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    isona07

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    isona07

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    Lが語るダジャレの話。天才のピロートーク。火口が死んだあとの場面

    貴方が綺麗ですね。 夜神月はLと性行為に及んだことがあるが、しかしてキラと呼ばれるものはLなんかと性的接触をしたことなんか一度足りともなかった。これは、夜神月の記憶を司る脳神経の異常によることが所以なのだけれども、それでもこれが事実であるのだからキラという存在としては少しだけ、そう、ほんの少しだけ頭を悩ませずにはいられない。
     腹立たしさと敬意を同時に抱くにふさわしい宿敵、L。それの目を掻い潜るために夜神月は一度『デスノート』なるものの記憶を捨てた。これは、夜神月をキラ足らしめる重要な要素であったからして、この記憶を失った夜神月はキラとしての素質を失う形と相成ってしまった。それは、キラとしての作戦のうちの一つであったから、月としては何ら問題のない物事に違いなかったのだけれども、それでも状況というものは100%思い通りに動くということはなく、彼としては嫌気がさすことに、彼の完璧に思える作戦はほんの少しのどうでも宜しいイレギュラーを発生させていた。それが、世界の切り札『L』とキラとしての記憶を持たない純正な夜神月との性的接触なのだから、キラとしては額に手を当てて項垂れずにはいられない。
     何を馬鹿な、と、悪態をつかずにはいられない。月は、己で己を軽蔑せずにはいられなかった。ジャラリ、と、宿敵と繋がれた手錠の鎖は音を立てる。これを、我々の『糸』なのだとのたまうのならば、このような楽しい快楽は存在しないことだろう。何故ならば我々を繋ぐこの糸はもう直ぐ『切れる』運命にあるからだ。火口が死んだ景色を脳内で反芻する。勝利は目前。Lの死は近かった。月はあと少しでLの呪縛から解放されることだろう。鎖でLと繋がれた軟禁生活。それが解かれるとき、月の殺意はLへと襲い掛かるのだ。
     キラはコーヒーを口に含んだ。場所はLが用意した捜査本部だった。彼はモニターの前に腰を下ろしている。Lはその隣で同じように画面を注目していた。死んだ火口が息絶えるその映像を永遠と食い入るように見つめている。その映像の傍らでは情報が波のように押し寄せては文字の羅列として流れていた。それを視認しながら頭で理解し情報を整理しているのだからLの頭脳というものはやはり侮れない。
     後ろではレムが捜査員に簡単な尋問をされていた。デスノートは慎重に扱われ、議題として挙げられている。それをBGMにキラは一つため息をついた。チラリ、と、キラはLを視界に入れる。彼は今しがた隣にいるLに対して思考を向けた、動かした。これは、キラにとっては何らどうしようもない、思考実験の一つに違いなかった。お遊びの範疇なのである。この脳の動き、思考、考えは、言わばキラにとってはLとの生死をかけた戦いの最中の、ほんの少しだけ与えられたミニゲームの一時に違いなかった。

