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    ゆめの

    @x_yumeno_x

    浮唯中心で唯受を書いています。

    カップリングごとにタグを分けていますので、参考にしてください。

    少しでも楽しんでいただければ幸いです。
    よろしくお願いします🙇‍♀️⤵️

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    ゆめの

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    2022年5月8日エアコレ合わせの新作です。

    唯が高校生3年生の初夏の話(現時点でゲーム中で展開されているよりも未来の話)

    初めてのデートすることになった唯と浮葉。
    しかし、それぞれ思うことがあるようで……

    ※お品書き作成後に完成させたので、若干雰囲気の異なる話となっております

    ##浮唯

    カノン~横浜の初夏「横浜は坂が多いとは聞いていましたが、まさかこれほどとは」

    5月の連休も終わり、日差しはまだそこまで強くもなく、そして空気も乾いてはいないが必要以上の湿っぽさを含んでもいない風を受けながら御門浮葉はそう呟く。
    少し後ろを歩いている朝日奈唯は、思いの外早く歩く浮葉に遅れまいと息を切らせながら彼についていく。

    それにしても。
    今日、横浜の街を一緒に歩こうと誘い出したのは自分ではあるが、前を歩く浮葉の足取りが想像よりも軽い感じがするのは気のせいだろうか。

    「浮葉さんって、外出がお嫌いかと思っていました」

    思わずそんな言葉が口から出てしまう。

    「意外ですか?」

    後ろをチラリと振り向きながらそう問いかける。
    その瞳はかつて一緒に演奏した際、おそらく無意識にしたであろう流し目を彷彿とさせる。
    その瞳の艶麗さにドキリとしながらも、それに気づかれまいとしながら唯は冷静さを装う。
    もっとも目の前の彼にはそれすらも見透かされているのであろうが。

    「ええ」

    簡素過ぎるとも言うべき答え。
    だけど、浮葉はそれに満足したらしい。
    消え去りそうな眼差しにほんのわずかな光をたたえながら唯に視線を向ける。

    「確かに人混みの中を歩くのは好きではありません。でも、こうして季節のうつろいを感じるのは嫌いではありませんよ」

    あなたと一緒というのもあるのかもしれませんね。
    そう呟くようにつけ足し、そして顔を上げる。
    真上から射す光を浴び、真っ正面から吹いてくる風を受け止めている様子を見ていると、男性でありながらも天女のように美しく、今にも消え去りそうな雰囲気すら感じる。

    もっともそう思っているのは唯の方だけだったらしい。
    浮葉は自分がそのように見られているとも思っていないのか、彼女にそっと手を差し出してくる。
    その手を本当にとっていいのか躊躇する。
    迷った末に手を重ねるが本音はつい口からこぼれてしまう。

    「本当に浮葉さんの隣にいていいのかわからなくて……」

    その言葉は意外だったのだろう。
    浮葉が最初に見せたのは見開いた目。そして、次の瞬間に見せたのは怪訝な顔。
    彼にそんな表情をさせているのは自分が原因。
    そう思いながらも唯は昨夜のスタオケのメンバーとの会話を思い出す。

    ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

    「先輩、いいことあったんですか? 何だか嬉しそうですよ」

    練習が終わり後片付けをしていると成宮がそう話し掛けてきた。
    内容が内容だけに話さないでおこうとしていたら、余計表情は緩んだらしい。

    「なになに、コンミスちゃん、どんないいことあったん?」

    傍にいたためふたりの会話が耳に入ったのだろう。乙音も会話に加わってくる。

    「まあ、ちょっとね」

    さすがに本当のことを言うには早すぎるし、実感も湧かない。
    黙秘を貫こうとしたそのとき、不意打ちに声を掛けられる。

    「女の子は恋をすると綺麗になるというからね」

    あまりに核心をついた言葉にドキリとしながら振り向くと、そこにいたのは仁科の姿。

    「何言ってるんですか!!!!!」

    思わずそうあわてふためいてしまうが、却って「事実です」と示していることとなる。
    その後、言葉巧みなスタオケのメンバーからうまく誘導され、唯は浮葉と交際をすることになったこと、そして明日が初めてのデートだということを話す。

    場が盛り上がる中、印象に残る行動を取るものも数名。

    まずは笹塚。
    本当に関心がないのだろう。
    やるべきことを済ませると「では、お先に」と消えるという彼らしい反応を見せた。
    そして、そんな彼はある意味唯にとって救いの存在でもあった。

    そして、次に疾風。
    明らかにおもしろくなさそうな様子を見せた。
    それは唯に恋慕しているとかではなく、浮葉が現在所属している団体がどこであるかということであろう。
    彼も音楽家を目指す以上、昨年の秋時点でのスタオケの実力は御門浮葉の眼鏡にかなわないことは察していた。
    だからといって、あえて最大のライバルとも言うべき存在に身を置いた者と、自分の所属するオーケストラのコンサートミストレスが交際することに対し手放しで喜ぶほどのめでたい思考回路もおそらく持ち合わせていない。
    他の者が祝福の言葉を述べる中、彼は何か言いたげな表情だったのを今になってふと思い出す。

    そして最後に銀河。
    「ま、恋はたくさんした方がいいぜ。若いからこそ突っ走ることもできるし、失敗したからこそ感じる痛みも経験もあるからな」

    隣にいた朔夜が「先生もまだ若いのに何言っているんですか。そもそも最初から失敗を望む人なんていませんよ」と呆れながら話していたが、銀河の言葉は想像以上に唯に突き刺さる。

