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    鴉の鳴き声

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    鴉の鳴き声

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    鷹彦さんがジョウ君に刀術を教える話
    区切りはついた感じ。気が向いたら書き足すかも

    鷹の刀剣講座「鷹彦に刀術を教えて欲しい?」
    「あぁ、刀術は元々クガネで友達に教えて貰って、後は我流で練習してたんだけど、最近伸び悩んでいて…
     もしよかったら鷹彦さんに教えて貰いたいなって…」
    俺は兄さんの方を見る。兄さんは好きにして構わないと目で答える。
    「俺の刀は人斬りの型だよ。君たちみたいな冒険者にどれだけ役立つかは何とも言えないなぁ」
    「相手を倒すという意味では考え方に通じるモノもあるだろう?それにお前は中々の使い手と聞いているぞ?」
    横からルトゥさんが口を挟んでくる。
    「買い被り過ぎですって。仮にルトゥさんと戦ったら瞬殺ですよ?」
    「ほほぉ、言うな」
    「いやいや、俺が、ですよ」
    「では今試してみるか?」
    ルトゥさんがニヤリと笑う。
    「勘弁して下さいって」
    冗談で槍を手に取り、すぐにでも手合わせをしようかとする勢いのルトゥさんをなんとか押しとどめる。
    正直面倒なので勘弁願いたいところではある。

    「おれは少しでも強くなりたいんだ。鷹彦さん、どうか教えて下さい!」
    ジョウ君は俺たちに頭を下げてくる。さて、このいたいけな子はどうしたものやら。
    兄さんはどちらでもいいみたいだが、顔では教えてやったらどうだと言っている。
    「はぁ…しょうがないな。じゃあまずはお試しでやってみようか」
    「やった!お願いします!」
    ジョウ君は嬉しそうに俺の手を握ってくる。
    「鷹彦。やるからには手を抜くなよ」
    兄さんに釘を刺されてしまった。

    ————————————————————————————————————

    俺はテレポの魔法が使えない為、週に何日か泊まり込みで教える事になった。
    その間の滞在費用などはジョウ君持ちだ。

    さて、どんな風にしごいて見せようか。
    できれば早くに音を上げてくれた方が楽なのだが、あまり手もかけたくない。
    だが、兄さんに釘を刺されてしまった以上手も抜けない。
    というか兄さんがルトゥさんに何か言っていた様だから油断しているとルトゥさんに刺されかねない。

    「よろしくお願いします!」
    ジョウ君は丁寧に頭を下げてくる。
    「はい、よろしくね。まぁ俺の訓練はそんなに堅くするつもりはないし、肩の力抜いて気楽にいこうか」
    「は、はい!」
    「さて…」
    俺は周囲を見渡す。

    「あ、訓練用の木刀は準備してきました」
    ジョウ君が木刀を持ってきてくれた。
    「あー…まだ暫くは要らないよ」
    「え?」
    「最初は基礎体力の訓練からかな。木刀は後で使うよ」
    そう言いながら俺は軽くストレッチをして身体をほぐす。
    「じゃあよく見てるんだよ」
    俺は軽く助走をつけて、木々を蹴り上りながらルトゥさんとジョウ君が住んでいるハウスの屋根に登る。
    「ジョウ君もおいでー」
    屋根の上からジョウ君に向かって手を振る。
    ジョウ君は木刀を抱えたままぽかーんと俺の方を見ている。
    「は、はい!」
    気を取り直したジョウ君は木刀をおいて慌てて俺が最初に蹴った木に登り始める。
    「俺が使ったのと同じ木じゃなくて、ジョウ君の登りやすい木でいいよー」
    だが木登りは不慣れなのか、かなり時間が掛かりそうだ。

    俺は屋根の上から周囲を見渡した。
    黒衣森の一角、ラベンダーベッドは木々に囲まれ空気が澄んでいる。
    当たり前だが、普段暮らしているリムサロミンサとは違い潮の香りはしない。
    たまにはこういう空気もいいかもしれない。
    俺は新鮮な空気を目一杯吸い込みながら屋根の上で微睡み始めた。

