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    Arasawa

    @_Arasawa

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    Arasawa

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    ※R-15
    ラブホに行く話。土足厳禁のロ兄専時代の存記。

    2023/08/10

    ##土足厳禁

    そこまでしなくていい授業のあと夜蛾先生に呼び出されて廊下に出ると、ひどく神妙な顔をしていて少し背筋が伸びた。やけに言葉を選んでいるから、怒っているわけではなさそうだ。どうせ碌でもない話だろうから急かしたくない。じっと待っていると「次の任務についてだが」と話が始まった。

    「なんですか」
    「次の土曜日の夜に任務に出てもらう」
    「はあ」

    夜蛾先生にしては本題まで随分と回り道をする。本題を回りくどく伝えることはあっても本題に辿り着かないのは珍しい。何の用だろう。難しい任務なのかな。

    「……その場所は」
    「その場所は?」
    「……。……ラブホテルだ」
    「あー……」

    眉間に皺を寄せ固く目を閉じながら告げる姿に色々と察してしまう。一人前の呪術師として扱うものの学生として大切にしてくれるこの人は、受け持ちの女子学生を卑猥な場所に送り出すことに抵抗があるのだろう。もう行ったことあるから別に気にしないのに、なんて言えばこの表情は瞬く間に怒りへと変わってしまうに違いない。

    「とあるホテルに男女がペアで宿泊した時に呪霊が現れる」
    「ドスケベ覗き呪霊ってことですか?」
    「言葉を選べ」
    「ゴメンナサイ」
    「勿論宿泊するだけで何もしなくていい。今までの報告から察するに帳さえ下ろせば宿泊すらしなくても出現するはずだ」
    「休憩だけで大丈夫ってことですか?」
    「妙に詳しいがお前さては行ったことがあるんじゃないだろうな」
    「ちなみに男って誰ですか」

    帳を下ろすだけなら大丈夫だとは思うけど、五条や夏油なら手を出されかねないから嫌だ。高専はその辺気にしてくれるのかな……と一瞬心配したけれど、夜蛾先生が間に挟まっているのなら問題ないだろう。

    「それはお前が選べ」
    「え、」
    「お前が"信頼"出来る男を連れて行くのが一番良い」
    「信頼……」
    「くれぐれも、健全な学生として不純な行為はするなよ」

    私から見て、私に手を出さなそうな男を選べと言いたいんだろう。もしくは、出されても構わない信頼関係のある人。後者みたいな人は高専にいない。前者で思いつくのは唯一人。

    「じゃあ七海一択ですね」
    「は?」
    「七海でもいいですか?」
    「ダメだ」
    「え?なんで?術式的な意味ですか?あっ他に任務と被ってるとか?」
    「そうじゃない……が、まあ確かに悟と傑よりは……だからって七海は……お前……」
    「あ、七海」
    「……お疲れ様です」

    珍しく口籠る先生の後ろから七海が来ていた。私と目が合った途端ぎゅうと眉間にシワを寄せて口角を下げる。うん、七海コイツなら大丈夫だろう。

    「見てくださいよこの顔」
    「なんなんですか」
    「七海とならラブホに行っても無事帰れそうって話」
    「は……?セクハラですか?」
    「ラブホで討伐任務があるから男女ペアを派遣する必要がある」
    「その相手を私に……?」
    「五条や夏油じゃダメそうだし、七海なら私に興奮しないでしょ」
    「七海、無理なら断っていい」
    「だからその無理ってのがよくわかんないんですけど……?……あ、単純に、一緒にラブホ入るのも嫌なくらい嫌いってこと?」
    「ハァ──────……。……わかりました。私が適任だと思います」
    「間違いだけは起こすなよ」
    「わかっています。ハァ──────……」
    「なんなのその溜息。本当ムカつく……」



    ▽△▽△



    発動条件が不明瞭だから、まるで普通に宿泊するように私服で二人でチェックインした。アメニティを自由に持っていっていいコーナーがあってはしゃいでしまった。七海は少し離れたところでつまらなそうにしている。いつものことだし特に気にならない。宿泊予定ならスキンケアグッズを使ってみたかったけれど今日は任務だ。今度彼氏が出来たらここに来てみようかな。ヘアオイルがあったので、ここ数日忙しくてロクにケア出来てなかった私はありがたく頂戴した。え?靴磨きなんてあるの?いらんけど面白……。
    エレベーターから一番遠い部屋が問題の部屋だけど、その途中の部屋も酷いものだった。帳をおろしていないのにハッキリ見える呪霊。大きな問題になっていなかったのは、手出ししてこないかららしい。扉の隙間に貼り付いている呪霊を七海が祓っていく。やっぱりドスケベ覗き呪霊呼びで合ってるな……。