     つい先ほどまで存在した、キラとしての記憶を持たない夜神月、これと、キラとしての記憶を持つ自分は、果たして同じ同率個体といえるのだろうか。

     ツラツラと思考する。これはお遊びの議題だった。捜査本部ではメンバーが火口の死についてあーでもないこーでもないと話し合っている。隣ではLが何やら不機嫌そうにモニター画面に表示されているデータを眺めていた。そのようなLの存在を片隅に認識しながら、キラは捜査情報をまとめつつ物思いにふける。記憶を整理していた。その中からLと手錠とともに過ごした日々についてを一式、本棚から本を取り出すような気持で選び取る。月はその映像を上映した。そこにはホテルにある十分な広さのベッドと、フカフカのマットレスの存在があった。それに、二人で横になって眠りにつく。会話は特に存在しない。睡眠のサイクルは、Lが一般的な生活リズムを守る月に合わせる形で成就していた。Lは、あまり睡眠を必要としない。必要だと感じた際には半ば無理やり気絶するように椅子の上で眠りに落ちる。そんな、人外の化け物みたいな睡眠サイクル、優等生の月には到底受け入れられるものではなかった。であるから、彼らの睡眠はそんなイカれた生活リズムのLが、まともな月に合わせることとなっていた。
     夜神月は、そのような変人Lとベッドをともにすることに、最初こそは嫌気を覚えていたものの、ここ最近ではそのような嫌悪もなりを潜め、彼は不可思議なことに、そのようなLと眠りを共にすることに、少なからずどうしようもない、ささやかな幸福を抱いていた。その事実を掘り下げてキラは眉間にしわを寄せる。何を馬鹿な、と、再度彼は己で己を罵倒した。
     Lとの夜は静かで、しかし刺激に満ちていた。彼らは良く、ベッドの上で静かにポツリポツリと会話を行うことを好んでいた。それは他愛もない話。昔の月の思い出話であったり、つい最近見た論文の内容であったり、美味しかった甘味の話であったり、と、平和なラインナップが並べられている。それらをズラリとリストアップしてみて、記憶のどこにも、我々の夜にキラ事件について語り合った夜がないことに気付いた。それに苦虫を噛み潰した気分になる。キラは泥水をがぶ飲みしたい心境にかられた。

     あれは完全なるプライベートという奴であった。

     Lにとっても、月にとっても、正しくそうであったのだ。その事実を認識してキラは項垂れる。嫌気は止まらなかった。何を馬鹿な、と、再度彼は悪態をついた。もし、キラではない月と、キラである月が別々の体を有することが許されたのであれば、キラである彼はキラではない己をデスノートで殺していたことであろう。そのような明確な殺意が、彼の中では存在していた。
     何れ死んでしまう男に心を砕くなんで馬鹿げている。キラは己の中に存在していた哀れさに同情心を抱いた。計画は順調に進んでいた。Lの死は刻一刻と迫っていた。そのカウントダウンをキラは愛おしいと思っていた。そこには愛が存在していた。勝利への渇望と敬意、そして邪悪さ。
     キラではない己の記憶を掘り起こす。彼らは肉体関係を持っていた。何故、そのような事態に陥ってしまったのか。思い出す。それは彼の記憶だった。彼自身の記憶だった。キラも、キラでない彼も、同じ人間だった。別々ではない。ただ、記憶があるかないかそれだけの、全く変わりのない同じ人間だった。そのような彼は男との情事の記憶を思い出している。その記憶は、彼にとっては汚点以外の何物でもない。
     手を伸ばしたのは、相手からだった、とは、口が裂けても言えないことが、キラに自殺願望を芽生えさせた。きっかけはLだった、とは、強くいうことができるが、だがしかして全てをLのせいにできるほど、月に過失がなかったとは言えない。
     吊り橋効果というやつなのだろうか、と、疑問に思う。月にはわからなかった。彼は心理学なんぞを大学で専攻することはなかったし、恋愛なんぞには欠片も興味がなかったから、彼は脳と恋のメカニズムを詳しくは知らない。こんなことならば知識の少しでも齧っておけば良かった、と、思いはすれど後の祭りだ。月はそのきれいな瞳を瞼で閉じて開いた。チラリと隣を見つめる。そうすると不思議とLと目があった。その瞬間に、キラはなりを潜め、彼の友人である夜神月が浮上した。それはまるで、死んでしまう前の生き物のあがきのようだった。彼は目の前の男との記憶を思いだす。それは戯れ。これから忘れ去ってしまう記憶を懐かしむ、そのような動きと何ら変わらぬ追悼に違いない代物だった。

