『かつての俺は自分の力を過信して仲間を顧みず助けを求めず一人で解決出来ると根拠のない自信だけで突き進んでいた。だがそんな俺でも仲間達は見捨てないでくれたし手を差し伸べてくれた。俺はその信じてくれる思いに報いたい。仲間からの信頼にも、市民からの期待にも同じように向き合いたいと思えるようになったから今の俺があるんだ』
『――それは、ブラッド様、』
「大層ご立派に甘えた理想論でございますね。とテメェは言った」
「……俺のバランスバーを勝手に食いながら話を完結させるな」
「うるせぇな。こちとらテメェと殴り合って腹減ってんだ。あとそんな甘っちょろい話聞かされて口直しに塩気がほしいと思ったとこだったんだよ」
「まぁいい。勝手に話し始めたのは俺だ。それにしてもお前もそう思ったんだな」
「『も』って事はテメェもだろ。オスカー」
「ブラッド様は……本当の意味で相手を見捨てないと自分の命が危うくなるような、そんな状況は御存知ではないだろうから」
「お前は知ってるって?」
「……」
「ま、お前の昔話は興味ねぇがな。とにかくだ、あの野郎の腰巾着なんか辞めて、とっととテメェから切り捨てちまえよ」
「……それで?」
「俺んとこに来い。少なくとも退屈はさせねぇし甘ったれた理想も言わねぇ」
「アッシュ」
「あ? その気になったか?」
「俺はお前を必要としてない」
「……はぁ?」
「お前の方こそ。俺の力なんか必要とするまでもないだろう、お前は一人で片付けられる事と人を使って片付ける事との区別はついているだろうし。……何でも一人で出来てしまうからといってあれこれと手出しされるのも心配だが」
「……テメェ、主人の目がないと随分言いたい放題だな」
「そうだな。……学がないから他にどう言い表せばいいのか知らないんだ」
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