本と注射機のネックレスが首元で揺れた青空が広がる晴天の空の下、一ノ瀬四季は現在恋人とデートをしていた。
四季の恋人は一回り上の大人であり、四季の愛する人であった。その恋人は教師をしていた過去があり、聖人と呼ばれ生徒に慕われていたのだが一転、戦闘部隊に行き酒と女と煙草に溺れた堕落した生活を送っていた。日夜26人の女の元を往来しては好きなだけ抱き、酒を常に浴びる様に飲みギャンブルに溺れ、人に金を借りた上返す時は別の女から金を借り返す。人として駄目な人間だが、子供に優しく人として一本筋の通った男である。自身の生徒を何時までも思い、無くした数だけ忘れる事無く教師に向いて無いと辞めた優しい人間である彼が四季は大好きであった。
何処でも教師に向いてる彼は、教師を辞めてからは人と一線を置き自身の相棒である大我の他には誰も彼の内側には入る事が出来なかった。彼の女達も大我さえも彼の本当の胸の内には入れずに居ただろう。
その様な日々を過ごしている中、変わる事が無い日々で四季が現れた。四季は彼の胸を動かし、四季が仲間を想い真っ直ぐに救おうとする姿に惚れた彼は四季と付き合いべく、彼を落とそうと慎重に少しずつ四季に悟られること無く狡猾に動き、軈て四季が落ちて来た所で女を全員切捨て彼に告白するのだ。だが彼の返事は保留で絶対に自身が好きな筈である四季が悩みに悩む彼に、調べて行くと他に好きな人が居ると知った。彼は酷く嫉妬しもう一人の男を排除する事を決めたのだが、そうも問屋が降ろさない事態が起きてしまう。
彼の恋敵、即ちライバルは彼の先輩であり鬼の名医である最強の敵で合ったのだ。
話は変わりもう一人の四季の恋人の話になる。
四季のもう一人の恋人は矢張一回り大人であり、元は京都で医者をしていたのだが四季の鬼神の力を見る為に羅刹学園の保険医に就任した。彼は明るく周りを盛り上げるのが上手い、クラスに一人は居そうなムードメーカーの様な存在であった。見た目も性格もチャラ男の様だが、自身の治療には絶対的な自信を持っており、人を治す仕事には紳士で人一倍優しい人間である。彼の同期であり親友の刺青を完成させたくないと願いながら、自身が彫る役目を担い浮かない表情で毎回真剣に彫っていた。
人に気遣え、優しく周りを盛り上げる彼は四季に出会い世界が変わる様な衝撃を受けた。
四季が周りを照らす太陽の様に仲間を想い、導き救う度に彼は周りの仲間に『良いな』と言う思いを胸に抱く様になった。四季が仲間を救う事を傍で見る度に、四季の姿を眩しく想い自分も同時にその太陽に手を伸ばしたくなる。四季手に入れ傍に起きたい、それは一種の恋慕だと気付き四季落とす事を慎重に事に気付かれずに進めた。そして四季が落ちた所で告白をするが保留になり、理由を確かめるべく調べ理解した上で四季に問いかけたのだ。
そして彼等は羅刹学園の一室に四季を呼び出し何方と付き合うのかを聞いた。四季は選べないと言い、彼等は互いに視線を交わした結果、自身達は似た様な性格男である為に考えている事は同じ、四季が望むならと相手を容認する事を決意した。
互いに認め然し四季を独占したい為に殆どは、四季と彼らの一人ずつ相手をし、別々に愛を育んだ。だが彼等も悪戯に四季を翻弄するのに一時期に組む事がある。四季は鬼機関の杉並に行く度時折二人一度に抱かれる事時があるのだ。
その時の彼等愉しげに四季を悪戯げに意地悪く抱き、四季が啼く様子を大人の余裕で笑って見ている。時折スマホで録画をし、四季の痴態を楽しんでは彼等は四季を虐め抜くのだ。
四季は別にその時が嫌では無い。寧ろ彼等に一度に抱かれる時は、普段は干渉し合わない彼等が一様に相手をしてくれる為に幸福な気分が広がり、幸せな気分になるのだ。虐められる事も最近は嫌では無くなり、もっとされたいと思う様になった四季は自身のその様な想いを複雑に想うも、二人一度に愛される事を胸の底から幸せに想い、二人を人一倍愛そうと誰よりも思うのだ。
そんな彼等の名前は鬼機関に所属する杉並区戦闘部隊隊長と、羅刹学園保険医の名医である、朽森紫苑と花魁坂京夜である。四季の大好きな恋人である。
そして今現在四季は二人に挟まれ、睨み合う彼等に巻き込まれた当事者になっていた。
最初に現れたのは紫苑である。杉並に実習として学園から来ていた四季は、久方の訓練が休みの日に紫苑からデートに誘われたのだ。
『やっと見つけわぁ〜四季お兄さんとデートしない?』
