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    obU_Udo

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    かなり中途半端で拙いですが、以前ひそほまワンドロで描いた向日葵がお題の絵から考えていた書きかけの小説があって、今更ですが書き上げたので載っけました

    描き始めたのが夏なので夏の話です

    流れないでペルセウス「さあ出掛けるよ、密くん」
    そう言って唐突にアリスは立ち上がった。
    午後4時をすぎたというのにまだ太陽はジリジリと頭上を焦がしている。楽しみにしていた新発売のマシュマロアイスもあっという間に平らげてしまって、涼しさはもう何処にもない。寧ろ自分自身がアイスみたいに溶けてしまいそうなくらいだ。
    密は暑い、と出来る限りの面倒臭そうな声色で誘いを断る。
    「でもここに居ても暑いではないか。どうせ暑いなら出かけるのも悪くないだろう?」
    「......面倒くさい」
    どのみち暑いとかそう言う問題ではない。面倒くさいものは面倒くさいのだ。
    密は諦めてくれと言わんばかりにソファの上で寝返りを打って誉に背を向ける。
    すると、後ろからボソっとした呟きが降って来た。
    「....マシュマロアイス、もう一つ買ってあげるよ」
    マシュマロ。そう言われてしまっては誘いに乗らずにはいられない。仕方ない、約束だよ。そう言って徐に密は立ち上がった。




    天鵞絨駅から電車を乗り継いで2、3本。改札をくぐる二人を出迎えたのは、人通りの少ない長閑な街並みとは似つかわしくない真っ赤に染まった空だった。
    ああ、なんと美しい色なのだろう!むむ、ひらめいた!そう言って駆け出して意味不明のポエムを詩い出すアリスは逆光で黒いシルエットになって、赤とのコントラストで余計に目が痛い。相変わらずの蒸し暑さもあって、密は本当に地平が燃えているみたいだと思った。まだ外に出て数分も経っていないと言うのに額や背中からダラダラと汗が垂れていくのを感じる。空調の効いた車内がひたすらに恋しい。
    やっぱり暑い、とアリスのとなりに並んで詩を遮るように愚痴をこぼすと
    「せっかくここまで来たのだからもう少し付き合ってくれたまえ。それにアイス、食べるんだろう?」
    とにっこりと優しい笑顔を向けられる。夕焼けに照らされた顔が少しだけ輝いて見えた。
    誉にそう言われて仕舞えば密は断れないのだからズルい。早く行こうと返してアリスの手をそっと握れば、自分よりほんの少しだけ強い力で手が握り返されるのだった。




    15分ほど歩いた頃には陽がすっかり落ちてしまって、一気に夜が訪れる。ポツポツと建っていた建物たちは次第に姿を消して、あたりは淋しい雰囲気に包まれていった。
    密はまだ行き先を聞いていなかったことをぼんやり思い出しながら誉の横を並んで歩いていると、ふと繋がれた手が動きを止めた。
    「ごらん、密くん。着いたよ」
    誉に促されて顔を上げた先の視界に密は息を呑み込んだ。

    一面のひまわり畑だ。

    月明かりに照らされた向日葵は黄金のように輝いていて、深い藍に良く映えている。煌めく星々も相まって幻想のように美しかった。
    一度畑の中に入って仕舞うと向日葵は今まで密が思っていたよりもずっとずっと大きくて、ものによってはただでさえ平均身長が高い劇団員の中でも長身なアリスの頭さえも簡単に覆い隠してしまう。地平線の更に向こう側まで続いている黄色はまるで海のようで、俺たちは巨大な波に飲み込まれてしまったのだと思った。胸の高さまで背高草に浸かって、このまま何処かへ攫われてしまいそうだ。海の中ポツリと二人だけ。今世界にいるのは俺とアリスの二人だけ。それはなんだかとても恐ろしいようで、それでいて美しいような、しあわせを感じた。
    暫くそのしあわせに浸っていると、ふと誉がポケットから懐中時計を取り出し時間を確認する。密も懐中時計を覗き込もうと誉の肩に顔を寄せていると、遠くの空で小さく一筋の光が流れるのが見えた。
    そろそろだねと誉が呟く。なにが、と尋ねかけたてまた彼方で星が溢れ落ちるのが見えた。それが合図だったかのように、煌めきの尾を引いた流星が少しずつ、地平に向かって大きな空を横切り始める。

    きらり。きらり。
    ほらごらん、美しいだろう。まるでこの世界が煌めいているようだ!
    興奮気味に話す誉の瞳は星と日廻りに照らされ一層輝いて見えた。
    二人は暫く無言で星々が散っていくのを見つめていた。流れ星が彼方まで届く度に赫きの残骸が日廻りになっていくような錯覚を起こす。
    アリスが今私たちのいる場所はまるで遠い宇宙の一部みたいだね、と口にして本当にそうだなと思った。俺とアリスを囲んでいる向日葵たちも、いつかの流星だったのだろうか。
    ぼんやり考えていると誉が嗚呼、詩興が湧いた!とまたヘンテコな詩を詠み始めて急に現実に戻される。煩いアリスを横目にやっぱりしあわせだなと思った。

    ふと、一際大きな瞬きがぴかりと擬音が聞こえそうなくらいの眩しさであたりを青白く照らし出した。一等級のボーライド。目が眩むような明かりはスーっと長い糸を引いて日廻りをギラギラと耀かせるようにしながら彼方へと吸い込まれていった。



    世界の終わりが見えた気がした。
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