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    はるか

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    はるか

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    魔道祖師
    温情お誕生日おめでとう作文
    2021/08/12
    お誕生日おめでとう!温情大・大・大・好きです!

    もし、温情が死なずに観音廟事件解決後まで生きていたら…の妄想。
    わちゃわちゃほのぼのです。

    温情0812生日快乐!「姉さん……姉さん、大丈夫?」
    「ん……阿寧?」
    「うん。随分魘されていたようだけど、大丈夫?」
    「ええ。大丈夫よ。なんだか……なんだかとても悪い夢でも見ていたよう。起こしてくれてありがとう」

     温寧と食事を終え、温情は卓の上に置いた薬草を仕分けながら、手元の紙に筆を滑らせていた。
     乱葬崗から救い出された温の五十名余りの人は全員生き延びていた。
     温情は陰で市井の人々の為に薬を作り続け、今までに数えきれないほど沢山の人の命を救った。
     今日もまた、不治の病と言われる子供達のため、薬草を仕分け、調合の比率を紙に記し、医師として奮闘していた。
    「阿寧、今日は夜狩の約束をしてるのよね?」
    「はい。いつも勝手に約束して来てごめんなさい」
     十数年前から続いた事件のすべてが観音廟で明らかになった後、鬼将軍である温寧は藍氏の弟子達とよく夜狩に行くようになった。温寧はこのことに対し毎回謝るが、温情は温寧が世家の子供達と自らの意思で夜狩に赴くことが大層嬉しい。
    「その、それで、今日は出来たら姉さんも一緒に……」
    「私も? まぁいいわよ。私も一応仙子の端くれだし、気分転換に剣を持って夜狩に行くのも良いか」
     温情は筆を置き両手を組んで腕を伸ばす。薬の配合が中々上手くいっていないし、ここ最近治療に赴くことも無く、頼まれた薬の調合ばかりでしばらく外に出ていなかったな、と思い、温寧の誘いを受けることにした。
    「今日は、阿苑に金宗主やお友達、それに魏公子と、が、含光君も来て下さる予定です!」
    「その顔ぶれ、行く気が失せるわね……」
    「ね、姉さん」
    「嘘。魏無羨達にいっぱい働かせて、私は楽させてもらう」
     温情はそう言ったが、夜狩にしてはあまりにも錚々たる顔ぶれで、心の中ではどこへ何を狩りにいくのだろう、と心配になっていた。天下の含光君と夷陵老祖がいるのだから何が起こっても平気だとは思うが、大世家の子供達に怪我をさせては大変だし、何より姑蘇藍氏二の若君の道侶となった魏無羨は何かしら騒動を持ち込む男だ。これはしっかりと薬を持って行かねばならないか、と考えていると、コンコン、と木の戸を叩く音が聞こえた。
    「来ましたね」
     その音にぱっと顔を上げた温寧の、昔では到底考えられないとても嬉しそうな、浮足立ったような声音に温情はゆるやかな笑みを浮かべる。
    「温情! 温寧! いるか?」
     扉の外から飛び込んできたのはいつもいつでも騒がしい、よく聞きなれた男の声だ。
    「そんなにうるさくしなくてもいるわ! 入ってきて」
     そう言うなり勢いよく扉が開き、黒い衣の男を筆頭に、白、金、紅、色とりどりの衣を纏った数人の少年が小屋になだれ込んで来た。
    「おい、危ないだろ! 押すな!」
    「押していないぞ! お嬢様が勝手に躓いたんだろ?」
    「ちょっと二人とも。人様の家で騒がないでよ! 阿情姉さん、寧おじさん。失礼します」
     少年達は藍思追の言葉を聞き、慌てて温情と温寧に向き合うと丁寧に礼をした。
     その横から、最初に入ってきたのに少年達に押しやられた魏無羨が顔を出した。
     魏無羨は腕を組んで辺りを見回した。狭い家の中には天井まで届きそうな高い棚が目いっぱい置いてあり、薬や薬草、医療器具、それに医学書がぎゅうぎゅうと詰め込まれている。
    「相変わらず狭い家だな。棚の背は高いしなんか窒息しそうだよ」
    「そう? 乱葬崗より広いんじゃない?」
    「それはそうかもな! でもお前は世間から何を言われようが十数年もの間、沢山の命を救っただろ? もっと良くされてもバチは当たらないと思うけどな?」
     魏無羨は温情の前まで来ると、大げさな手ぶりをつけて更に話を続けた。
    「お前のおかげでこの前の流行り病もすぐに治まったし、死者も少なかった。本当にすごい医者だよ。藍湛にもっと広い家を寄越せって言ったらいいんだ」
    「褒めても何も出ないわよ? 魏無羨。それに私は医者として当然のことをしたまで。温家の皆も良くしてもらっている。薬も調合出来るし、私はこの家で充分よ」
     魏無羨と温情が話をしている時、よそから見ると言い合いをしているように見える。だがそれはいつも通りのことだ。互いに元気であると分かり、話に花が咲いた。
     二人がしばらく話をしていると、扉から藍忘機が大きな箱を持って入ってきた。
    「お、藍湛、遅かったな!」
     藍忘機は魏無羨を通り過ぎ、まっすぐ温情の所まで行くと無言でその箱を差し出した。
    「え、えっと……含光君、これは何ですか?」
    「まぁまぁ、開けてみな」
     その問いに答えたのは藍忘機では無く魏無羨だった。温情は訝しげに箱を両手で受け取る。魏無羨が藍忘機の横に立ち、手のふさがった温情の変わりに箱の蓋を開けてやった。
    「本当は花や簪も考えたんだが、お前はどれもいらないだろうって思ってさ。みんなで手分けして採ってきたんだ」
     箱の中身を見た温情が驚いて目を見開いた。
     箱には複雑な香りを放つ、色とりどりの花、草、木の皮などが沢山入っていた。
    「これ……これも、これも、すごく貴重なものじゃない!」
    「こちらとこちらは姑蘇藍氏の敷地内で採れる薬草で、含光君が手配してくれたんですよ。これは魏先輩と昨日採りに行って来て、これは寧おじさんと、こっちは金凌たちと」
     いつの間にか魏無羨の横には藍思追が立っており、はにかみながら温情に箱の中を指さして説明していく。
    「これで、しばらく足りそうか?」
     すると突然藍忘機の口が開いたので温情はびっくりして箱を落としそうになった。
    「は、はい! あ、ありがとうございます。すごいわ。これでもっと良い薬が作れる」
    「雲深不知処の薬草を外に持ち出すのに中々許可が降りなくてな。だいぶ苦労してたぞ。な、藍湛?」
    「魏嬰」
     そういうことは大っぴらに言うべきではない、という藍忘機の視線を受け、魏無羨はこれだから姑蘇藍氏は、と小さくため息をついた。
    「温家の私に、このような大切なものを……本当にありがとうございます」
    「温情、人助けに温家とか藍家とか関係ないだろ」
    「そうだ」
    「含光君、感謝いたします」
     温情は箱を持ったまま、手を前に出来るだけ伸ばし箱より下に頭を下げた。それに対し藍忘機も手を合わせ礼を返す。
    「足らなくなったら、声をかけてください」
    「お前らなに律儀に礼をしあってるんだよ? 温情、俺達が怪我したらよろしくな!」
    「魏無羨! あんたは無理しすぎ、怪我しすぎなのよ! この薬草は貴重なのよ。あんたには絶対使わないからね!」
    「おい、ひどいぞ!」
    「治療なら含光君に頼めばいいでしょ」
    「なんだ? 焼きもちか?」
    「はぁ? 魏無羨。あなた、また針で刺されたいみたいね?」
     魏無羨は首に温情の針を刺された事が何度もある。力が抜け全く動けなくなる感覚を思い出し、顔面を青くして藍忘機の背中に滑り込んだ。
    「藍湛藍湛藍湛、怖い! 助けてよ!」
     藍忘機は小さく左右に首を振ると、少し横に避け背に隠れる魏無羨を温情に差し出した。それを見た温情は藍忘機に小さく頭を下げ、魏無羨に向き直った。
    「残念だったわね。魏無羨。含光君は私の味方みたいよ」
    「おい! ひどいぞ藍湛! 裏切ったな!」
     部屋の中は大層姦しく、あちらこちらから笑い声が飛び出す。
     温情はそれを見て苦笑いしながら、薬草の詰め込まれた箱を卓に置き中を覗き込んだ。これでどんな薬を作れるだろうか、これならば、先日訪ねたあの小さな女の子の病を癒せるだろうか、と考えを巡らせる。
     ふと温寧が温情の手をそっと取り上げてきた。はっと周りを見渡せば、藍忘機以外の皆が温情の周りを囲んでいた。
    「温情、お前本当に薬の事しか考えていないんだな」
     魏無羨は仕方なさそうに言いながらも花の咲いたような笑みを浮かべている。周りの少年達も大層嬉しそうだ。
    「温情!」
    「阿情姉さん!」
    「姉さん」
    「温情殿!」
    「生日快乐!!」
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    Replies from the creator