『紫苑さん!昨日ぶりだな。何してたん?また女の所にいたの?』
『今の紫苑さんが四季の他に女作るわけ無いと思って言ってるでしょ〜悪い子だな』
そう言われ額を指で輪にしデコピンをされた四季は、額を抑え痛みに蹲り答えた。
『そうは思わないけど万が一があるじゃん』
『酷いなぁ、俺を信じてないなんてな〜』
その様に話す紫苑は目を細め笑い、その悪戯げな笑みで四季の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。四季も目を細め楽しげに笑い暫く享受していると、紫苑が口を開いた。
『それでさ今からデート行かな『四季くん〜今日休みでしょ?デートしよう!』……あ?』
『…………は?』
そして驚いた様に互いに見遣る二人は瞬時に能力が高い故に回転する頭で全てを理解をし、目を細め口角を上げ笑みを深めたのだ。蛇と狐の四季を賭けた勝負のゴングが今振り下ろされた瞬間である。
───現在
「京夜さん譲って下さいよ〜俺が中々此奴と逢えないの知ってるでしょ」
「俺も四季くんと他の所で出歩け無いの知りながらそれを言ってるの?中々島の外に出れないからさ〜」
「俺なんか普段は四季と会うことできないで、羅刹に行く機会も無いですし〜アンタのが此奴といる時間の方が長いでしょうよ。後輩に優しくするのが先輩でしょ」
「俺が何時優しい先輩だった?お前には特に厳しくしてたと思うけどなぁ。けれど四季くんと普段会えるのは認めるよ。けれど島の外に出れない僕にも譲ってくれるべきだよね?」
「アンタ口だけは回るな」
「その言葉そっくりそのまんま返すよ」
瞬間二人の視線の合間に散った火花を見た四季は、内心我が恋人ながら恐ろしく思い二人を見ていた。我ながら恐ろしい恋人を持ったものである。
「…………実は俺四季と約束してたんですよぉ。今回は俺が先でしたね〜だからこれで」
四季の肩を掴む紫苑が平気な顔をしてつく嘘に、京夜も四季の空いてる肩を掴み笑みを深め嘘をついた。
「……俺も四季くんと約束してたんだよねぇ。四季くんから紫苑と約束してた事を聞いてないから僕のが先だよ」
四季は内心約束した覚えの無い約束に恐怖で軽く怯えていた。地下の廊下で繰り広げられている凄み合いに、隊員が遠巻きに見ると去って行くを繰り返す。四季がその遠巻きの中にいる、羅刹の仲間に視線を向け、皇后崎には分かりやすく逸らされ、矢颪は口笛を吹き視線を明後日に向け、遊摺部は眼鏡の淵を抑え視線を下に俯いた。即座に逸らされる視線に内心、アイツら絶対殴ると四季は胸の内で舌打ちし決意を固めるが此処で実際やろうものなら即座に二人が此方にターゲットを向ける為に、その様な恐ろしい真似は出来ない。未だに口論を繰り広げる二人に四季は内心呟いた。
『そんな約束した覚え無いし…怖い…それに徐々飽きて来たな』
───それに本当は二人とデートしたいし
四季は内心呟いた事に笑みを浮かべる。四季の様子に気づいた紫苑と京夜が、四季の方に顔を向け疑問を浮かべる様な表情で今迄の殺気を抑え見つめる。四季はその二人の様子に薄く笑みを浮かべたのだ。
「四季くんどうしたの?」
「どうした…四季?」
四季は噴き出し少すると腹を抱え笑い出す。呼吸困難になる程に笑い暫くしやっと収まり二人を確りと見て呟いた。
「なぁ俺二人と一緒に行きたい………俺のワガママ聞いてくれるだろ?」
四季の言葉に目を丸くし瞬間溜息を付いた二人は、同時に目を瞑り安堵する様に笑みを浮かべるとそれぞれに言葉を零した。
「やめやめ〜なんか萎えたわ。四季が言うなら良いぜ。お姫様の仰せのままに」
「はぁ〜四季くんがそうするなら僕は良いや〜。折角だから楽しもうね!」
四季は二人の間に勢い良く挟まり、片腕に絡み付くと先を行き先導する様に歩く。周りも氷点下に冷えた温度が戻り、遣り取りが終わった事に散り始め元の業務に戻る日常風景が戻って来た。
四季は二人の腕を取り手を引くと、満面の笑みで楽しげに大声で叫ぶ様に語りかける。
「ほら!!はやく行こうぜ!!じゃないと店が終わっちまう!!」
「うっさ…もっと静かに話せよクソガキが」
「まだ午前中も半ばだから終わらないよ〜安心してゆっくり行こうか」
態度の違う二人が真反対の対応をする。悪態を付く紫苑に優しげに語りかける様な京夜も、楽しげな雰囲気が漂い四季は嬉しくなり同時に愛おしく思う。
