ためらいがちなノック。
「入れ」
わざとディスプレイに眼差しを落としたまま相手を迎える。
足音を残して、動きが止まる。
ちらりと目をやり、業務中のこちらへ配慮したのか、今日の任を終えた私服姿でも律儀に敬礼をしてくる元バディに神経をくすぐられるような思いをしながら、ナハトは表情を崩さぬまま告げた。
「ああ、来たか。急ぎの稟議があるから、少しそこで待っていなさい」
実働部隊からの報告を受けるため広く取られた執務卓前のスペースとは別に、傍には事務方の役職者などと話し込むための応接セットがある。
はい、と簡潔に返事をして、ゆったりと設られた二人がけのソファに腰掛けた姿は、眼差しを落としながらもどこかソワソワと落ち着かない様子だ。
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