    ————————————————————————————————————

    少し日が傾き始めた頃、目を覚ました俺はジョウ君の様子を確認する。
    ジョウ君は居眠りする前とあまり変わらない高さで右往左往していた。
    「調子はどうかな?」
    俺は屋根から飛び降り、肩で息をしているジョウ君に声をかける。
    「ぜぇ…はぁ…は、はい…」
    「あ、もしかしてずっとやってたの?ごめんね。疲れたら俺みたいに休みながらやっても全然大丈夫だよ」
    「いえ…はぁ…はぁ…少しでも、早く追いつきたくて…」
    「若いねぇ。でも無理は禁物だよ。今日はもうおしまい」
    俺はそう言ってハウスに入る。
    普段から使われているのであろうキッチンは小綺麗に片付いている。
    丁度サンレモンと蜂蜜があったので、水差しに作った塩水に垂らしてやる。

    「はい、どうぞ。汗沢山かいたから塩分補給しないとね」
    「ありがとう」
    「一休みしたら、夕食の買い出しにでも行こうか。今日はルトゥさんもご飯は一緒なのかい?」
    「うん、今は依頼中だけどご飯までには戻ってくるって」
    「なるほど、じゃあ丁度いい時間に戻ってこれるかな」
    ジョウ君が水を飲み終わるまで俺は適当に外出の準備をしておく。


    「当たり前だけどやっぱりリムサロミンサとは品揃えが違うね。リムサロミンサだと魚が中心だからね」
    俺はグリダニアの市場を見回しながら必要な食材を買っていく。
    「グリダニアは精霊の声を聞きながら、森の恵みを享受しているからな。野菜や穀物がやっぱり多くなるかな」
    「ふーん…精霊かぁ。なんか大変そうだねぇ」
    「まぁそれもここの大切な文化だしね」
    「じゃあグリダニアに合わせた料理にしますかね」
    「鷹彦さんは結構料理作るんだな」
    「そうだね。俺も兄さんも困らない程度には作れるよ。俺の方がよく作ってるかな?やっぱりおいしいご飯は心を豊かにしてくれるからね」
    「へぇーちょっと意外だ。料理こそめんどくさがると思ってた」
    「ははは。まぁこういう事に時間がかけられると人生にゆとりがあるなーって思えるじゃん?」
    「ふぅん?よくわからないや」
    「まっ、個人の考え方だよ。兄さんには料理には手をかける分、他は手を抜きすぎるって言われてる」
    俺は笑いながら市場に並んでいる食材を選んでいく。


    食材を買い終えた俺たちはキッチンに並び、晩ご飯の準備をしていた。
    「ただいま」
    「おかえりなさい、ルトゥさん。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも…ジョウ君?」
    「お前…開口一番くだらん事を言うな。先にシャワーで軽く汗を流してくる」
    呆れた口調のルトゥさんは装備を解き、浴室に向かっていく。
    「チャンスじゃん、覗いてこないの?」
    同じくルトゥさんを迎えたジョウ君に囁く。
    「ルトゥは寝る時は裸だからね。無理して覗かなくてもいくらでも堪能できるし、たまに一緒に入ってるし」
    「あっ…そうなんだ…」
    まさかの答えだった。エオルゼアではよくある文化なのだろうか?
    ふとジョウ君の方を見るとルトゥさんの装備を片付けている。
    なんと真面目な…と思っていたが、少し様子がおかしい。
    「すぅー…はぁ…あぁやっぱりいいなぁ。今日のルトゥの臭いも」
    「ジョウ君、ジョウ君?何やってらっしゃるの?」
    「え?」
    「え?じゃなくて」
    嗅いで当たり前のような反応が返ってきて、むしろ自分の感覚の方がおかしいんじゃないかと思えてきた。
    なんなら兄さんも同じような事をしている。ここまで開き直ってはいないが。
    「あっ…俺ルトゥの臭いも好きで…冒険の後の装備の臭いは堪らなくてさ」
    ジョウ君はもじもじと恥じらう様子…は特になく、サラッと当たり前のように言ってのける。
    「あっ、そうなんだ?ふ、ふぅーん…」
    正直ここまで純粋にまっすぐ言われると逆に返す言葉に困る。
    兄さんのように恥じらいでもあれば、面白おかしくからかったりもするのだが…
    まぁ二人の関係にわざわざ水を差す必要も無い。
    俺はこれ以上は気にしないように晩ご飯の準備に取りかかる。

