桜遥の宝物一年生も終わりに近づき、三月になりクラスが持ち上がり実感が湧かないとは言え、教室は変わる為淋しくなるなと仲間と言い合う日々である。梅宮達三年も卒業し、次は桜が総代として覚悟を決め待ち望む中で、副級長と付き合う桜も高校生の男の子である為に、そういう事もしたくなる。蘇芳は見回りが無い日にそういう事ををする為に、週に三回程度桜の自宅に泊まり遠の昔に付けたカーテンを閉めそう言う所謂セックスを行うのである。
今日も蘇芳が押し倒す中で、何か言いたげな顔で桜を見ている為に桜も久しく見る事は無かった蘇芳のその様な顔に内心驚くも、蘇芳が動かない儘押し倒している為に痺れを切らした桜が問い掛ける事になった。
「おい、蘇芳、何か言いたい事あんのかよ」
「顔に出ていたかい?桜君に見破られるなんて思わなかったよ。然しそこまで顔に出る程悩んでいたのか」
「何に悩んでんだよ」
途端、蘇芳は蠱惑的な笑みを浮かべ問い掛ける。悪魔の様なその表情は堕落を誘う様に桜に手を伸ばす。
「んーねぇ桜君の事孕ませて良い?」
「は、孕ま!!はっ!?!?」
「桜君今夜だよ」
「お、お前が変なこと、い、言うから…」
「抑々桜君が孕むなんて言葉を知っていたのが驚きだよ」
蘇芳の揶揄いに顔を真っ赤に染め、顔を逸らす桜が小声で呟く。それを蘇芳は楽しげに見ていた。
「は、孕むってあれだろ…赤ちゃん作る事だろ…」
「知ってたんだねぇ。良く出来ました」
響かない大きさで手を叩く蘇芳に、桜は殴り掛かろうとするが瞬間真剣な表情に成る蘇芳に、桜も戸惑うも見つめ返した。
「桜君は魅力的だから、色々な人と仲良くなる度に焦るんだよ。桜君がそんな人では無いのは知ってるけど、何時かオレの他に好きな人ができた時にはもう君を手放せない…だから確かな絆が欲しい。僕と桜君の血を継いだ子供が欲しいんだ」
桜は蘇芳の初めて見る真剣な表情に、桜も同じ様な事を思っていた事を思い出す。女の子に人気がある蘇芳に何時か別れを告げられるのでは無いか、その様な時は桜は大人しく身を引くが一生蘇芳を引きづり恋愛等出来ないだろう。そう思う程桜は初めて出来た大切な相手だった。
だからこそ子供が欲しいと思ったが、それだけでは無く蘇芳との子供は絶対可愛いだろうと、自分と蘇芳血を継いだ初めての愛しい子を見たくなった。だからこそ桜の返事は一つだけである。
「いいぞ……オレも同じことで悩んで、たし……そのお前の子なら可愛いだろうから、な」
桜の言葉に蘇芳への深い愛を感じ、蘇芳は思わず抱きしめ返す。肩に顔を埋め強く、壊れ物を扱う様に抱きしめる蘇芳に桜もぎこちなく抱きしめ返し、優しく背を撫でる。
暫く抱きしめ合い、途端蘇芳が顔をあげ桜を見つめて来た。潤む桜の瞳と蘇芳の熱の篭った燃える様な瞳は、自然と合わさり軈て唇が重なり合う。繋ぎ合わせた掌を強く握られるのを合図に乱れ合う。夜はまだ始まったばかり、二人の夜も深まるに連れ幸せな心地になるのだろう。
二週間後
桜は最近良く食べた。商店街の人達から貰う食べ物を一日で食べきってしまう程に腹が減るのだ。桜は大食いでは無い。体幹食の友人は複数居るが、彼らの様に桜は食べるわけではない。では何故この様に腹が減るのだろうと疑問に思う中、普段一緒に食べている四人も同じ事を思っていたのか、桐生を初めて楡井が問いかけてきた。
「うわぁ〜桜ちゃんよく食べるね〜」
「桜さん最近食べる量増えましたよね?それと体重が少し増えた様な…けど太ったわけでは無くて……何故でしょう」
楡井の言葉で答えに行き着いた桐生が蘇芳の方を向き、いつもの笑顔の儘何処か嫌そうに問い掛ける。
「すおちゃんまさか…無いよね?」
「どっちだと思う?」
「それ答えじゃん」
桐生と蘇芳のやり取りに疑問符を浮かべる柘浦と桜だが、楡井が答えに行き着き慌て桜へと問いかけた。
