心梅雨/不可抗力今の状況を説明すると、捕縛訓練を心操ちゃんと一緒にやっていて今日はそろそろ切り上げよう、というタイミングで珍しく転びそうになってしまったの。幸い目の前に心操ちゃんがいたから咄嗟に抱き留めてもらえたわ。
恐らく筋力は私の方があるのだけれど心操ちゃんはやっぱり男の子なのね。肩幅や胸板の感触から改めてそう感じたわ。
意識しだすとなんだか照れてしまって頬が熱くなるのがわかったの。
落ち着くまで今の体勢でいてくれればよかったのだけど心操ちゃんの心配そうな声が聞こえたわ。
「蛙吹…大丈夫?」
大丈夫よ。って言いたいのに、顔をあげたらますます心配させてしまう。頬が熱くなるのと一緒に心臓もドキドキして、これだけくっついていたらきっと心操ちゃんにも伝わってしまってるわ。
「見ないで…」
そう呟くのがやっとで、でも心操ちゃんは何も言わなかったわ。なんとなく腕の力が強くなった気はしたけども。
ゆっくり深呼吸をして気持ちを落ち着かせていると密着した所から自分とは違う心音を感じたわ。
私に負けないくらいドキドキと鳴る、心操ちゃんの音。
チラリと見えた頬は赤くて、いつもならお揃いね。なんて冗談の一つも言ったのかもしれないけど今日は言葉が出てこないの。
ここは外で誰が通るかわからないのに体温や心音が心地よくて離れたくないわ。
無意識に心操ちゃんの背中に手を回していて密着度が増すとビクリと心操ちゃんの身体が固まったの。
何故かしら、心音もさっきより早くて体温も高い気がして、でもやっぱり離れたくないわ。
あと少しでいいから、この手を離さないで…心操ちゃん。