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    鴉の鳴き声

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    鴉の鳴き声

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    うちよそ
    そねさん家のとらゆきさんとの邂逅とか

    魔術師との邂逅編「ここ…は…?」
    「フスィーッ……目が覚めたか、ヒトの子よ」
    朧げな記憶を辿る。そうだ、クガネからエオルゼアはリムサ・ロミンサに向かう船に密航したは良かったが、大きな衝撃と共に水に飲まれ海に放り込まれたのだ。

    周囲を見回すと珊瑚が所々露出している岩場だった。
    ただ驚いたのは周りにいるのは魚人…だろうか。人狼族やコウジン族は見かけた事はあったが、魚人族?は初めてだ。
    「警戒しなくてよい。無事でなによりだ」
    警戒と思われたのだろうか、装飾具の多い魚人が声をかけてきた。
    「私…1人だけなのだろうか?」
    「他にも何人か海に投げ出されたのは見た。だが我々が助けられたのはお前だけだ。残るは強硬派の手先の海賊船に乗せられているのを見た」

    「そうか…礼を言う。私はその海賊の住処に向かう」
    「フスィーッ…これより外は我々と同じサハギン族でもヒトを嫌い、襲う同胞も多い。止めたほうが良い」
    「忠告痛み入る。だが投げ出された者の中に家族がいるのだ。迎えに行かねばならない」
    「家族か…最近我らが水神が降ろされたと聞く。既にテンパードにされている可能性もあるぞ」
    「テンパード?何にしろそれでも行かねばならない」
    「決意は固いか…では我らのエルブストに乗るがいい。岩場を走るよりは早く着くだろう」
    「感謝する」
    「構わん。よい結果になることを願っている」

    ------------------------------------------------------------------------

    エルブストにまたがり、海賊の住処に向かう。
    見た所あまり人がいないようだ。
    サボっている見張りを殺し、武器を頂戴する。

    酒盛りをしている海賊たちをかわしながら、一通り住処を探索していく。
    離れの小屋に何人か閉じ込められているのを見つけられた。
    ここからなら退路も困らなさそうだ。看守を始末し、牢の鍵を開けていく。

    「鷹彦っ!」
    小声で呼びかけるが反応がない。
    ……?魂が随分濁っているような…
    違和感は感じたが、ひとまず脱出を優先しなければならないと鷹彦を肩に担ぎエルブストの元に戻る。

    「ん…兄さん?」
    「気づいたか。立てるか?」
    「あぁ…ちょっとぼーっとするけどな」
    少し足元は覚束ないが、鷹彦には看守が持っていた武器を渡しておく。
    「脱出するぞ」
    「何言ってるんだ。兄さん」
    鷹彦が立ち止まり、急に私の腕を強く掴む。
    「俺たちはここでずっと暮らすんだろ?水神様に歯向かうやつを殺して、水神様の為に生贄とクリスタルを集め続けるんだ」
    鷹彦の眼はどこか虚ろで、私の顔を見ているつもりなのだろうがどこにも焦点があっていないようにも見える。
    「鷹彦?おぬしこそ何を言っているのだ?」
    「兄さん…兄さんはもしかして水神様の祝福を受けてないのか?駄目じゃないか。あぁあんなに素晴らしいものを知らないなんて、兄さんもスグにわかるさ。さぁ兄さんも水神様の祝福を受けに行こう。兄さんも何も考えなくていいんだ」
    「鷹彦っ!?しっかりせんか!」
    鷹彦の腕を振りほどこうとするも、私よりも力の強い彼の手は中々解けない。
    「兄さん…大人しくしていてくれよ」
    腹に蹴りを入れられ、朦朧としている所に腕に力を入れられる。
    「がぁっ…!」
    腕から鈍い音がし、そのまま引きずるように引っ張られてしまう。

    「おーい、お前ら!新しい生贄だ!」
    鷹彦の呼びかけに応えるように海賊たちが集まってくる。
    よくよく見てみるとこの海賊たち、今の鷹彦と同じ様な魂の状態だ。
    なんというか程度の差はあれど濁っていると言うか…
    とにかく状況はわからないが、任務は失敗だ。私一人だけでも脱出しなければならない。
    だが海賊たちに囲まれているだけでなく、鷹彦に捕まったままで、片腕も動かす事もできない。

    万事休すか…と思ったその時、突然海賊の一団が爆発に巻き込まれ消し飛ぶ。
    「なんだなんだ!?」
    爆煙で視界が塞がれたが、立て続けて起こる爆発で混乱している海賊たちの声がどんどん消えていく。
    無差別か?どちらにしろ巻き込まれてはかなわない。

    物陰に隠れ様子を伺っていると爆煙の向こうに一人の男の姿が確認できた。
    向こうも気がついたようだ。こちらに向かってくる。
    「てめぇらも海賊の手先か?」
    同族だろうか?ひんがしの国ではあまり見かけなかったが、私と同じ耳と尻尾を持っている壮年のミコッテが私たちの前に立ち塞がる。
    男は杖を片手に私と鷹彦の姿を交互に見ている。
    「アンタは捕まってんのか?横のヤツは…もう手遅れみてぇだな」
    そう言うがいなや男は鷹彦に向け魔術の詠唱を始める。
    「ちっ…」
    鷹彦は私を男に向けて蹴飛ばし、アジトの奥に逃げていく。
    「おっと…」
    男に受け止められなんとか体勢を立て直す。
    私の腕に気づいた男は簡単な応急手当てをしてくれた。
    「他に拐われたヤツはいたか?」
    「無事な者はいない…皆海賊たちと同じような魂の状態だった」
    「てめぇ…視えんのか?」
    男の質問に黙って頷く。
    「歩けるな?ついてこい。安全な場所に行くぞ」

