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    ツキシロ

    @tk_mh123

    ツキシロのポイピクです。
    まほ晶♀の文章を投げる予定です。

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    ツキシロ

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    ミス晶バレンタイン小話。多分甘め。

    #まほやく男女CP
    Mahoyaku BG CP
    #ミス晶
    mis-crystal

    お手伝いさんにご用心「消し炭をください」
     キッチンの入り口に立って言ったのに、流し台の前の女は振り向かない。いつもはおろしている髪を後頭部でくるくるとまとめていて、そこには地味な木のバレッタが刺さっていた。
    「賢者様、消し炭が食べたいです」
     背後まで歩いていって再度言ってやった。見下ろす手元には、何やら甘ったるいにおいがする、茶色いものが入ったボウル。彼女はそれをヘラでぐるぐると混ぜている。
    「聞いてますか、晶」
    「聞いてます!」
     振り返ってこちらを見てきたのは、エサを頬にためすぎたリスのような膨れっ面だった。その頬は少し赤い。
    「もう、ミスラ、何でいるんですか?」
    「はあ? 何でって、俺が強いから、魔物を一撃で倒して、任務がすぐき終わったからですけど。当たり前じゃないですか」
    「それは、お疲れ様です。でも、せっかく、北の魔法使いがみんないないって言うから、キッチンをネロに借りたのに……」
    「はあ」
     何も言っているのか、どうして怒っているのか、よくわからない。腹も減った。晶がまた向こうを向いてしまったので、その辺に作業用に置いてある椅子に座って足を組む。話が長そうだ。
    「もう、こっそり作ろうと思ってたのに、いつのまにか帰ってきてるし……」
    「はあ」
    「しかも、こんなに一生懸命作ってるのに、消し炭が食べたいとか言うし、もう……」
    「はあ」
     女の愚痴というのは、意味がわからなくても、最後まで聞いてやらないと、後がめんどくさい。チレッタと過ごすうちに学んだことだ。
     適当に相槌を打ちながら、まだ何か言っている晶の後ろ姿を見ていると、何となくむらむらしてきた。露わになっている、白いうなじにどうしても噛みつきたい。
     立ち上がり、腕を流し台について、彼女を流しと胸板の間に閉じこめる。こうすると、小さな晶の身体なんて、あっという間に動けなくなる。小さくて弱い、それなのに虚勢を張る、俺が守ってやらなきゃいけない存在。
    「あっ、もう、手洗ったんですか?」
    「洗ってないので、こうします」
     汚れた手では触らずに、そのうなじにかぷり、と歯を立てる。
    「えっ、ちょっと、ミスラ……っ」
     柔らかく、ぬるい。痛みを与えない程度に加減して歯を立てたあと、ぺろりと舐めてやると、彼女の身体は、褥の上で横になっている時のように、びくんと大きく震えた。
    「俺は、腹が減ってるんですよ」
     晶は、耳どころか首まで赤くなった。捕食を察した小動物のように、目まで涙で潤んでいる。もっと噛みついてやってもいいが、それよりも、腹を満たすのが先だ。
    「そのボウルの中身、飲み干してもいいですか」
    「いえ、これは……」
    「だめですか?」
    「はい、ごめんなさい……今から、消し炭も作るので、それで、いいですか?」
     眉の端を下げながら、ぽつぽつと言ってくる。その様子がしおらしくて憐れを誘うので、呆れながらも頷いてやった。
    「仕方ないですね」
     晶の後ろから離れて、水を出して手を洗う。そんな俺を見ながら、彼女は手を止めて目を丸くしている。
    「手伝います。その方が早いでしょう」
    「ほ、ほんとですか!?」
     その、驚いたような、嬉しそうな声を聞き、ふふん、と鼻で笑って告げてやる。
    「この北のミスラが手伝えば、菓子なんて、あっと言う間に二個でも十個でもできあがりますよ」
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    ツキシロ

    DONEガルシア博士×アシストロイド晶♀。パラロイ軸本編後、ラボに残った晶。約五十年後、博士が亡くなった後、旅に出ていたオーエンとクロエがラボを訪れる話です。捏造多数。晶はカルディアシステム搭載です。
    パラレルワールド・スターチス 博士のことですか?
     そうですね、とってもお優しい方でした。私たちアシストロイドのことも、友人のように扱ってくださいました。アシストロイド差別について、何度か講演などもしていらっしゃいましたが、あれは本当に、仕事だからやっていたのではなく、私たちアシストロイドのことを、生活のパートナーとして思っていてくれたことは、ラボラトリーの中の人間も、もちろんアシストロイドも、誰もが知っていることです。
     それ以外のこと? もうお亡くなりになった方のことを話すのは憚られますが……そうですね、博士が受けていらっしゃったお仕事ですから……とても、真面目な方でした。真面目、といいますか、本当に研究がお好きなんだな、と思うことが多々ありました。研究だけではなく、先ほどのような講演やメディア出演、ラボの中での会議など、寝る間もない時期というものが、一年の間に何回もありました。それでも、ご自分の興味があることを見つけると、目がきらきらと輝いて、そのことに集中して、三日も寝ない、ということもありました。ええ、そういう時は、私や、その他の博士の助手を務めていたアシストロイドが、無理矢理にでも寝室にお連れしました。脳波や呼吸、脈拍などを感知していれば、さすがにもう休ませたほうがいい、という潮時は、私たちアシストロイドにはわかりますから。そのために博士は私たちをおそばに置いてくださったのだと思います。
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    DONE11/14【月よりのエトランゼ】展示作品です。
    PWはおしながきに貼っているリンク先に記載しています。
    自分の住む世界にフィガロが来てもまだ「好き」を素直に伝えられない晶♂と
    「好き」と言われていることに気づかないフィガロのお話。

    I love youは聞こえない→フィガロの話
    I love youは届かない→晶♂の話
    になっています。
    I love youは聞こえない / I love youは届かないあの世界の月――≪大いなる厄災≫は綺麗ではなかった。
    たくさんの生物を殺し、大地を壊し、賢者の魔法使いたちに傷を与えた。
    血に染まった、醜い存在。
    だけど、この世界に来てからはどうだろう。
    この世界の月は俺たちに危害を加えることはないし、何かを壊すこともない。
    毎晩暗くなった街を照らし、人々に希望を与えている。
    「あの世界で『月が綺麗だ』って言ったら、フィガロは不謹慎だと怒りましたよね」
    「そりゃそうだよ。賢者様は殺人鬼を美しいと思うのってあの時も聞いたはずだけど」
    「俺はそんな変わった人じゃないです」
    賢者様はたまに意味不明なことを言う。
    蒸し暑い時に「今日は少し肌寒いですね」とか、晴れているのに「雨、止みませんね」とか言っていた。俺が「風邪引いたの?」「大丈夫?」と声をかける度、悲しそうな顔をしていた。
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