    「帳無しでこれなら、下ろしたらすごいことになりそう」
    「そうですね」
    「……」
    「……」

    今日の目的はあの小者どもと、まだ現れていないでっかい呪霊だ。行為中にデカいのがいて、視えるタイプの人が絶叫してしまったらしい。でも襲ってくるわけではなかったと。本当に覗きたいだけなんだろう。なんなんだこいつらは。性欲の具現化か?ボスを倒してから小者を倒すという話になっているから、今七海がやっていることは準備運動みたいなものだ。
    部屋に入ると、天蓋が降りている部屋いっぱいの大きなベッドに花びらが散っていて思わず笑ってしまった。すごい。ムード作りが完璧だ。
    七海が帳を下ろしたけれど何も出てこない。帳を下ろさなかった時の発現条件は入室後数十分と聞いている。

    「とりあえず待つ?」
    「……そうですね」

    ベッドの長辺に腰掛けると、七海が短辺に静かに腰掛けた。枕元にもアメニティがあったからさっきのアメニティバイキングを連想してワクワクしながら手に取るとおしゃれな包装のコンドームだった。「あっ」と小さく声が漏れた。流石に気まずい。七海に見られていませんように。

    するすると丁寧に時間をかけてヘアケアを済ませたものの、部屋の中には呪霊のじゅの字もない。部屋に入ってから数十分後に顕現する"ドスケベ覗き呪霊"が今この部屋にいない理由なんてハッキリしている。覗いても何も楽しいことがないのだ。一言も喋らない男女がただ座っているだけ。スケベを求める呪霊には心底つまらないだろう。しかし七海とするつもりは当然ないし、どうしようかな。呪霊は何に引き寄せられるんだろう。音声でいいならアダルトビデオで事足りるけど……。

    「テレビ付けるよ」
    「……どうぞ」
    「本当にいい?」
    「?はい」

    リモコンを操作して画面いっぱいに肌色やモザイクが広がった時、ようやく理解した七海が頭を抱えて片膝を立てたので笑ってしまった。七海も性欲あるんだ。
    女優の喘ぎ声が響く。テレビ画面の少し手前には金髪頭を抱える七海。それをベッドに寝転んで眺めている。なんだこの状況。

    「どう考えても間違っている……」
    「ドスケベ覗き呪霊なんだから仕方ないでしょ」
    「だからって、」
    「呪霊が出てこなきゃ意味ないんだから我慢して。あ、それとも一人でする?壁向いててあげるよ」
    「結構です」

    あーなるほどシチュエーションもののやつですか。ふーん、ご奉仕系の……。私の好みじゃないな。
    未だ頭を抱えたままの七海に「呪霊いそう?」と声を掛けると扉まで見に行った。「小さいのが一体」とのこと。そのまま扉を開けっ放しにするようにお願いした。覗き呪霊が入ってきたところでどうせ危害は加えない。

    「音声じゃイマイチなのかな……。効果がないわけではないみたいだけど……」
    「もう消しますよ」
    「一人でしてていいのに」
    「いい加減セクハラです」

    ピシャリと跳ね除けられる。七海は頑なに片膝を立てて動かない。私の安全を考えると今の七海はそっとしておいてやりたいところだけど、任務は任務だ。

    「どうすれば出てくると思う」
    「……ここで誰かがすればいいと思います」
    「誰かって?」
    「後日、別の誰かが……。術師同士で付き合っている人を出せばいいでしょう」
    「ホントにしちゃったら素っ裸で戦うことになるじゃん」
    「……」
    「かといってヤる要員を連れてくるのもなー……。真似でなんとかならないかな」
    「まさか」
    「身体収まった?抱くフリして。服は着たままで」
    「正気ですか……」
    「だから七海を連れてきたんだよ。五条や夏油なら素っ裸でも戦えるとか言ってなんやかんや抱かれそうだから」
    「…………」
    「ほら早く」