「さ、桜さん!蘇芳さんと行為をしたのはいつですか!?」
「何でそんなこと聞くんだよ!!」
「必要だからです!!で!いつですか!!」
この様になった楡井は誰にも止められない為に桜は大人しく顔を染め答える。
「に、二週間前……」
「沢山食べる以外に変化はありますか?」
「あー甘い物がダメになった。酸っぱい物ならイケるんだけどな」
楡井はメモを下為閉じると興奮した様に告げる。
「桜さん病院行きましょう!」
「病院?何も悪い所はねぇぞ」
「悪いとかじゃないです。桜さんは妊娠してる可能性があります!!」
楡井が大声で叫んだ言葉に、各々話しながらも桜達の話に耳を傾けていたクラスメイトは、楡井の叫んだ言葉にクラスが一気に静まり返る。
「に、妊娠!?楡井何でそうなったんや!?」
「あ〜やっぱりかぁ。まぁそうだよねぇ」
「桐生君は察してたけど、にれ君まで答えに辿り着くとは思わなかったよー」
「嘘ですよね…」
桜は周りの状況に着いて行く事が出来なく、呆けた様に口を開け、一拍置いて妊娠て言葉を受け入れた。
「……妊娠」
「桜君とオレの子ならきっと可愛い子が生まれるよ。オレは桜君似の子供の方が良いけど」
「確かに蘇芳さんに似た顔で性格も蘇芳さんなら怖いですよね…」
「すおちゃん2号とか悪夢のようだなぁ」
「桐生君、にれ君」
「ひえっ!?なんでもないです!!なんでもないです!!」
「すおちゃんそんな起こらないでよ〜ね、桜ちゃんはどっちに似た方が良い?」
突然桜に飛んできた質問に、桜は驚いた猫の様に肩を跳ねさせ視線をウロウロと彷徨わせると答える。
「どっちでも産まれてくるのに変わりはねぇけど…蘇芳に似てたら…と思う」
その桜の言葉から、クラスメイトはどっちに似てるかやら、子供ってどう育てるんだ、やら学校来ながら育てるなら皆で育てる訳だろや、クラスメイトはもう桜の子育てに関わる気満々である。個々まで来たら桜の家に押し掛けて迄育てそうな程にクラスが盛り上がる中、桜は腹に手を当てると自然と浮かぶ笑みに、クラスがまた静まり返り桜を見つめる。
各々無音カメラで撮影する等を済ませ、静かな様子に気づいた桜が慌てて怒鳴るのは後三秒後の出来事。
それから桜を無理させないように安定期迄は、喧嘩を必死に抑えられ、桜抜きのクラスでも何とか強敵と言える者は出なく暫く達桜の腹も大きくなり、桜の自宅では不安であるとの事から蘇芳の自宅で暮らし始めた桜は現在身体を無理させない様に学校を休んでいた。
周りの惜しむ声を聞き、蘇芳伝でベビー服やら玩具やらベビーベッド等が沢山届き、街の人達からも身体に良い食べ物等が沢山届いている中で、桜は現在蘇芳と隣り合わせで座り腹を撫でていた。
「桜君のお腹も大きくなったね」
「あぁ…時折蹴り返して来たりする」
蘇芳が桜の腹を一つ撫でると、並び座るソファから立ち上がると床に膝を着き桜に問い掛ける。
「お腹の音聞いて良いかな?」
頷く桜に蘇芳は腹に顔を寄せ音を聞く。元気に腹を蹴る音が聞こえ、蘇芳は耳を話すと楽しげに笑った。
「桜君に似た元気な子だねぇ」
蘇芳の幸せそうな笑みに、桜も綻ぶ様に笑い隣に座る蘇芳と共に生姜茶を飲んだ。妊婦には良いと蘇芳が買ってきた茶は、桜の好みの味で蘇芳が桜の好みを知っている事等彼にとっては当然の事なのだろうなと思うと、少し怖い様な嬉しい様な気分になった桜は今現在蘇芳に甘やかされている。
家事も粗蘇芳が済ませ、桜は洗った皿を拭く程度しかやる事が無いが全くやらないのも身体に良くない為蘇芳が、用意した事だ。
身体を動かす為に行く散歩にも蘇芳が同伴し、街の人にも偶然合う同級生や四天王に梅宮に二年の梶達や、別件で十亀や棪堂等も会う事もある等、桜が散歩をする時は色々な人と関わり暫くすると蘇芳が身体に障るからと引き上げるのだ。その度何か言い合いをしているが、桜は構わず楡井や桐生と話しその時間は待ち、毎回蘇芳が言い任し切り上げ桜と共にもう蘇芳の自宅と言うよりは、二人の家に帰る事なる。
