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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    完全スピンオフ夢小説です。

    悟が生まれた翌日、長男誕生の一報を受けた当主が文字通り飛んで帰って来た。
    あの偉そうな老害の息子だと知り、私は身構えたがそれは空振りに終わった。

    当主、五条正(ただし)は前衛的で前向きな人だった。

    息子を抱いて涙を流して喜び、私の存在を知ると

    「え?僕娘もできたの?凪よくやった!」

    と手放しで喜び、私がここにいる理由を知ると初めて彼女に出会った時彼女がしたように両手をついて私に謝罪し、家族の元に帰すと約束した。
    父親の狼藉を知った彼は烈火の如く怒り、父親を隠居させ、これからは家族が離ればなれにならないように古き忌まわしいしきたりは変えていくと宣言した。


    数日後、私の両親が本家に迎えに来てくれた。五条夫婦が私の家に行くと申し出たが、出産直後の彼女の体調を気遣い辞退したそうだ。

    私は両親の胸に飛び込み、声をあげて泣いた。両親も泣いていた。少し落ち着いてから彼女の方を見ると、彼女は寂しそうな顔をしていた。家に帰れる喜びと、彼女と悟に会えなくなる寂しさで私は揺れた。
    五条夫婦は両手をついて深々と頭を下げ、両親に謝罪した。償う為ならなんでもすると言った。2度とこんなことがないよう、五条家も変えていくと言った。
    両親はただ、「実が帰って来るならそれでいい。ただ、2度とかかわり合いになって欲しくない」と静かに言った。
    五条夫婦が了承しようとした時、かすかに聞こえた。


    悟が泣いている___


    「ねぇ……悟が泣いてるよ」


    そう呟いた私の言葉に両親、五条夫婦共に首をかしげた。
    聞こえないようだ。

    でも、泣いてる。

    廊下で小走りな足音がして、障子の前に座り頭を下げた影が「申し訳ありません」と声を発する。
    「悟様が……」
    その声と同時に悟の泣き声が近づいてくる。元気いっぱいだ。
    「おむつもミルクも済んでおりますが、突然火が着いたように泣いてしまいまして奥様に抱いて頂きたく……」
    おろおろと影が説明する。

    子育て経験者の両親が微笑み、「どうぞ、私たちにも拝見させてください」と言う。
    赤ん坊というのは偉大だ。一瞬で場が和んだ。

    世話係に抱かれた悟が入ってくる。
    しばし全員で母親に抱かれながらも泣き止まない悟に見いる。
    「本当に綺麗な子ですね……」
    私の両親がほう、と溜め息をつく。
    「悟、どうしたの?」
    母親にあやされても一向に泣き止む気配がなく、見惚れていた全員が途方に暮れた。
    「悟?」
    私が声をかけると一瞬泣き止み、声がした方向を確認しているようだった。
    泣き止んだのは本当に一瞬で、悟はまた泣きはじめた。
    「あら、そうなの」
    彼女は微笑み、私に悟を抱かせた。

    悟は泣き止んだ。
    そして、碧い碧い瞳で私をじっと見ている。


    小さな悟。
    世界で一番かわいい悟。
    大好きな人の赤ん坊の悟。
    その悟が「行くな」と全身全霊で訴えている。

    私にはそう感じた。



    「私、ここに残りたい」



    迷いなんてなかった。


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