    晩ご飯の準備ができた頃、ルトゥさんも丁度シャワーから戻ってきた。
    「これは…なんだ?卵焼きのようだが…」
    「あぁこれはだし巻き卵ですよ。今回の味付けは甘くしたやつです」
    「ほほぉ…中々器用なもんだな」
    そう言いながらルトゥさんは口に運んでいく。
    「…うまいな」
    いつも通りの仏頂面だが、耳がとても元気に動いている。
    この辺りは兄さんと同じくミコッテ族の避けられぬ習性なのだろうか。
    「うむ…これは…」
    そう言いながらルトゥさんはひょいひょいとだし巻き卵を一口、また一口と口に運んでいく。
    「む、もう無くなってしまったぞ」
    「そりゃ食べたら無くなりますよ」
    俺は笑いながら皿を引っ込める。
    「そうか…」
    耳がぺたんと倒れてしまった。
    「はは、気に入ってもらえて何よりです。また機会があれば作りますよ」
    「頼む」
    淡々と答えているが、ルトゥさんの耳は嬉しそうにまたピコピコと動き始めた。
    完全に兄さんと同じタイプである。ちょっとかわいいなと思ってしまった。

    ————————————————————————————————————
    「じゃあ折角木刀も用意してくれたし、今日は少し握ってみようか」
    「はい!よろしくお願いします!」
    「はい、よろしく。元気だねぇ。昨日の疲れは大丈夫?」
    「筋肉痛が少し残ってますけど、大丈夫です!」
    「いい事だね。まぁ今日はあまり根を詰めない訓練にしようか」
    今日はルトゥさんも見学している。
    特に口を挟むつもりはなく黙って見ているが、流石に手を抜きにくい。

    「今日の訓練は至ってシンプル」
    そう言って俺はギル硬貨を取り出す。
    「これを合図とともに空中に弾くから地面に落ちるまでしっかり木刀を落とさない様にしてね」
    「え?それだけですか?」
    「それだけ。じゃあやってみようか。3,2,1…」
    硬貨が宙に舞ったその一瞬でジョウ君の手元を打ち、木刀をはたき落とす。
    「痛っ!?」
    「ほぉ…」
    「はい、おしまい。駄目だよ、ちゃんと握ってないと。実践だったら身体ごと真っ二つだったよ」
    「全然太刀筋が見えなかった…」
    「今度はジョウ君が俺にやってみて」
    「はい!3,2,1…」
    ジョウ君も同じように硬貨を弾き、俺の手元を狙ってくる。だが俺は難なくその太刀を受け流す。
    「はい、おしまい。残念。悪くはないと思うけどね。緊張してるかな?もっと身体全体の力を抜いてリラックスした方がいいよ」
    「はい…こんな感じですか?」
    「そうそう、さっきよりいい感じだよ」
    「もう一度お願いします!」
    「熱心だねぇ。じゃあ交代しながら何回かやりますか」

    「はぁ…はぁ…」
    「そろそろ休憩にしよっか」
    「いえ、まだもう少し…」
    「駄目だよ。もう息も絶え絶えじゃないか」
    代わる代わる短時間の打ち合いを繰り返し

    「ルトゥさんから見てどうですか?俺たちの太刀筋の違い」
    熱心に俺たちの様子を見ているルトゥさんに声をかける。
    「そうだな。鷹彦の方は本当に流れる様に刀を振るうな。無駄も無くジョウの力を利用して太刀を滑らしている。
     ジョウの方は最初よりは緊張もほぐれているが、まだまだ全体的に力が入ってるんじゃないのか?
     後、鷹彦の太刀筋を真正面から受けすぎているように思う」
    「えぇ…結構力抜けてると思ったんだけどな…はぁ…はぁ…」
    「もっと力が抜けていれば今みたいに呼吸が荒くなる事も無いさ。まだまだ特訓のし甲斐があるな」
    ルトゥさんは笑いながらジョウ君に発破をかけている。

