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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    60話目、ラストです。

    60領域内では呪力が付与された攻撃は全て当たる。

    桜子さんがナイフであいつに斬りかかるとあいつは実を抱えたまま器用に避ける。

    領域は俺のとあいつのがちょうど半分ずつ展開されているが少しずつ俺の領域が押している。

    桜子さんの攻撃に俺も参加すると、隙をついて桜子さんが実の腕を掴む。

    「実さん!!黒いバリアを!!!」

    桜子さんに言われて、実がほんの一瞬迷った顔をした。でもそれは本当に一瞬だった。

    桜子さんの腕がみるみる溶けていく。
    そしてあいつの腕は一瞬で焼ききれた。

    「なるほど!これが黒いバリアか!凄いね!」

    特級呪霊を受肉させたあいつならなんてことないだろう。
    あとは桜子さんと実がどれだけ耐えられるか___

    桜子さんが黒いバリアを解いた実を片腕で抱き締める。

    「悟様!時間がありません!!」

    俺の領域内で実の魂が俺に共鳴する前に。
    あいつの領域内で実が桜子さんの呪力に守られてるうちに。

    「お前を殺す!!!!!」

    「次期当主の言葉とは思えないね!!」

    焼ききれた腕が触手のように再生し、刀の形状になって実たちに向かって伸びる。
    桜子さんが実を庇う。

    「桜子さん!!」

    実の悲鳴。

    「悟!!」



    ____躊躇せず 決断は刹那に_____



    「お前、蒼すら録に使えないんだろ?じゃあこれは絶対できないよな?」

    「死んでも実さんは離さないからな」


    「術式順転 蒼 術式反転 赤」


    術式が発動する瞬間
    実の口元が赤くなった

    あいつの触手が再度桜子さんのを刺し、桜子さんを貫いて実に届いたのか


    「虚式 紫」


    実と桜子さんが触手であいつのところに吸い寄せられる

    発動した術式は止められない


    「実!!!!!」




    六眼が全てを見せる




    紫色の光の中で
    実と目が合う



    実が微笑む



    口元がゆっくり動く



    実の桜色のバリアが
    桜吹雪のように粉々に砕け散る



    俺の領域が完全に完成する
    領域内で術式が完了する



    そこにはもう誰もいない




    遠くから親父たちの声がする




    あいつが投げ捨てた天逆鉾を拾う
    処分しないと




    空に




    誰にも見えないくらい




    誰にも声が届かないとこまで高く








    いやだ



    実が



    いないと



    天逆鉾で俺は死ねるのに



    なんで



    実はなんでも受け入れるんだ



    実!!!!!!!







    一年後


    俺は正式に五条家当主になった。

    遺体が無いまま実、オフクロ、桜子さんの葬儀を五条家でやった。

    実の両親には自分の術式で実が亡くなった事を話した。二人は泣き崩れたが「あの子が選んだ路だから」と言ってくれた。

    親父も元妻と娘を一度に失って相当落ち込んでいたが時間が少しずつ普段の生活に戻してくれた。
    光が海外から戻って来たから、悲しんでばかりもいられなかった。

    光は実が亡くなった事を知って泣いた。
    自分の母親が亡くなった事についてはあまり悲しくなかったようだ。遺影で初めて自分の母親の顔を見たのだからそんなもんだろう。


    俺は


    自分の事を「僕」というようになった。

    お披露目会直後は高専でも気を遣ってもらったが、今では通常運転だ。
    任務があれば海外にでも行く。
    天逆鉾は海外で処分した。

    実の部屋はそのまま。
    時間とともに実の匂いが薄くなっていく。

    実が亡くなって一年が経ち、ようやく実のものを手に取れるようになり、デスクの引き出しを開けてみる。

    デスクには鍵がかかる一番大きい引き出しがある。鍵を探したが見当たらないので申し訳ないが力業で開ける。

    中にはノートがびっしり入っていた。
    日記だ。
    一番最初のノートは札幌にいた頃で、僕が札幌に行った日の事が書いてあった。

    札幌で昔話をしてくれた時のように、日記は事細かに書かれていて胸が熱くなる。

    あとでゆっくり読ませてもらおうと、一番新しいノートを開く。
    何か挟まっていて、分厚くなっている。
    最後のページに挟まっていたのは折り畳まれた見覚えのある高そうな布。

    誕生日プレゼントの指輪の箱の中に入ってい布だ。
    取り上げると何かが落ちた。



    インフィニティの指輪____



    指輪を拾い上げる。
    日記の最後のページは
    「悟へ」
    で始まっている。
    お披露目会の二日前の日付が書いてある。




    「何度生まれ変わっても
    どんな時代でも
    私を見つけて
    愛して

    何度生まれ変わっても
    どんな時代でも
    悟を見つけて
    愛するから」



    僕は首から下げたチェーンを外した事はない。
    ペアリングと結婚指輪、両方を付けていた。
    そこにもうひとつ。
    実の小さな指輪を通す。



    僕が呪術師としてもち得ないものはない。
    紛れもなく最強だ。

    ただ、僕が一人の人間として絶対にもち得ないもの。



    たった一人の親友と
    最愛の女性______





    「あ、いたいた!悟!この怠慢教師!!」

    「真希、先生を呼び捨てにすんのやめない?っていうか僕たちまだ出会って数日だよ?」

    「先生だと思ってねぇんだよ」

    僕は実の年齢を追い越して、高専で一年の担任をしている。

    「で、どうしたの?」

    「どうしたの?じゃねぇよ。授業始まってんだよ」

    「あれ?そんな時間?」

    「あちこち探したんだぞ。家入さんがここだろうって教えてくれた」

    「あぁ、好きなんだ。この時期はここが最高」

    「似合わねえな。桜の木の下かよ」

    「ひどいこと言うねえ。僕だって草木を愛でる気持ちはあるんだよ?」

    「いいから早く行くぞ!」

    「しょうがないなぁ。授業してやるかぁ」

    「お前なぁ」



    実の最期の言葉





    生きて




    実がそう願うなら


    また出会える未来を信じて
    僕は這いつくばってでも生きていく




    実を心に抱いて






    生きていく_______








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