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    shiraseee

    @shiraseee_0108_

    気ままに更新しています。
    サイレント更新&修正は常習。
    凪茨ばかりですが、たまに他CPなども。

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    shiraseee

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    どこかの世界線で戦うEdenのおはなし。わりとなんでもありのファンタジー。
    Knightsが敵サイドです。
    頼れる技師のいる洋館へやってきて、魔法使いに会いに行く。
    お互いが本来の呼び方と異なる場合があります。

    このおはなしからCP表現が出てきます。(主に凪茨)
    ※茨が満身創痍、目元が潰されているといった描写があります。※
    ※流血表現若干有。苦手な方はご注意ください※

    ##戦うEden

    どこかの世界線で戦うEden4(日和視点)守護騎士Knightsと交戦し、ぼろぼろになったぼくたちと重傷を負った茨を連れてやってきたのは、この世界でひときわ異質で異彩を放つ少し古びた石細工の洋館。
    そこに電子の類は外観からも分かるほどに一切無く、開きっぱなしでも立派に聳え立つ門の向こうに広がる手入れされた薔薇園が、まず出迎える。
    この薔薇たちは丹精込めて育てると意志の宿る不思議な薔薇で、敵意有るものを排除する防衛の役割も果たすという珍しい薔薇。
    そのため潔癖なほどに他者を嫌う館の主人も、この薔薇に防衛を任せているため門は開かれたままにしている。
    館のほうも、元々あったものを今の主人が自身でリメイクしたもののようで、意図的に取り付けたのか館にも美しい均衡で薔薇が点在している。
    (主人曰く「以前の館は全て美しくない!」とのことで)

    そんなこの館には、この世界随一と言える技師とその弟子が住んでいて、ぼくたちの武装や着ている服の調達などでお世話になることが何度かあった。
    その折にこの館に入り込む貴重品や技師を狙う敵から守ったり、茨が個人的に恩を売ったという話も聞いた。
    技師はぼくたち4人を好意的に思ってはいないけれど、それでも頼る先がないときは文句を言いながらも助けてくれる。ちょっと面倒くさい人だけれど。
    特に、ぼくたちには安心して身を置ける住まいは持っていなくて、どこかの街へ行くたびに茨が拠点として空き家だったり野営地を用意してくれていたから、今回はそういうわけにもいかず。
    戦いで怪我をすることは日常茶飯事だけど(ぼくや凪砂くんは無傷ばっかりだけどね!)、起き上がれないほどの重傷になることは今まで誰にもなかった。
    大体自分で手当て出来るくらいのもので済んでいたものの、やっぱり武装部分を直すのは専門家でなければならない。
    そこでいくつかある伝手で、一番信頼できる彼の……斎宮宗くんのもとへやってきた。
    薔薇園を抜け、重厚な正面入り口の扉の前に立ち、茨をおぶっているジュンくんのかわりにぼくがドアノッカーで3度ほど、扉を叩いた。
    鈍い音が止んだすぐあと、この重たい扉の向こうからバタバタとこちらに向かって響く足音が聞こえた。

    「ど、どちらさんです〜…?お師さんは今忙しくって…相手でけへんよ」

    足音が扉の前で止まったようで、ゆっくりと、少し埃を舞い上がらせながら扉が開いた。
    そして、特徴的な訛り口調と濡羽色の髪を覗かせ、こちらを窺うように恐る恐る姿を見せた。
    出てきた彼は、アンティーク感のある衣服と複数のモチーフやガジェットがあしらわれた、いわゆるスチームパンク・ファッションに身を包み、珍しい金と青の美しいオッドアイの瞳を持つ、技師のたったひとりの弟子───影片みかくんが、ぼくたちを認めると先程とは違い、表情を少し明るくした。

    「ジュンくん!それにEdenのみんなやあ!」
    「お久しぶりです、影片さん」

    ジュンくんとみかくんは何だかいつのまにか仲良しになっていて、こうして訊ねるとまず彼はジュンくんがいることにホッとする。
    ぱっと笑顔になり、ぼくたちを見回す。

    「巴先輩も乱先輩も、いらっしゃい〜!あれ、指揮官さんはおらへんの?ややわぁ、久しぶりやしこの前のお礼もしてへんから、話したかったんに…」

    ぼくと凪砂くんにも挨拶をしてくれたところで、みかくんが指揮官さん、と呼ぶ茨の姿を探す。
    そこでふと、ジュンくんにまた目をやった彼の顔から、今度は一気に血の気が引いていった。