そうして地下拠点を出て地上へと降り立った四季達の楽しい1日が始まるのだった。
それからはあっという間に半日が過ぎ、クレープを食べ四季の口元にクリームが付いた様子を笑う二人に、頬を染め反論する四季の両頬に付いたクリームを指で取る彼等が見せ付ける様に舐め赤く染まる四季に内心愉しく思う京夜と紫苑がいたり、紫苑が進めたカフェで食事を取る四季と彼等に、四季はハンバーグセットを頼み、頬張りハムスターの様に片頬を膨らませる四季を珈琲を飲む二人が愛しく見ていたり、その後道ををぶらぶらと歩き気になる店に入ったりとしたのだ。
そんな現在四季好みの服屋に入り、四季が選ぶ中で時々京夜と紫苑が四季の服を選び、四季の体に合わせるが違うと呟き戻す事繰り返していた。
「これなんかどう?」
「なんか違うっすね。こっちとか有りじゃないですか」
「それならこれと合わせて」
「良いですね。なら小物はこれとこれでしょ」
「なら靴はこれかな。こっちも合いそうだから買うか悩むな…どうしよう」
「一ノ瀬たしか靴好きでしたよね。買っておいて損は無いんじゃないんすか」
「じゃあ靴はこれとこれ」
「少しピアスも身繕いますか」
「ならお揃いが良いよね」
聞こえてくる会話に耳を澄ます四季は、先程はあれ程喧嘩をしていたのに仲良いもんだと思い、自身の選ばれる服が完成されつつあるのを見て店内を見て回る。
瞬間、店内にある見つけた。シンプルなネックレスに、チェーンの付いた先に銀細工が美しく加工された本に、同じく注射機と、同様の銃の付いたシリーズ物のネックレスを見付けた。
正に自身達を彩られた様なアクセサリーに、四季は二人に気付かれまいと内に会計を済ますと、羅刹の支給金の中から紫苑と京夜への初めての自身で買ったお揃いの物に、袋を胸に抱え服一式が決まり会計を済ませた二人の元へ行く。
「お待たせ〜おっそれ何買ったの?」
「大事そうにに抱えちゃって、お兄さん達のプレゼント?」
「なんでわかったの!?」
「分かりやすいんだよお前は〜」
「四季くんは分かり易すぎるよねぇ〜」
ぐりぐりと頭を撫でる紫苑に声を上げ笑う京夜が見守り、紫苑が四季の尻を軽く叩くと京夜が腰を抱き歩み始める。外に出ると日は傾き夜の色が街を包んでいた。
拠点に帰ると四季の泊まる部屋に、二人は集まり弾む会話に四季が楽しんでいると、思い出した様に枕の下から小さな袋に包まれた三個の袋を取り出す。
「これあげる!」
「お〜いつ来るのか楽しみにしてたぞ」
「早く来ないかな〜って楽しみに思いながら待ってたよ」
京夜と紫苑が袋を開けると、出てきたネックレスに目を見開かせ見つめた。
紫苑が上に手を翳し柔らかな視線で見上げ、京夜が大切そうに両手で持ち眺める。二人の愛しげにまるで大切な物を見る様な、四季が大好きだと語る様な視線に四季は恥ずかしくなり目を逸らす。二人がネックレスを付け嬉しそうに幸せそうに笑むと四季に問うた。四季も二人に倣い急いでネックレスを付けようとし、焦り滑る金具を何度か挑戦し付け終わると幸せそうにはにかんだ。
「おっ!似合ってるぜ!」
「そ良かった。大切にするね」
「お前センス良いな……宝物にするよ」
幸せそうに笑う彼等に四季は二人一度に抱きつき、ベッドに倒れる二人が四季の頭と背中を撫でる事を受け入れ柔らかく笑む四季に、紫苑と京夜はこの幸せを手離したくないなと思い浮かべる。
「へへっ…」と幸せそうに笑う四季に紫苑と京夜は起き上がると、勢い良く四季を押し倒し意地悪げに笑い愉しげに告げた。
「じゃあ今日はこれを付けたままシようか」
「お兄さん達が特別授業をしてあげるよ」
四季は悪戯げに笑う二人に、蠱惑に笑みを深める。
「良いぜ。楽しみにしてる」
京夜が前に紫苑が後ろに配置を変え、瞬間唇へ降り注ぐキスと項に触れる唇が跡を付け、交互に変わる口付けに息も絶え絶えになった四季はその後笑みを深めた二人に告げられた。
「今日は寝かさないからね…覚悟しなよ四季くん」
「明日立てないくらい抱いてやるから…楽しもうぜ?夜はまだまだこれからだ」
そう笑う悪魔の様な二人に、四季は口端を引き攣らせ思う。ごめん明日の俺腰が終わるけど頼んだと呟き全ては後日の自分に任せると、二人に身を任せ背中に腕を回すのだ。
その後の最中を一言で説明すると、二人の肌に色気が溢れ浮かぶ汗が滑り落ちる中で、揺れる本と注射機のネックレスが四季の頭を焼き尽くしたのだった。