富豪×ディーラー 1────────
「……ゲームに勝つことが出来たら、このカジノと君を買いたい」
界隈でNo. 1の売り上げを誇る豪華絢爛、国の地下に深く根付く煌びやかな当カジノ。
今宵のお客様は、こちらの美しきハイローラー。
その見る者全てを射抜きそうな鋭い琥珀色の眼差し。揺れる白銀の髪に誘われ、場にいる全員が目で追ってしまう凛々しい立ち姿。
端正だが起伏が少なく読み取りにくい表情は、時折ふと浮かぶ妖艶な笑みに惹かれる。
この人は間違いなく強者の部類だ、それも最上級の。
ここへやってきた時から周囲をその端麗な見目でざわつかせ、そう感じさせる強いオーラを持つこの客は。しかし何を思い上がっているのか、カジノのオーナーであり最も勝率のあるディーラーの自分に対して強気な発言。
(まあ、たまに居るんですけどね。自分を買いたい、手に入れたいとほざく客が)
だが今までの客と違うのは、自分だけではなくカジノも買う、と言うところ。その証にとテーブルについた時に見せられた、アタッシュケースにびっしり詰められた札束を思い出す。
あれだけでも今いるどの客より金を持っているが、更にあると期待していいはずだ。
「では、全てを手に入れたいと仰るほどのそのお言葉…偽りでないと証明してください。自分を完膚無きまでに負けさせれば、当カジノも、この身も、全て貴方に差し出すとお約束しましょう…☆」
「…良かった。断られたらどうしようかと思ったよ。じゃあ、始めてくれる?」
「かしこまりました」
取り出したカードを馴染んだ素早い手捌きで男の前に配る。
積み上げられたチップを横目に、まずは一戦…楽しませていただきましょうか。
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