いっぱい食べる君が好き じゅうじゅうと気持ちのいい音を立てて、網の上ではずっと肉が焼かれ続けている。たくさんの肉と、箸休め程度の野菜。テーブルには山盛りの白米とジョッキに注がれた四人バラバラの飲み物。
特に何があったわけでもないが、珍しくスケジュールが合ったため、今日は四人で焼肉を食べに来ていた。このメンバーでの食事は何度かあったが、結局男四人が集まるなら焼肉が手っ取り早い。食べ盛りの一郎と肉が好物の左馬刻はもちろん、意外と酒飲みな乱数も、何に対してかはよくわからないが「興味深い」と言う寂雷も、みんな毎回楽しんでいる。
「左馬刻ってさぁ」
「あん?」
乱数ののんびりとした声が、テーブルの中心でじゅうじゅうと立つ音に混ざって聞こえてくる。
「なんで焼肉の時はその席なの?」
「?」
「いつもはイチローの隣キープしてんじゃん。でも焼肉の時は絶対正面なの。無自覚?」
「あ? ああー……」
視線を乱数から一郎に向ければ、きょとんとした色違いの瞳がこちらを見ていた。そういえば、とでも言いたげだ。なんとなく居た堪れなくなって、とりあえずビールを呷る。
ガツガツとハムスターのように口いっぱいに肉と白米を掻き込む一郎の食べっぷりは見ていて気持ちがいい。なんで、と言われれば、それを見たいだけだ。
焼き上がっている肉を自分の皿に放るついでに一郎の皿にも数枚置いてやれば「あざっす!」と笑みを浮かべるばかりで、今のところ一度も「もう食えねぇっすよ」などと断られたことはない。だから今日も、ビールを片手に同じようなことをする。餌付けのようだと、なんとなく自覚もあった。別に、本当に餌付けをしているわけではないけれど。そんなことするまでもなく懐かれてるし。
「たいした理由じゃねぇよ。なぁ、一郎?」
「え? いや、理由とか知らねえけど……」
「あ、自覚はあるんだ。まあいいけどぉー」
たまにはボクもイチローの顔見たいなぁなどと揶揄うこの男は、案の定わかって尋ねていたようだった。