    「んあっ!?じ、ジュンくん、血塗れやんか!よく見たら先輩たちもボロボロやし…!それどないしたん!?」

    少し人よりテンポがずれているのか、真っ先に気付きそうなぼくたちの様子に今焦り出す。
    茨をおぶってもいるジュンくんは、誰よりも怪我をしているように見えるほどにはぼろぼろで血塗れでもあるというのに。
    けど、今までずっと張り詰めていたぼくたちは、彼の様子に小さく笑ってしまうほどには、少し解れた。

    「たたた大変や、すぐ手当てせなあかんよな!?」
    「いや、オレは大丈夫なんです。ただ……」
    「え?ほんなら……あっ、もしかして、おぶってるの指揮官さん?ものすごいぐったりしてるやん!」

    ジュンくんの言葉に、彼がおぶる茨に気付きそっちを覗く。
    ぼくたちの応急処置で傷の手当てはしたものの、手持ちの道具では足りないほどに茨は、守護騎士・瀬名泉との戦いで大怪我を負った。
    中でも酷いのが、眼と目元の損傷。
    完全に茨との通信が途絶える前に聞こえた、瀬名泉の『茨の眼を潰す』という発言。
    実際に狙われたその場所は、どんな攻撃をされたのか。
    剣で斬られた痕は体だけでなく両眼、その周りを執拗に傷付けていた。
    茨は偵察や戦闘の時、いつも眼の武装強化や保護のために特注のゴーグルをしている。
    どれだけの高所から落としても、爆風に巻き込まれても何をしても圧倒的な強度を誇っていると豪語する茨のものなのに、それは粉々に破壊されていたようで。
    抉れる、まではいかないでも綺麗に横一閃に入った一太刀が特に深く、それのせいで眼を開くことも叶わず、出血も酷かった。
    それに加え全身の大怪我。眼が見えなく抵抗もままならなかった様子の茨を、ジュンくんはトドメを刺される直前に間に合い、命からがら満身創痍の茨を背負ってぼくたちの元に戻ってきてくれた。
    合流してすぐ手当てを出来たのは良かったけれど、ぼくと凪砂くんも守護騎士2人を相手にしていて苦戦を強いられ、茨ほどではないにしろたくさん怪我をしてしまっている。
    あれ以上攻められたら全員どうなっていたか分からない。
    でも、最後にあった一悶着のおかげ(というと不本意だけれど)で、その場を離れることに成功し、この洋館まで一直線にやってきた。

    「そうです、怪我が酷くて…!詳しいことはあとで説明するんで、お願いします!茨を助けてください!」

    そして今、出迎えてくれた洋館の住人にジュンくんは頭を下げて頼み込む。

    「わ、わかった!お師さん呼んでくるから、部屋に入って待っててや!」

    急を要する事態を理解し、みかくんは慌てて館の奥へ向かおうと踵を返した。
    みかくんに促され館に一歩入る…と同時、その感情が嫌でも伝わるほどの足音が、玄関ホールへ入ってすぐの両階段上から怒声と共に響いた。

    「影片!うるさいのだよ!裁縫に集中出来ないだろう!」

    よく通るその声は冗談抜きで洋館中に響き渡り、その声量で近くの調度品が震えた。
    みかくんと似たスチームパンク・ファッションにモノクル、みかくんより大きめのハットを被るその下に覗く淡いピンクの髪がいい調和をしている。
    シンプルながらも高級感のあるステッキを片手に、踊り場にまで降りてきた。

    「んあ〜!お師さん、ごめんなぁ。お客さん来たから、話してたんよ。そんで今、お師さんのこと呼びに行こうとしててん」
    「ふん、お客だって?一体どこの誰……うっ」

    みかくんが彼の姿を見るなりそちらに駆け寄っていく。
    彼の言葉を聞き、ホールにいるぼくたちに彼が目を向けた途端に、(ぼくには負けるけど!)その端正な顔が歪んだ。

    「…やっほう、宗くん」

    そして凪砂くんが最近お気に入りの挨拶とともに、宗くんに小さく手を振る。

    「ヒッ…!何故貴様たちがここに!?」

    引き攣った声をあげ、一歩後退る。
    更にぼくたちの格好を見てぎょっとした彼は、今度はまた怒り出す。

    「しかも何故そんなに乱れていて汚いのかね!?僕の美しい館が汚れるじゃないか!影片、すぐに追い出したまえ!」
    「そ…そんなん出来ひんって!お師さん、指揮官さんが大変やねん!血塗れで…」
    「は?指揮官?…ああ、七種がどうかしたのかね?」