そして同じベッドに入り桜を背後から抱きしめ眠りに着く。時折、お互い我慢が効かなくなると交合うが激しく成らない様に気を付け、その様な穏やかな日々が続き、やっとこの日が来た。
「生まれました…!元気な男の子と女の子の双子です!」
桜の隣に寝かされた二つの命に痛みに耐え産んだ我が子達を見つめ愛しさが沸く。
「ありがとう…産まれてきて……」
そう呟いた桜は気づいたらベッドで眠っていて、ゆるりと目が覚め首を横に向けると蘇芳が手を握り桜を見ていた。
「桜君!起きたの」
「どれくらい寝てた」
「半日くらいかな…身体に負担はないかい?」
「尻が痛えくらいだ」
「それはそうだよね」
蘇芳はふと笑みを浮かべると幸せそうに笑う。
「桜君、頑張って体張って凄く辛かったと思う。だけどオレ達の子供産んでくれてありがとう」
蘇芳の言葉に綻ぶ様な笑みを浮かべた桜は、くふくふと幸せそうに笑うと蘇芳へと告げる。珍しく顔を赤くしない姿に蘇芳は目を開くと、桜が言葉を告げた。
「なんだろうな。蘇芳にそう言われて素直に受け入れられるぐらいには、気分がいいんだよ。何でだろうな」
桜の言葉に蘇芳な思わず掛け布団ごと抱きしめると、桜も背に手を回す。暫く抱きしめ合い離れると二人は自然と笑い合い、今二人の考えている事が自然と分かりあった。
只管幸せだと言う事を。
桜が総代として復帰し、クラスメイト全員での子育ては初めての事に泣き叫ぶ子供に慌てていたが、二ヶ月もすると慣れて来る者もいて双子な為にやる事も二倍な為分担はするが、基本気づいた者が子育てをしている。
その中で主に桜と仲良い桐生に楡井と柘浦が子供と関わる事が多く、次いで杏西達が助けてくれる事が多く、その他のクラスメイトにも構われる子供達はすくすくと元気に育っていた。
二人きりの部屋で布団へと入り温める様に足を絡ませる蘇芳と桜は、今日は気が利かせた楡井が子供を預かると言いその言葉に甘えた桜が預けたのだ。だから広い家に蘇芳と二人きりで、桜は蘇芳と向き合い顔を見合わせていた。
「何だか怒涛の日々だったね」
「大変だったな」
「けど悪くないと思うんだ」
「子育ては大変だけど…アイツらが手伝ってくれるから、元気に育つ子供達を見て幸せだと思うんだ」
蘇芳が笑顔で笑う表情に、桜は顔を染め視線を逸らすと突然上に乗っかる蘇芳に押し倒される。
「はぁ!?今そんな空気じゃねぇだろ!!」
「それはそれだよ桜君。久しぶりだから我慢出来ないかも」
「……おれも」
桜の言葉に真顔で目を細めた蘇芳に気づくことなく桜は言葉を続けた。
「オレも…我慢できねぇ……」
蘇芳は瞬間唇へと噛み付く様なキスをし、舌を捩じ込み開けると息つぐ暇すら与えない激しく混ざり溶け合う口付けを進めてゆく。
唇が離れ蕩けた桜に、蘇芳は青い高音の炎が轟々と燃える様に熱の点った瞳で告げた。
「煽ったは桜君だ。今日は抱き潰す」
蘇芳の言葉に桜は残る理性で、何処かで自分は間違えたのだろうと思いながら楽しみに思う桜もいた為に、蘇芳の背中に手を回し不敵に笑い告げた。
「望むところだ」
その日の夜は過去最高と言う程に激しく混ざり合い、蘇芳のプレイが激しかった事だけを記すとく。
蘇枋隼飛は眠る子供達の傍に寄り思う。
可愛い桜と自分の子供達、半分蘇芳の髪で半分は黒と白を二人で分け合った自分に似た子と桜に似た子には愛はある。だがそれとは別に桜へと繋ぐ印になる子供達は、桜へと足枷を付け鎖に繋いだ様なものだ。桜は子供を見捨てられない性格だ、そしてその鎖は蘇芳の手の中にある。
可愛い可愛い愛する子供達、桜への楔になる事を心から歓迎するよ、と蘇芳は内心呟くと子供達の柔い頬を片方で撫でたのだった。