    自分たちがともに過ごしたのは京都の秋のほんの数日。
    少なくとも自分はその数日間で、もっと言えば出会った瞬間に恋に落ち、惹かれていった。
    そのときの彼は深い事情まで踏み込ませることはなく、見せてきたのは彼の氷山の一角に過ぎないにも関わらず。
    脳内で作り出した「御門浮葉」という虚像に好意を抱いているのではないか。
    そんなことすら思ってしまう。

    そして、それ以上に、少なくとも去年の秋時点ではスターライト・オーケストラは彼が望むようなオーケストラではなかった。そして、現在も彼は別の道を歩くことを選んだ。
    それにも関わらず彼は自分を慕う気持ちがあり、そして今日はこうして横を歩くことを選んでくれた。
    どのような感情からそのような気持ちに至ったのか想像はつかない。だからこそ、これ以上自分のことを知っていくにつれ、幻滅し、離れていくのではないかという不安がつきまとっている。

    しかし、そんな唯に対し、浮葉は先ほどつなぐように促した手を優しく握ってくれる。

    「不安なのは私も同じですよ」

    そう言い返しながら。

    「あなたが私に憧憬を抱いているのと同じように、いえそれ以上に私はあなたに惹かれています」

    見つめてくる瞳は真っ直ぐで優しいながらも意思の強さを感じる。
    嘘泣きが得意という彼ではあるが、少なくともこれは演技ではない。唯は直感でそう思う。

    「だけど、今の私が生きているのは澄んだ世界とは程遠い、欲望と虚飾が渦巻いた世界。
    たぶんあなたが知ったら失望するようなこともしていることでしょう。
    だからあなたに失望されてしまったら…… そんな不安がずっとよぎってしまいます」

    そんなことはない。
    そんな思いで目の前の麗人から漏れる言葉を聞く。
    彼が生きているのがどんな世界であろうとも染まりきるようには見えなかったし、たとえそうなったとしても自分はそんな彼を受け入れるという確信があったから。

    「そんなことありません。私はどんな浮葉さんでも構いません!」
    「おや、そんなことをおっしゃってもいいのですか?」

    勢いよくまくしたてる唯をどこか面白がるように浮葉は見つけてくる。
    では、そう前置きをして顔を近づけ、そして彼女の前髪をかき分ける。

    「では、互いに似た想いを抱えているということで」

    手が届かないと思っていた憧れの存在であり、見目麗しい浮葉に至近距離まで近づかれ、唯は心臓がたかなるのを感じる。
    ここが公道だったのが幸いだ。
    もう少し人気のない場所であったら、どうなるかわからない。

    それにしても。
    こんなに麗しくて、ふとした瞬間に風とともに消え去りそうな儚い雰囲気を持っているのに。
    それでも、考えていることは案外同じ。
    もしかすると彼は自分が思っている以上に世俗的な人間なのかもしれない。
    ただ、生きている世界が高貴すぎるため、一般的な常識と掛け離れている部分があることは否めないが。

    そう思っていると、唯は目的地が近づいていることに気がつく。
    そして視界の奥に見せたかった世界が徐々に姿を表す。

    「ほら、浮葉さん、海が見えてきましたよ!」

    たどり着いたのは港の見える丘公園。
    盆地で育った浮葉にとっては新鮮な光景なのだろう。隣から感嘆の溜め息が漏れてくる。

    「改めてあなたと出会えてよかった。そんなことを思います。ひとりでは見ることのできなかった光景ですから」

    その言葉を聞いて唯は安心する。
    彼が少なくとも自分と一緒にいることで得られるものがあるのだから。
    彼の境遇について一介の高校生である唯ができることはほとんどない。
    救い出すなんてことはもってのほか。
    だけど、せめて心だけは守る存在でありたい。
    浮葉の言葉を聞いてそんなことを思う。
    そして、この気持ちを忘れないことを唯は海に向かって誓う。
    遠くの水面にキラキラと反射する太陽の光が忘れられなかった。
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    ゆめの

    PROGRESSフェリクスオンリー合わせのフェリアン小説です。

    テーマは「アンジュに告白して振られたフェリクスと振ってしまったアンジュのその後」です。
    フェリクスの、そしてふたりの行方をお楽しみ(?)ください。

    ネタは主催のまるのさまに提供していただきました。お忙しい中、ありがとうございます😌
    ※ゲーム内よりもフェリクス様が女々しいので、ご注意ください
    ※後日微修正する可能性があります
    天使が振り向いたその日「フェリクス、私たちはこれ以上仲を深めてはいけないと思うの。ごめんなさい」

    女王試験が始まり50日目。
    自分たちの仲はすっかり深まり、そしてそれはこれからも変わらない。
    そう信じて想いを告げた矢先にアンジュから向けられた言葉。それをフェリクスは信じられない想いで聴いていた。

    「なぜ……」

    なんとか声を振り絞りそれだけを聞くが、目の前のアンジュは悲しそうな顔をする。

    「言えない。でも、私たちは結ばれてはいけないと思うの」
    「そう、わかったよ。君の気持ちは」

    何とかそれだけを伝えてフェリクスは森の湖から離れることにする。
    なんとか歩を進めるものの、本当は今すぐにでもうずくまりたい。だけど、それは美しくない。そう思い、自分を奮い立たせて館へと向かう。
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