    今にも追い出されそうな勢いだったが、なんとかみかくんが制してくれたおかげで彼に取り合えることとなった。




    「────ふん、それで僕のところに来たというわけか」

    部屋に入らせてもらい、事の経緯を2人に説明した。
    みかくんは終始あわあわとしていたが、宗くんは聞くなり「僕たちまであの騎士に目をつけられたらどうするのかね!」と怒っていたけれど。
    茨の容態を細かに説明すれば、顔つきが変わった。
    ようやく横にしてやれた茨は、みかくんが用意してくれた救急キットで止血を施して治癒効果を纏う包帯を眼に巻かせてやると、荒かった呼吸が少し落ち着いたように見えた。
    宗くんは何かを思案したあと、溜息吐きながら肩を竦める。

    「まあ、お前たちは嫌いだが…七種の眼には借りがあるからね。ちょうどいい、これで返すとしよう」
    「宗くん、それじゃあ…!」

    彼の態度にいい返事は貰えないと思っていた。
    だから懇切丁寧に頼み込むか、何か彼のお眼鏡にかなう品物を提供でもしなければ引き受けてもらえないと不安だったけれど。
    聞こえた言葉にぼくは顔を上げ、宗くんが小さく頷いた。

    「眼のほうは僕が完璧に、むしろ以前より良いものにしてやろう!…しかし、七種の怪我は君達でどうにかしたまえ。怪我人の面倒までは見れないのだよ。眼が出来上がるまでここに滞在するのは、特別に許可しよう」
    「ありがとう、宗くん!」
    「ありがとうございます…!」
    「…ありがとう。本当に…」

    技師としての誇りを持つ彼が、高らかに宣言する。
    その言葉に口々にお礼を告げると、「やめたまえ、気味が悪い」とあしらわれてしまった。
    これは彼なりの照れ隠しだと、それなりの付き合いになってくると分かるのだけれど。
    ぼくたちはホッとして顔を見合わせた。

    「影片、僕のアトリエにある木製の小さな裁縫箱を取りにいってほしいのだよ」
    「分かったでお師さん!すぐ取ってくる!」
    「走ると転ぶだろう!何度も言わせるんじゃない!…ああそれと、マドモアゼルに頼んで大きいサファイアを二つ、貰ってくるように」

    そしてすぐに、茨の眼の修復に取り掛かろうとしてくれる2人。
    またみかくんのバタバタと走る足音が消えたあと、ぼくたちはそこでようやく少し体の力を抜き、座ることが出来た。





    しばらく休ませてもらったあと。
    ぼくたちはもう一つ、茨のためにすることがあった。
    茨の眼の状態を確認した宗くんは、「完成までアトリエに籠る。絶対に邪魔をしないように」と残し、みかくんを連れて出て行った。
    渡されたキットでぼくたちの傷の手当ても改めてしたところで、ぼろぼろだった服を宗くんに借りたものに着替えた。
    胸元、襟下に刺繍の施された上品な白のジャケットに、細身の黒のパンツ。
    爽やかな黄緑のネクタイを締め、髪を整える。

    「うんうん、完璧だね!」

    鏡の前で身嗜みを整えた後、一緒に着替えていたジュンくんの方へ振り返る。
    彼もぼくと同じジャケットとパンツを着て、違うのは首元がだいぶ開けたインナーを着ているところ。
    ジュンくんらしい、少しカジュアルな格好だ。

    「うっし、これでまた動けますねぇ〜。さすが斎宮さん、すっげぇ動きやすい」

    機動性を確認するジュンくんを横目に、ぼくは凪砂くんの方へ向く。
    凪砂くんにも着替えは渡されていたけれど、茨を横にしてからというものの、そのそばを離れようとせずにいた。
    その体はぼろぼろのまま、力のない茨の手をぎゅっと握り締めながら。

    「…凪砂くん」

    小さく声をかける。
    手当てを施された茨をじっと見つめたまま、凪砂くんがゆっくりと口を開く。

    「……日和くん。ごめん、私は…」

    弱く紡がれた彼の言葉は、今にも消え入りそうだった。
    いつもの凛々しく美しい彼はそこにいない。
    ぼくは少し泣きそうになるのを堪えて、そっと肩に手を置いた。