    「ここまで来れば問題ねぇな」
    男が立ち止まったのはエルブストに降ろされた所、海賊の住処から程よく離れている場所だった。
    「すまない。礼を言う」
    「仕事で来ただけだ。別に礼を言われるような事はしてねぇよ」
    「あれは何なんだ?彼らはなんというか魂が普通と違うというか」
    「知らねぇのに視えてんのか…仕方ねぇな」
    男は口の悪さとは裏腹に丁寧に説明をしてくれた。蛮神の事、テンパードの事、サハギン族の事、今リヴァイアサンが降ろされており別働隊が討滅に当たっている事、男は拐われた生き残りを助ける任務で動いている事。

    男と話し込んでいるとにわかに周囲が騒がしくなってきた。
    「ちっ…またザコが湧いてきたか」
    「こっちだ。私が侵入に使ったエルブストがいる」
    「は?てめぇ拐われたんじゃなかったのかよ」
    「違う。私は拐われそうな所を友好的なサハギン族に助けてもらった」
    「ってかコイツ一人乗りじゃねぇのか?」
    「試しに乗ってみるか…」
    「バカ野郎。怪我人だけ乗れれば十分だ。俺は一人で帰れる」
    「そうか…最後に名前だけでも聞かせてくれないか?」
    「…虎雪」
    「虎雪殿、感謝する。貴方のお陰で命拾いした。私の名は一烏だ。また会おう」
    「はっ…そうそう会う事もねぇよ」
    悪態をつく男を見送りながら、私はエルブストに乗り元のサハギン族の棲家に戻った。

    ------------------------------------------------------------------------

    ウルダハの街並みはどうにも落ち着かない。
    気候もそうだが、時たま街の人が私を見る目になんとも異色なものを感じる。
    とは言え、目的の人物がいるのだから我儘も言ってられない。
    目的地のドアをノックする。暫くすると無愛想な男が出てきた。
    「てめぇは確か…」
    「久しぶりだな虎雪殿。今日は礼の品を持ってきた」
    そう言いながら布で包んだ触媒を見せる。
    「いらねーよ」
    「いいのか?探していたのではないか?他にも欲しがっている輩がいると聞いていたがな」
    「チッ…幾らだ?」
    「礼の品と言ったはずだ。貴方がこれにお金を払う必要は無い」
    「いらねーっつってんだろが、確か相場はこれくらいだったな」
    そう言って男は私に無理やり金を渡してくる。
    「いや、それを受け取る訳にはいかない」
    「だからそーいうのがいらねーっつってんだよ!」
    「埒があかないな…」
    ふと男の工房を見回すと色んな魔術の触媒やクラフト道具が散乱していた。
    「ではこうしよう。もしかして貴方は魔術やクラフトで貴重な素材が必要なのではないか?何でもと言う訳にはいかないが、もし私に定期発注してくれるなら、この触媒は契約の特典にお付けしよう」
    「チッ…押し売りみたいな真似しやがって…じゃあめんどくせぇが、それで手を打ってやるよ」
    男は少し考えて触媒を受け取る。
    「リスト作ってくるから待ってろ」
    男は面倒そうに工房に入っていき、暫しの後手にしていたリストは存外丁寧な字で作成されていた。

    ------------------------------------------------------------------------

    今日は少し遠出をし、ウルダハのとあるお得意様の所に足を運んでいる。
    「やぁ虎雪殿」
    「おぅ、てめぇか」
    「今回の注文分の触媒だ。いつもの場所に置いておけばいいか?」
    「頼んだ」
    彼の工房に足を運び、いつもの場所に触媒を並べておく。
    少量であれば使い魔に運ばせる事も多いのだが、数が多かったり
    転送魔法で運ぶと効能を失ってしまうような繊細な触媒などはこうして私が直接運んでいる。

    「あと例の魔具、調整しといたぞ。確認しといてくれ」
    「あぁ、いつも助かる」
    定期的にメンテナンスをお願いしている魔具、
    鷹彦のエーテルの状態を本人でも正確に視認できる魔具を机の上から回収した。

    「あぁそうだ。実は最近ラノシアの方で新しいダンジョンが見つかってな。さっと覗いてみたんだが、どうやらエーテル濃度が濃い様で魔法の仕掛けがありそうなんだ」
    「へぇ、そうかい」
    虎雪はまるで興味が無いとばかりに顔も向けずにつっけんどんに答える。
    「私自身、魔法の才がある訳ではないので、専門家の虎雪殿の力を借りれると心強いんだが」
    「ちっ…てめぇが嬉しそうに話をする時は遺跡やダンジョンの話ばっかり持ってきやがるな」
    呆れた口調で文句を言いながらこちらに向き合った虎雪は言うほど嫌そうな顔はしていない。
    「いやはや、数少ない私の娯楽でな。大目に見て欲しい」
    「やれやれ、いい趣味してるな全く。気ぃ抜いてポックリ逝っちまう冒険者だっているんだぞ」
    「ははは、そうならない為に虎雪殿の力を借りているからな。礼を言う。やはり貴方の助けがあると心強い」
    「ちっ…別に俺は実益があるからついて行くだけだ」
    ふんと鼻を鳴らし虎雪はまた背中を向ける。
    とにかくこれで探索も捗りそうだ。次の休日が楽しみになってきた。
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