    「綺麗ですね」

     夜神月は夜、ベッドの上で、Lに手を伸ばされ、髪を耳にかきあげられながらそのような言葉を伝えられたことがあった。月の優秀な頭脳は、それがLがおふざけで語る『洒落』の一つであるのだと瞬時に理解できてしまったからして、彼は笑わずにはいられなかった。
    「だったら僕は『死んでもいいよ』って答えてあげた方が良いのか?」
    「そこはアレンジを聞かせて『処刑されても良いよ』でも、私は一向にかまいませんが、」
    「馬鹿言うな、僕はキラじゃない」
    「はぁ、それは聞き飽きました」
     ベッドに横になりながら語り合う。Lは一つ呼吸を吐いて、それからゆっくり永遠と、何も言葉を発することなく、彼は月の髪を撫で続けた。それを月は甘んじて受け入れる。そのLの手の動きは月が眠りに落ちるその時まで続けられた。それは夜神月が夜神月として手に入れた、小さな小さな愛の話には、違いなかった。それを、キラは一蹴する。何を馬鹿な。それ以外の言葉を、キラは吐き出すことができなかった。
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    isona07

    DOODLEキメツ学園、皆が家帰ったらヨリチがカツカレー作って待ってるって言ってたから…書いた
    兄「父上も母上もよくこんな空気になってた」 この年になると、流石にカツカレーをいっぱいに食うとしんどい。
     黒死牟は勤め先の鬼舞辻議員事務所からの帰り道、胃をそっと撫でながら歩いた。黒いスーツ姿のサングラス男。それが街灯に照らされる歩道をペタペタと歩いている。キメツ学園で行われたハロウィンパンプキンバトル。それの優勝をもぎ取り、何とか『食堂のカツカレー食べ放題チケット』を手に入れてしまうこととなってしまった黒死牟。本当はハロウィンパンプキンバトルで例年配られている、産屋敷邸での晩餐会チケットが欲しかったのだが、今年だけイレギュラーで優勝賞品が変わっていたからして、そのチケットが黒死牟の手に握られることはなかった。
     そんな黒死牟が狙いのチケットの代わりに手に入れた食堂のカツカレーを食べるための券。別段にカツカレーなんぞには心底興味関心はなかったが、もらったものはキチンと使わねばご法度だろうと、これくらいして帰らねば時間を無駄にしてしまった甲斐もないだろうと、そう思って彼は態々手に入れたチケットを使用してカレーを食って事務所に帰り、通常の業務を片付けてそれから帰路についている。辺りはどっぷりと日が沈んでいた。空には星と月が浮かんでいる。それをぼんやりと見上げてそれから彼はハァと溜息吐き出した。今夜もまた遅い帰りだ。別に仕事に不平不満はないけれども、残業が長いことだけは、どうにも良い顔ができない物事であるに違いなかった。
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    isona07

    DOODLELが語るダジャレの話。天才のピロートーク。火口が死んだあとの場面
    貴方が綺麗ですね。 夜神月はLと性行為に及んだことがあるが、しかしてキラと呼ばれるものはLなんかと性的接触をしたことなんか一度足りともなかった。これは、夜神月の記憶を司る脳神経の異常によることが所以なのだけれども、それでもこれが事実であるのだからキラという存在としては少しだけ、そう、ほんの少しだけ頭を悩ませずにはいられない。
     腹立たしさと敬意を同時に抱くにふさわしい宿敵、L。それの目を掻い潜るために夜神月は一度『デスノート』なるものの記憶を捨てた。これは、夜神月をキラ足らしめる重要な要素であったからして、この記憶を失った夜神月はキラとしての素質を失う形と相成ってしまった。それは、キラとしての作戦のうちの一つであったから、月としては何ら問題のない物事に違いなかったのだけれども、それでも状況というものは100%思い通りに動くということはなく、彼としては嫌気がさすことに、彼の完璧に思える作戦はほんの少しのどうでも宜しいイレギュラーを発生させていた。それが、世界の切り札『L』とキラとしての記憶を持たない純正な夜神月との性的接触なのだから、キラとしては額に手を当てて項垂れずにはいられない。
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