    「大丈夫。凪砂くんは、茨のそばにいてあげてほしいね。あとのことは、ぼくとジュンくんに任せて」
    「ええ。茨にしこたま恩を売ってやりますよぉ〜」
    「……ありがとう、2人とも…」

    決してこちらの感情は悟られないように。
    彼を少しでも安心させるために告げると、弱々しい笑顔を向けてくれた。





    「それじゃ、ぼくたちは”魔法使い”のところに行こうか」

    凪砂くんと茨のいる部屋を出て、その隣の部屋のドア前に、ぼくとジュンくんは居た。
    茨のために、もう一つすること────それは、体の傷を治すための薬を取りに行くこと。
    ”魔法使い”と呼ばれる、彼らのもとへ。

    その移動にまず必要なのが、別空間に様々なアイテムを仕舞える、便利なアイテムボックスを呼び出す。
    4人共通で使うものには、武器や食料だけでなく、足を使って行けないところへドアを介して空間や土地を移動出来る魔法の鍵がある。
    移動に必要なそれを一つ取り出し、近くのドアの鍵穴にそれを差し込んで、鍵を回す。
    そして開いたドアの向こう、ふわっと香ってきた薬品の香りが目的地へ通じた印。
    ジュンくんと一歩踏み出す。
    まるで森の中にでも迷い込んだような、緑の生い茂る通路。
    でも鬱蒼としているわけじゃなくて、どこからか陽射しも差し込んでいて空気もおいしい。
    うんうん、やっぱり陽の光は浴びないとね!
    …と、それはいいんだけれど。この通路には見たことない花や植物、よく分からない飾りがそこら中に下がっていて、いつ来ても謎の空間だ。
    以前、興味を示したジュンくんがうっかり触ってしまって、とてもグロテスクな植物に丸呑みにされそうになってたっけ。
    それからしばらく進んだ先、蔦に覆われたアイアンワークのはめ込まれたドアが見えた。
    少し重量のあるドアのノブをジュンくんが引き、ゆっくりと開く。
    その奥で迎えてくれたのは、ひとりの魔法使い。

    「───いらっしゃイ。久しぶりだネ、Eden」

    怪しくも綺麗に笑う彼を、まっすぐ見遣った。
    少し薄暗い室内にひとり、まるでぼくたちが来ることが予め分かっていたかのような口振りで、彼が出迎えてくれる。

    「今日は何をご所望かナ?ボクが何でも叶えてあげよウ♪」

    次いでにこやかに態度を変えた彼が、ぼくたちを手招きする。
    ジュンくんと顔を見合わせ、頷く。

    …さあ、取引の始まりだね。



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    Replies from the creator

    shiraseee

    DONE凪砂くんが眠る茨を見つめて、かわいいなぁ、好きだなぁ、と思うおはなし。同棲している凪茨。
    茨は眠ってるだけになってしまいました。

    新年書き始めとなりました。とんでもなくふわふわとした内容ですけども…こういう凪茨が好きなので、今年もこんな感じのを書いていきます。
    暇つぶしにでもなりますと幸いです。
    拙作ばかりですが、たくさん書いていきたい!どうぞ今年もよろしくお願いします。
    しあわせの風景────────

    薄ら開いては閉じを繰り返す瞼に、注ぐあたたかな陽射し。まだ少し重たいけれど、微睡みから目覚めていく意識が次に捉えた柔らかな匂いに幸福感すら覚え、覚醒していく。
    日向より私に近しい匂いは、すぐそこにある。
    すん、と小さく鼻を鳴らして吸いこんだ。再び眠りに誘われてしまいそうになる安堵感と、心地良さ。この匂いにほだされ、自然と求めてしまう。
    随分そばにあったぬくもりも抱き締め漸く開いた私の視界は、見慣れた暗紅色が埋め尽くしている。
    「……茨…」
    「……………」
    「……?」
    ───珍しい。ぴくりとも反応がない。
    普段なら名前を呼べば起き上がるとまではいかずとも、私の声を聞けば、ふと長いまつ毛を持ち上げ茨の美しい青に私を映してくれることが常だった。その時の、茨の世界にまず私が在れるひとときに期待して暫く様子を見ていても、瞼は開くどころか、かたく閉ざされたまま。どうやら茨は、無防備にも私の腕の中で熟睡している。
    2000

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