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    maru464936

    PASTTwitterの過去つぶやきまとめ。リーゼお婆ちゃんが亡くなった時のちょっとした騒動。語り手はフィーネ似の孫だと思う
    無題孫たちの述懐で、「母方の祖父は、物静かで穏やかなひとだった。」みたいに言われてたらいいよね。

    「だから私たちは、祖父にまつわるさまざまな不吉な話を、半ば作り話だろうと思っていた。祖母が亡くなった日、どこぞの研究所とやらが検体提供のご協力の「お願い」で、武装した兵士を連れてくるまでは。
    結論から言うと、死者は出なかった。数名、顎を砕かれたり内臓をやられたりで後遺症の残る人もいたみたいだけど、問題になることもなかった。70を超えた老人の家に銃を持って押しかけてきたのだから、正当防衛。それはそうだろう。
    それから、悲しむ間も無く、祖父と私たちは火葬施設を探した。
    私たちの住んでいる国では、土葬が一般的だけど、東の方からやってきた人たち向けの火葬施設がある。リストから、一番近いところを調べて、連絡を入れて、みんなでお婆ちゃんを連れて行って、見送った。腹立たしいことだったけど、祖母の側に座り込んだまま立てそうになかった祖父が背筋を伸ばして歩けるようになったので、そこは良かったのかもしれない。怒りというものも、時としては走り出すための原動力になるのだ。
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