    聞いたことがないくらい深い溜息の後、靴を脱いでベッドに上がってきた。固めのデニム生地のパンツを履いている七海の"身体"がどうなっていても目立たないだろう。そういうことを考えて選んだのかな。まあそんなとこに目を向けないから結局わからないけど……。寝転がる私の隣に鉈を置きストンと体育座りをした七海は「どうあがいても」と嫌そうに口を開く。

    「セクハラになります」
    「任務なんだから仕方ないでしょ。我慢してよ」
    「いえ逆です。私から貴女にセクハラすることになる」
    「それはまあ……限度を超えなきゃ別に騒がないから……」
    「……限度とは」
    「んー……。……じゃあ組手レベルのおさわりでお願いシマス……」
    「……。……わかりました」

    頭の左横に七海の右手が置かれて、いよいよ距離が近くなる。チラリとベッドの下、カーペットのあたりに目をやった七海は溜息を吐いて私の上に四つん這いになった。衣擦れの音が妙に生々しい。顔が近い。流石に恥ずかしくて手の甲で口もとを覆い隠した。私に覆い被さる男は「ダメなら止めてください」と静かに呟いたあとするすると腕を撫でて指を絡めた。うわあ七海と恋人繋ぎしてる……。男女として意識したことのない相手とこんなことをするのは初めてで、やっぱり照れくさい。チラリと七海を見るとパチンと目が合ってしまったけど、七海がすぐにカーペットへと目線を逃がした。そのまま少し考え込んだあと、私の口元を覆い隠す手をするりと握ってベッドへと縫い付けた。まるで本当に今から抱かれるみたいでどくどくと心臓がうるさい。七海はまたカーペットを見ている。ああそうか。いるのか、そこに。

    「……来てるの?」
    「ええ。真似事でも効果はあるようです」
    「あ、じゃあ今テレビ付けたらもっと効果あるんじゃない?」
    「…………」
    「つけてみて」
    「危機管理能力が無さすぎる……」
    「は?え、七海が私を襲うとでも……?」
    「それを七海本人に聞くのはおかしいと思いませんか……」
    「え、襲うんですか?」
    「……襲いません」

    観念したように手を離しテレビを付ける七海は女優の喘ぎ声が流れた途端にまた深い溜息を吐いた。

    「……また真似を始めますよ」
    『あっ、ああんっ!』
    「うん」
    『あッ、はぁ、もっと……!』
    「……。……フ──────……」

    また七海が両手を繋いでベッドへと縫い付ける。響き渡る喘ぎ声のせいなのか、さっきよりも少し力が強い。

    「……呪霊がゆっくり出てきています。貴女の位置からでもそろそろ見えると思います」
    『あんッもっと奥欲し、あっ、ああッ』
    「あ、本当だ。見える」
    『好き、しゅきぃ!これ、おっきいのっ、ん、んんっあぁっ』
    「床から生えるように来ています」
    『あっ、イッ、イッちゃう、』
    「大きさどれくらいかわかる?」
    『あっ、ああっ、ああ……ッ』
    「報告されていた大きさの三割程度でしょうか」
    『はぁ……っはぁ……っねぇ、もっとぉ……』
    「手離したらどうなる?」
    『もっと欲しい……ねぇ……もっと……』
    「……止まりましたね」
    『あー……っん、んんっ、きもちいい……っ』
    「うん、止まった。ダメだわ」
    『あっ、あ……っ、あんっ、ああ……っ!』
    「……」
    『あー……っ、あっ、あ……、ああっ』
    「……ね、今攻撃するとどうなりそう?」
    『ん……っ!んんんぅ……っ!』
    「戻っていくと思います」
    『あっ……らめ……っそこらめ、』
    「ですよねー……」
    『奥、奥きてる……っんんっ!中に出してぇ……っ』
    「……」

    なるべく任務っぽい会話をして気を紛らわせようとしているのがひしひしと伝わってくる。からかいたいところだけど手を出されたら困るから何も気付かないフリをして付き合っている。私のためでもあるんだろうし。でも話すことがなくなってしまった。カーペットからタケノコのようにニョキニョキと姿を表しつつある呪霊から七海に視線を移すと、まっすぐ私を見つめていて驚いてしまった。

    七海はもう何も喋らない。鋭い眼光は私の目と口元をふらふらと往復している。さっきまでどうにか会話が成立していた唇からはただただ荒い息が繰り返し吐き出されている。バッグミュージックには、気持ちよくてたまらないと言わんばかりの喘ぎ声。「呪霊に変化がないか見ていてください」と言われてちゃんと理性が残っていたことに安心したのも束の間、首筋に七海の顔が埋まった。