    「さて、見てるだけでは少し退屈してきたな。どうだ鷹彦、俺と手合わせしてみないか?」
    「えぇ…俺もうヘトヘトですよ…」
    「嘘つけ、汗一つかいてないだろうが」
    「いやいや、ルトゥさんと対峙しちゃうと冷や汗噴き出ちゃって、もう服なんかベトベトですよ」
    「俺たちの手合わせを見るのもジョウにとってはいい勉強になるだろう」
    ルトゥさんは俺の言葉など気にせず訓練用の木の槍を持ってくる。
    「痛いのは勘弁して欲しいなぁ」
    「我慢しろ。後でベネフィラでもしてやる」
    ルトゥさんは槍を構え地面を勢いよく蹴る。
    「おわっと!?」
    俺は慌てて跳躍し、木々の隙間に隠れる。
    「おいおい、逃げるだけじゃ手合わせにならないだろう。かかってこいよ!」
    「これも昨日の特訓メニューだからいいんですよ!」
    「そうかい。じゃあ俺も自由にやらせてもらうぞ!」
    ルトゥさんも同じように跳躍し一気に俺との距離を詰める。
    「俺はやる気ないんですけどね!」
    「遊びみたいなもんだ!付き合え!」
    「はぁ…めんどくさ…」
    俺は木々を飛び移りながら、なぜかやる気満々のルトゥさんから距離を取るが、
    流石に竜騎士の跳躍となると一気に距離を詰められてしまう。
    とは言えこのまま永遠に追いかけっこするつもりもない。
    俺は覚悟を決めてハウスの前まで戻り、改めてルトゥさんと向かい合う。
    「お!?やる気出てきたか!」
    「出てないですよ!」
    俺はルトゥさんと対峙し居合いの構えを取る。
    ルトゥさんもそれに応える様に槍を構える。
    槍相手は懐に入りにくいからやりにくいんだよなぁ
    長期戦はメリット無いし、一か八か短期決戦で強行するか…

    そのまま斬り合うと見せかけて俺は逃げながら確保しておいた木の枝を牽制としてルトゥさんに投げつける。
    「ちっ…抜け目ないな…」
    「ルトゥさん相手にするなら最初から出し惜しみなんかできないですよ」
    「ははっ嬉しい事言ってくれるな」
    木の枝を払う槍の死角に潜り込む様に俺はルトゥさんの懐に飛び込む。
    「もらった!!」
    「ふん…木の枝くらい多少我慢すれば…」
    だがルトゥさんは直前で枝を払うのを止め、腕に傷を貰いながら懐に飛び込んだ俺に槍を突きつけた。
    お互いの喉に木刀と木の槍が同時に届く。
    「…」
    「引き分けか?」
    「ルトゥさん、どさくさ紛れに引き分けにしないで下さいよ。普通に投げナイフだったらこうはならなかったですよね?」
    「そうか?ナイフくらいならそのまま受けたぞ」
    「俺、普段投げナイフには強めの毒塗ってるんですよね。これ知ってたらルトゥさん最後までちゃんと払ってたでしょ」
    「そうだな。知ってたら払ってたな。だが今の手合わせでは知らなかったからな。やはり結果は変わらないさ」
    「兄さん秘蔵の痺れ毒ですよ。槍なんか持ってられないですよ」
    「なんだ鷹彦。お前あれだけ手合わせ嫌がってた癖に意外と負けず嫌いだな。ははは」
    「いや別に…兄さんが手を抜くなって言ったからですよ」
    俺はばつが悪い様子でルトゥさんから目をそらす。
    「ははっお前がそこまで本気を出してくれたのは嬉しいな。俺はまだ手持ちのカードはあったんだがな」
    「はぁ…もういいですよ。逃げ回りすぎて、汗かいちゃったよ…参ったな」
    「いい事じゃないか。スッキリするだろう?」
    「俺はそんなに熱血キャラじゃないんですけどね」
    「手合せにキャラも何もないだろう。ジョウ!どうだ?何か感じるものはあったか?」
    「え!?二人とも早すぎて全然見えなかった…」
    「そうか!じゃあジョウが見える様になるまで何度も手合せしないといけないな鷹彦」
    ルトゥさんは笑いながらこちらを見てくる。
    普段は仏頂面なのに意外と好戦的だったんだな…いやコレは単純に訓練が好きなタイプと見た。
    「駄目ですよ。ジョウ君もちゃんと身体動かさないと。見てるだけじゃ永遠についてこれないですから」
    俺はため息交じりに答える。それに何度もルトゥさんと手合わせなどしたくもない。

    ふとジョウ君の方を見ると、少し鼻をヒクヒクさせているように見える。
    え?今臭い嗅ぐところ?
    なんなら俺の方も嗅いでるような感じがする。
    ジョウ君…意外と節操無いな…
    俺は少し呆れながら庭の椅子に腰掛ける。
    「もう、今日はおしまい!後は自主練にしよう。うん」
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