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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    56話目です。

    56控え室に戻るとベールを外してもらい、セットされた髪の毛にブーケと同じお花で作った髪飾りをつけてもらった。これから会食なので、ベールは邪魔なわけだ。

    私の誕生日に使わせてもらった個室に案内される。悟は入り口で待っていた。

    「じゃあ入ろう」
    手を繋いでドアを開ける。
    そこには、私の両親とパパと凪ママがテーブルについていた。
    私は悟の手を離し、ママに駆け寄り抱き締めた。

    「……ママ!!」

    「……実、とっても綺麗よ…」

    「ママ……!!」
    涙を止めるなんて無理だった。

    「ほら実。みんな待ってるから悟のところに戻りなさい。話しはあとでゆっくりしましょう」

    「……うん……」

    「ついに化粧が崩れたかー」
    悟は準備がいいのかティッシュを渡された。

    「ごめぇん……」

    涙を急いで止めて席に着く。

    「とりあえず、夕べ親たちは久しぶりの親睦会終わらせてるし」

    「そうなの?!知らなかったのわたしだけ?!」

    「そう、その通り。結婚する意志は伝えてあったし、式も挙げたし、あとは祝言やって婚姻届出すだけなの」

    「ははぁ……そうなの……」

    「どうしても盛大な式は挙げられないけど」

    「最高だよ……」

    「泣くな実!!」

    「はい!!」

    「と、いうわけで集まってもらって有難うございます。今日は食べて飲んでホテルのスイートでゆっくりして行ってください。じゃ、かんぱーい!」

    悟がウーロン茶のグラスで乾杯する。
    「腹減った!!」

    次々に運ばれてくる豪華なお料理に目が眩みそうだった。

    「でも悪いわね。足代どころかスイートの連泊までお世話になっちゃって」
    母が悟に声をかける。

    「ん?別にいいよ。俺、金の使い方分かってないからこういう時に使わないと」

    「ねぇ、みんな昨日来たんでしょ?何してたの?」

    「親同士の話し合いだよ」
    父が優しく言う。

    「五条パパから連絡があってね。実も悟も昔の事を恨んだり怒ったりしていない。実が凪ママに会いたがってるって」

    「パパ……」

    「いや、話をもってきたのはもちろん悟なんだけどね」
    あははとパパが笑う。

    「だから我々も、きちんと昔の事に決着をつけなければと思ったんだよ。大事なのはお前たちの気持ちだから。他でもない、実がママに会いたいと言うなら、それでいいよねって。」