    柔らかい何かが首筋に当てられた。多分、唇だ。あの七海が、他でもない私にキスしている……?性欲薄そうでも、相手が嫌いな女でも、流石にこの状況には勝てなかったんだろうか……と思いきや、七海は私の左手を解放して鉈を握った。ちゃんと任務を忘れてないらしい。呪霊は一気に顕現するスピードを上げて聞いていた大きさの半分くらいまでズルズルと生えた。七海が好き好んで私の首にキスしているのかはわからない。任務のために七海自身我慢してやっていることであればここでNGを出すのは理にかなっていない。恥ずかしいけど我慢出来ない程ではない。じっと動かずにいると、不意にねっとり舌が這わされた。

    「ん……っ」

    きっと不意打ちだったせいだ。鼻から抜けるような甘い声が出てしまった。テレビから聞こえる喘ぎ声に比べればよっぽど小さかったけれど、七海の耳にはしっかり届いたらしい。ピタリと一瞬全ての動きを止めた七海は、すぐにガバリと顔を上げて見下ろしてくる。解放されていた左手で咄嗟に顔を隠した。見ないで、と言うのはなんだか妙にムードが出てしまう気がしてただ黙り込むことしか出来ない。「続けますよ」と嫌な言葉が降ってきたのでチラリと呪霊を覗くとさっきよりもずっと大きくなっていた。生身の人間の声のほうが興味あるらしい。

    「そこまでしなくていい。汗かいてるし」
    「気にしません」
    「いや私が気に、……っ」

    またねっとりと舌が這って声が出そうになるのを必死で堪える。思わず手に力が入る私と、何を勘違いしたのかぎゅうと握り締める七海。小さく音を立ててもう一度唇を落として、ちゅうと吸い付いた後かぷりと歯を立てた。痛くない力加減がくすぐったくて身を捩らせると、七海の息がさらに荒くなっていった。何かをゴクリと飲み込んだ七海は鉈を引き寄せて、両腕で私の頭を丁寧に包んだ。顔が近い。

    「動かないください」
    「や、だって、くすぐったくて……」
    「逃げられると追いかけたくなる」
    「何野生動物みたいなこと言ってんの」

    なるべく変なムードが出ないようにしたいのに、七海の目を盗み見るとまるで獲物を前にした肉食獣のような目をしていて、野生動物という表現がイマイチ的外れではなかったと気付いて言葉に詰まる。呪霊を見ろ、とアイコンタクトを送ろうとちょっと大げさに顔ごと呪霊に目を向けて見せたのに、その間に七海はさらに顔を近付けていた。気付かなかった私は視線を戻すと同時に顔を正面に向けてしまい、顔どうしの距離は残り数センチになってしまった。

    差し込んだ手の平だけが壁になっている。性欲に負けて相手が誰だかわからなくなっているのかな。普段の七海の嫌悪感に溢れた目に戻ってほしい。なるべく普段通りを装った落ち着いた声色で「七海」と呼ぶと、きゅうと目を閉じた後ゆっくりと開いて、指先に柔らかい唇が触れた。指のすぐ後ろには私の唇。七海が何をしたくて、何を出来なくて指先にキスしたのか嫌でもわかってしまう。

    鉈からついに手を離した七海は壁になっている私の左手首を優しく握って、弱い力で退かそうとする。退かされてしまったら最後どうなるかなんて火を見るより明らかだけど、この力の弱さから察するに七海自身まだずっと葛藤しているんだろう。「七海、これ、任務」片言だけど切羽詰まった物言いで訴えかける。苦しそうに下げられた眉と乞うような瞳で覗き込まれる。そんな子犬のような顔をされてもダメだ。ただの後輩である七海とキスなんかするわけにはいかない。七海だって後できっと後悔するだろう。七海、とまた声をかけると「名前を呼ばないでください」だなんて生意気な返事がくる。ふるふると首を振る私を見ながら鉈を握り苦しそうに目を閉じて頬に一度キスを落とした。やっぱり子犬のような目で私を見てから、立ち上がると同時に呪霊祓除を開始した。
    ああよかった、七海の理性が勝ったんだ……。



    ▽△▽△



    「このむっつり」
    「……チッ」
    「むっつりスケベ」
    「あの状況で手を出さなかったのに、それでもスケベ呼ばわりですか」
    「う……」
    「男の性欲をナメすぎじゃないですか」

