放題チケット』を手に入れてしまうこととなってしまった黒死牟。本当はハロウィンパンプキンバトルで例年配られている、産屋敷邸での晩餐会チケットが欲しかったのだが、今年だけイレギュラーで優勝賞品が変わっていたからして、そのチケットが黒死牟の手に握られることはなかった。
     そんな黒死牟が狙いのチケットの代わりに手に入れた食堂のカツカレーを食べるための券。別段にカツカレーなんぞには心底興味関心はなかったが、もらったものはキチンと使わねばご法度だろうと、これくらいして帰らねば時間を無駄にしてしまった甲斐もないだろうと、そう思って彼は態々手に入れたチケットを使用してカレーを食って事務所に帰り、通常の業務を片付けてそれから帰路についている。辺りはどっぷりと日が沈んでいた。空には星と月が浮かんでいる。それをぼんやりと見上げてそれから彼はハァと溜息吐き出した。今夜もまた遅い帰りだ。別に仕事に不平不満はないけれども、残業が長いことだけは、どうにも良い顔ができない物事であるに違いなかった。
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    isona07

    DOODLELが語るダジャレの話。天才のピロートーク。火口が死んだあとの場面
    貴方が綺麗ですね。 夜神月はLと性行為に及んだことがあるが、しかしてキラと呼ばれるものはLなんかと性的接触をしたことなんか一度足りともなかった。これは、夜神月の記憶を司る脳神経の異常によることが所以なのだけれども、それでもこれが事実であるのだからキラという存在としては少しだけ、そう、ほんの少しだけ頭を悩ませずにはいられない。
     腹立たしさと敬意を同時に抱くにふさわしい宿敵、L。それの目を掻い潜るために夜神月は一度『デスノート』なるものの記憶を捨てた。これは、夜神月をキラ足らしめる重要な要素であったからして、この記憶を失った夜神月はキラとしての素質を失う形と相成ってしまった。それは、キラとしての作戦のうちの一つであったから、月としては何ら問題のない物事に違いなかったのだけれども、それでも状況というものは100%思い通りに動くということはなく、彼としては嫌気がさすことに、彼の完璧に思える作戦はほんの少しのどうでも宜しいイレギュラーを発生させていた。それが、世界の切り札『L』とキラとしての記憶を持たない純正な夜神月との性的接触なのだから、キラとしては額に手を当てて項垂れずにはいられない。
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