    「悟……」

    「だからあの時『分かった』って言ったろ」

    「うん……」
    私は涙を堪えた。

    「お父さんお母さん、パパママ、私の我儘を聞いてくれてありがとう。みんなに愛してもらって、私は本当に幸せです。心から愛してる」

    「……俺は?!」

    「はぁ?!」
    悟以外の全員が同じタイミングで驚きの声を発する。

    「いやいやいやいや悟……?今はね?両親にお礼をする場面だよね……??」

    「俺には?!」

    「悟……」
    悟以外は全員呆れている。

    「悟……、悟にはあとでちゃんとね?」

    「今がいいんですけど?!」

    「えぇ……なんで……??」

    「両親たちは俺がずーーーーーーっと実の事を好きだって知ってたけど、俺も好き好き言ってたしね?でも、みんな実が俺の事を好きって言ったの聞いたことある?!」

    「そういえば……ない……かしらねぇ??」

    「お母さん!!」

    「多分なかった気がするなぁ」

    「お父さん!!」

    「実、諦めて我々への誓いの言葉として悟に想いを伝えたらどうだい?」

    「なんならここでもう一度誓いのキスがあってもいいわよ?」

    「パパ!ママ!!」

    「実」

    悟がキラキラした瞳で私を見ている。

    「……悟……いつもありがとう」
    顔から火が出そうだ。

    「うん?で??」

    「……愛してる……」

    「俺もーーーーー!!!」
    悟にそのまま両手で顔をホールドされてキスされる。

    「んぐぅーーーーーーーー!!!」

    両親たちが大盛りあがりしていた。


    食事も終わり、それぞれが部屋に戻ったので、私たちも部屋に向かっていた。

    「やだ。私着替えないよ」

    「親父のキャリーケースに全部入れてきた」

    「え。私のクローゼット開けたの?」

    「うん。いつも開けてる」

    「なんでよ!!!」

    「実がいない時に実の匂いに包まれてる」

    「えぇ……怖いんですけど……」

    「なんでだよ!!いいだろ!!」

    「うん……まぁいいけどパンツは盗まないでよ」

    「……」

    「ちょっと?!まさか?!」

    「冗談だよ!!」

    「冗談にならないわよ!!」

    「あ、部屋はここね」

    ドアを開けてびっくりした。

    「え?ここ?どんだけ広いの???ここリビング?ダイニングもあるの???」

    「ロイヤルスイートだから寝室も何個かあるんじゃない?」

    「ロイヤルスイート!!!」

    いくつもある部屋を一つずつ見てまわる。全てが豪華で美しい。流石は星のつくホテルのロイヤルスイートだ。
    ふと悟を見ると既に裸だ。

    「服はお風呂場で脱ぎなさいよ!!!」

    「早く風呂入ろうよ」

    「分かったから!ドレス脱ぐの大変だから先に入ってて!」

    「手伝うって」

    真っ裸のままスタスタと近づいてくる。

    「お願いだからせめて腰にタオルを……」

    「めんどくさいー。ほら後ろ向いて」

    背中のファスナーが下ろされる。

    「へぇー?中にこんなの着てたんだ?苦しくなかった?」

    「まぁ多少は苦しかったけどわりと平気だよ」

    ドレスがストンと足元に落ちる。

    「あ、これはハンガーにかけなきゃね」
    ドレスを拾って悟を見ると固まっている。

    「悟?どうしたの?」

    「……それ……いくらなんでもエロすぎない?」

    「……それってなにが……???」

    「それ、ガーターベルトっていうんだっけ??」

    「!!!!!」
    さっとドレスで体を隠す。

    「ちょっとドレスはあとにして」

    逃げるより先に抱き上げられる。

    「なになになになに?!」

    「ヤル」

    「お!お風呂入る!!」

    「ダメ」

    「緊張していっぱい汗かいたから!!!」

    「気にしない」

    「私が気にする!!」

    「そうかー。ウェディングドレスの中にはエロが隠してあったんだなー。深いなー」

    「お願い!お風呂!」
    ベッドに降ろされる。

    「着たまましようね」

    「えええええええええ!!!」

    「そのためのガーターベルトでしょ?」

    「違うわよ!!トイレが楽なのよ!!!」

    「あー、似たようなもんだね」

    「どこがよ!!!」

    「今日は俺の言うこと聞く日だよね?」

    「……くっ……」



    荒々しく唇が重なる。
    ビスチェのたくさんあるホックが半分ほど外されたところで面倒臭くなったのか、ブラのところを下げられて胸をあらわにされる。いつもより力強く胸を揉まれ、吸われた。身体中を撫でる手も荒々しい。
    ショーツは剥ぎ取られるといった表現がぴったりだ。クリトリスをぐっと擦られて痛みが走る。

    「悟……!もうちょっと優しく……!」

    抵抗すると触るのをやめて口をつけようとする。

    「待って!それはしなくていい!お風呂入ってないから!」

    力でなんて到底敵わない。
    悟は黙って口をつけた。
    口でしてもいつもより荒々しい。
    潤いを確かめると指が入ってきた。

    「痛っ……!痛いよ!!」

    前戯が足りていない。
    十分に濡れていないところにいきなり2本も指が入ってきた。痛くないわけがない。
    私はキレた。

    「悟!!やめて!!触らないで!!!」

    私は起き上がって悟の手を払いのけた。

    「なんなのよ!痛いって言ってるのに!!」
    シーツを自分に巻き付ける。

    鼻息も荒く怒る私の側で悟が私を見ている。
    私を見ている?
    私を見ているのか?

    「……悟?」

    「……あ……ごめ……」

    悟が左手で両目を押さえる。
    薬指にはさっきはめたばかりの指輪が光る。

    「急にどうしちゃったの……?」

    悟は同じ体勢のまま黙っている。

    「桜子さんと何を話したの?」
    ずっとなんともない素振りをしていたが、私だって悟がいつもと違うのに気付かないわけではない。

    それでも悟は動かないししゃべらない。

    私は体勢を変えるために少し動いた。
    動いた瞬間、悟に腕を掴まれる。
    さっきの荒々しい悟を思い出して体が固くなる。

    そこでようやく悟が私を見た。

    「……ごめん。ごめん実……怖がらせた……いや、……全部ごめん。痛かった?」

    「……今日は仲良ししたくない……」

    「分かった」

    「……私はお風呂入ってくるから」
    シーツを巻き付けたままベッドからおりようとした。

    「実、待って」

    振り向くと悟が泣きそうな顔をしている。

    「行かないで」

    「お風呂に行くだけだけど……」

    「ハグさせて」

    なんて顔をしてるんだろう。
    私は悟が広げた腕の中に収まった。

    「ずっと俺と一緒にいるって約束して。実と2度と離れたくない」

    桜子さんが話してしまったのだろうか?

    「実までいなくならないで」

    実 『まで』 _______
    私の事ではない。
    親友の事か。

    「言われなくても一緒にいるよ……?」

    悟の腕に力が入るが、痛いほどではない。

    「実、覚えておいて。俺のたった一人の親友の名前」

    「……うん?」





    「夏油傑」


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