    無事ホテル中の呪霊を祓いきった私たちは、荷物を置いた最初の部屋に集合していた。七海の舌が這う感覚が忘れられない。確かにあそこまでしてキスすらせずに無事任務を終えることが出来たのは七海が相手だからかもしれない。

    「キスしなかったのは偉いと思う」
    「……好き同士でやることですから」

    フンと鼻を鳴らすような当て付けがましい言い方にカチンとくる。なんでこういう言い方ばっかり。確かにお互い好きじゃないけどわざわざ言うんじゃない。

    「……補助監督さんに電話してくる」
    「何を」
    「任務完了しましたって」
    「ああ……」
    「あと七海にほっぺチューされましたって」
    「…………」
    「七海が組手相手にほっぺチューしたり首筋舐めまわしたりしてるということがよくわかりました」
    「……」
    「……」
    「……」

    黙り込んだ七海は何も言わなくてなんだか調子が悪い。いつもみたいに言い返して来ないのはそれなりに反省……いや、後悔しているからなんだろうか。

    「……まあ、内緒にするから。誰にも言わない」
    「え」
    「あの状況でも涼しい顔してましたってことにする」
    「何故」
    「恥ずかしいでしょ、お互い……。何もなかったことにして忘れよ」
    「……。……努力します」
    「ん」
    「……ただ、その、」
    「何」
    「首……隠さないと、何もなかったことには……ならないかと……」
    「……えっ?」

    口籠る七海にまさかと思い風呂場に駆け込んで首筋を見ると、薄いけれど確かに誤魔化しようがないくらいハッキリとキスマークがつけられていた。信じられない。あの七海が私にキスマークを付けたなんて夢じゃないのか。キスマークって独占欲の現れだと思ってたのに、七海はどういうつもりで付けたんだろう。好奇心か?

    「有り得ない」
    「すみません」
    「隠せるものがない」
    「……絆創膏なら」
    「ラブホ行ったあとに絆創膏なんかしてたら結局バレバレでしょ」
    「……」
    「ねえ七海はこれ見てどう思うの?キスマークなんか付けて、意味わかんない。ほら見てこんなにクッキリ……。最悪。満足しましたか?」
    「……まあそれなりに……」
    「えっ」
    「……」
    「……いや、うん、もういいや、帰ろう……」



    ──────────
    蛇足

    任務とはいえ好きな人とラブホに行くことになったので七海は結構悩んでさり気なくもしっかりキメた私服なんだけど、夢主は七海に興味がないからノーコメント
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    👏😭👏😭👏😭👏💒💒💒💒💒🌋🌋🌋🌋🌋🌠🌠🌠💖💖💖🙏🙏🙏💒💏💯👌👈👶💖💖💖💖💖❤❤❤❤❤❤❤❤❤💘💘☺❤💖💒💞💞👏👏👏👏👏
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    Replies from the creator

    Arasawa

    DOODLE「口移ししないと出られない部屋」に五条と七海と夢主の3人が入っちゃった話。
    五夢かつ七夢です。なんでも許せる方向け。

    青と辛酸、イベント開催ありがとうございました!🥰
    口移ししないと出られない部屋さっきまで確かに高専の待機室でソファに座ってのんびりくつろいでいたはずなのに、まばたきをした瞬間なぜか真っ白な部屋に五条と七海と私の三人で集合していた。明らかにおかしい。袖のボタンを外してクルクルと捲り臨戦態勢を取った。五条は真っ黒な帯のような目隠しをつけていて、七海はいつものスーツ姿だから各々仕事中だったんだと思う。意味がわからなくて動揺する私を余所に、同期である五条と一歳下の七海は「あーはいはい、そういうことね」とか「何故五条さんまで……」とか各々状況を理解しているらしい。
    少し遅れてキョロキョロと部屋を見渡すと、でかでかと『口移ししないと出られない部屋』と書かれていた。確かに部屋の真ん中には見慣れたミネラルウォーターのペットボトルが数本置かれている。なにがどう「あーはいはいそういうこと」なのか教えてほしい。出来れば五条と七海で事を済ませてほしい。こちとら男性と唇をくっつけたことすらないのだ。口移しだとわかっていてもなるべくこんなことはしたくない。いつか現れる好きな人との本番のために。
    8000

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